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E36型M3で人馬一体の快感に浸る

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E36型M3で人馬一体の快感に浸る

郊外や地方都市に住まうのであれば話は別だ。しかし東京あるいはそれに準ずるような都市に住まう者にとって、「実用」を主たる目的にクルマを所有する意味はさほどない。

BMW E36型 M3 セダン|BMW M3 E36 Sedan

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1992年にデビューを果たしたE36型M3。クーペ、カブリオレ、セダンの3タイプを発売した。写真はセダン。7年間の間生産し、3モデル合計で約7万2000台を売り上げた。

そんな状況下で「それでもあえて自家用車を所有する」というのであれば、その際は何らかのアート作品を購入するのに近いスピリットで臨むべきだろう。

明確な実益だけをそこに求めるのではなく、「己の精神に何らかの良き影響を与える」という薄ぼんやりとした、しかし大変重要な便益こそを主眼に、都会人の自家用車選びはなされるべきなのだ。

そう考えた場合におすすめしたい選択肢のひとつが、カーマニアは「E36 M3」または「M3B」「M3C」などと呼ぶ、3世代前のBMW M3だ。

BMW E36型 M3 セダン|BMW M3 E36 Sedan

2世代目となるM3は広く評価され、各国の自動車誌のカー・オブ・ザ・イヤーに選出。アメリカの「Automobile Magazine」誌にはカー・オブ・ザ・センチュリーに選ばれた。これは(アメリカにとっての)輸入車初の快挙だった。

BMW M3という車について、いや「BMWのM」というモノについて、まずは簡単にご説明しよう。

現在は「BMW M GmbH」として高性能な市販スポーツモデルの開発や、特別注文モデルの生産、あるいは限定モデルの企画などを行っているBMW M社だが、もともとは1972年に「BMWモータースポーツ社」として発足し、モータースポーツ関連の研究開発やレース用車両の生産などを行っていた。

BMW E36型 M3 クーペ|BMW M3 E36 Coupe

個人の要望に応じたカスタマイズが可能で、E36型M3を発売した同年、BMWモータースポーツ社にBMWインディビジュアルという新たな業務を加えた。これはオプション装備よりも柔軟な塗装などのカスタムメイドを行うものだ。

そんなBMWモータースポーツ社(現BMW M社)から1985年に発表されたのが、今日では1000万円近いプライスタグが付くことも珍しくない「初代M3」。これは同時期の3シリーズをベースに作られたものだったが、単なる「3シリーズのスポーティ版」ではなく「戦うクルマ」だった。

初代M3は、当時開催されていたツーリングガーレースに出場するための公認を得る目的で市販されたクルマだったのだ(詳しくは割愛するが、当時のグループA規定を満たすためには、レースカーと同一形状の市販車を数百台から数千台、市販する必要があった)。

BMW E36型 M3 クーペ|BMW M3 E36 Coupeそのような背景をもって誕生した初代BMW M3はツーリングカー選手権を席巻し、あるいは同世代の好敵手であったメルセデス・ベンツ190E2.3-16などと覇権を争ったことで「神話」となった。そして神話はまだ続いているため、初代M3の中古車は今なおかなりの高値にて売買されている――ということだ。

ココロに刺さるエンジンそして第2世代のM3としてしばしの間をおいて1992年に発表されたのが、今回推奨したい「E36型BMW M3」だ。

BMW E36型 M3 クーペ|BMW M3 E36 Coupeこちらはあいにくというのか何というのか、ツーリングカーレースで戦うために生まれたクルマではない。

いや、正確には356台のみ市販された「M3 GT」というバージョンの競技車両がADAC GT選手権や米国のモータースポーツ界で活躍したのだが、それはあくまで余録のようなもの。2代目M3の主戦場はサーキットではなく「マーケット」だったのだ。

その分だけ、E36型BMW M3は初代と比べて「神話」には欠ける。だが一般公道で我々アマチュアが「普通に使う。あるいは、その感触を愛でながら走る」という観点で見るならば、むしろ偉大な初代より2代目のほうが素晴らしいのではないかと筆者は見ている。

何がどう素晴らしいかと言えば、ひとつはエンジンだ。

初代M3は4気筒の2.3リッター(最終型のスポーツエボリューションは2.5リッター)エンジンを搭載していて、これはこれで珠玉のエンジンなのだが、2代目M3では「S50B30型」という3リッターの直列6気筒エンジンを搭載した。その最高出力は286psである(前期型の数値。後期型については後述する)。

BMW E36型 M3 コンバーチブル|BMW M3 E36 Convertible

2世代目では、ベースとなるクーペに加えコンバーチブルとセダンが最初から開発計画に組み込まれていた。

これがまた本当に素晴らしいエンジンなのだ。

初代の2.3リッター以上に(当たり前だが)パワフルかつトルクフルで、近年のエンジンと違ってどちらかといえばガソリンをガンガン燃やすタイプの設計であったため、体感上の爆発力は超ド級。排気音も野太い。

BMW E36型 M3 コンバーチブル|BMW M3 E36 Convertibleだがそれでいて、いかにもBMW製エンジンらしく超高回転域まで「まるで絹のような手触り」でもって回っていくという理知的な側面も強い。結論として「とにかく総合的に見てかなりの快感エンジン!」ということだ。

ネオクラシックなデザインとサイズ感またE36型BMW M3は、今となってはそのサイズ感も素晴らしい。手のひらサイズ──という表現はもちろん過大だが、しかしそれに近いニュアンスは確実に感じられる寸法だったのだ。

BMW E36型 M3 コンバーチブル|BMW M3 E36 Convertible現行世代のBMW M4クーペと比べてみるとわかりやすいだろう。現行M4のスリーサイズが全長4685mm×全幅1870mm(!)×全高1385mmであるのに対し、94年式E36型M3のそれはこうだ。

全長4435mm×全幅1710mm×全高1335mm。

要するに「ほぼ5ナンバーサイズ」ということである。実際、E36型3シリーズの318iセダンは全幅1695mmということで、まごうことなき5ナンバー車だった。

BMW E36型 M3 |BMW M3 E36

M3初となる6気筒エンジンで、最高出力286ps、最大トルク320Nmを発生する。1995年には改良を施し、排気量は3.2リッターに増大。最高出力も321psを発揮した。

考えてもみてほしい。今どき、ほぼ5ナンバー枠のジャストサイズなクルマが300ps級の直列6気筒自然吸気エンジンを搭載していて(しかもそれはBMW M社謹製だ)、そしてそれをマニュアル・トランスミッションでもって操ることができる……などという僥倖があるだろうか?

その問いに対する答えは明白だ。そんなモノは今の時代、新車あるいは高年式中古車としては「絶対に」入手できない。

またE36型BMW M3はそのビジュアルも、今となってはややクラシカルな風味が感じられるようになってきたため、ある種の人には刺さるだろう。

後継にあたるE46型からは今日のBMWデザインにも若干通じる「曲面を多用したハイカラ風味」に変わったが、この世代までは古典的なスクエア風味がギリギリ残っている。

BMW E36型 M3 セダン|BMW M3 E36 Sedanとはいえそれは初代M3のようなわかりやすいスクエア感ではない。だがこの端境期っぽさを「中途半端」と取る者もいるだろうが、「なんとも玄妙である」ととらえる者もいるはず。どちらのスタンスでこのクルマを眺めるかはご自由だが、筆者は後者の立場をとる。

中古車を買う心構えBMW E36型 M3|BMW M3 E36もしもこれからE36型BMW M3を購入しようとするのであれば、前述した3リッターのS50B30型エンジンを搭載した前期型(M3B)にするか、あるいは3.2リッターのS50B32型エンジン+6MTに換わった1995年以降の後期型(M3C)にするかは悩むところだ。後期M3Cは最高出力321psとかなりのモノであり、シャシーも足回りも率直に言って後期型のほうが優秀である。

だが「そこ」にはあまり拘泥すべきではないというのが、筆者なりの結論だ。

最終型であっても生産終了から20年以上が経過している今、「ボロボロの後期型」よりも「手塩にかけて整備されてきた前期型」のほうが機械として好ましい――なんてことは、E36型M3に限らずよくある話。

前期/後期にはこだわらず、あくまで整備履歴と内外装および機関部分のコンディション、そして対面時の「シックスセンス」を重視して判断すれば(そして車両本体価格をケチらず、多少高くてもいいから良いモノを探そうと努力すれば)、きっと幸せになれるはずだ。

BMW E36型 M3|BMW M3 E36

オプションで用意していたシーケンシャルMギヤボックス。クラッチ・ペダルを踏まずにギアを変えるセミATを実現するもので、世界で初めての導入となった。

全幅1800mm以上のクルマばかりが、文字どおり幅を利かせているこの時代の路上で、幸せになれるのだ。

文・伊達軍曹 写真・BMW AG 編集・iconic

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