■4代目となる新型フィットはどれほど進化した?
東京モーターショー2019で世界初公開されたホンダの4代目「フィット」。電動パーキングブレーキの不具合が原因で発売を2020年2月に延期していますが、筆者(山本シンヤ)は一足お先に北海道にあるホンダの鷹栖テストコースでプロトタイプに試乗してきました。
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4代目へとフルモデルチェンジする新型フィットは、どのような進化を遂げているのでしょうか。
新型フィットの開発キーワードは「感性価値の追求」です。フィットの強みである「居住性」、「燃費」は良くて当たり前、それに加えて数値に表れない人間の五感に響くような「プラスα」を数多く盛り込んでいます。
外観デザインは、一目でフィットとわかるワンモーションフォルムを採用していますが、前後のデザインは大きく変更されています。フロントマスクは、ホンダの電気自動車「ホンダe」に似た癒し系になり、リアはコンビランプが縦基調から横基調へと変更されました。
デザインテーマは「柴犬」だそうですが、個人的には身近な相棒だからこそ“元気”な部分も欲しかった気がします。
内装は、全面刷新されました。水平基調で余計な突起を廃したインパネ、フードレスでフル液晶化されたメーターパネル、タッチパネルからダイヤル式に変更された空調コントロール、2本スポークのステアリングなど、シンプルですが質の高いクラスレスのデザインに仕上がっています。
また、新型フィットでは装備の有無やパワートレインの違いではなく、かつて三菱「ミラージュ(3代目)」や日産「セフィーロ(初代)」のように、ライフスタイル/ライフステージに合わせたグレード展開となり、グレード毎にさまざまな顔を見せてくれます。
新型フィットは基本グレードの「ホーム」を中心に、ビジネスユースにも使える「ベーシック」、フィットネス感覚のスポーティグレード「ネス」、小さな高級車「リュクス」、そしてアクティブな「クロスター」と5タイプを用意。
まず、運転席に座って驚いたのは「視界の良さ」です。そのカラクリは新構造のフロントピラーにあります。衝撃吸収はAピラー後方で受けてボディに流し、本来のAピラーはガラスを支えるだけ。さらにワイパーが見えにくい構造になっていることも相まって、圧倒的なパノラマ視界を実現しています。
パワートレインは、ガソリン車が1.3リッターエンジンに改良型のCVTを組み合わせた仕様です。ハイブリッド車は、2モーター式の「e:HEV(イー エイチイーブイ)」を搭載しています。
ハイブリッドのシステム自体は、「インサイト」と同じ1.5リッターガソリンエンジンに2モーター内蔵電気式CVTを組み合わせた仕様がベースですが、フィットのボディサイズに搭載できるように大幅に小型化しています。
ガソリン車の走りは、必要十分な性能と優れた燃費、ハイブリッドより軽い車両重量なのでそれなりに活発に走りますが、官能性や気持ち良さなどは残念ながら感じられません。そういう意味では、ガソリン車は価格訴求の意味合いが強いと思います。
一方のハイブリッド仕様の走りは、現行フィット(3代目)よりも滑らか。1.5リッターターボエンジン並みの力強いトルクに加えて、車速とエンジン回転数の連動感を向上させる制御により、いい意味でハイブリッドらしくない自然なフィーリングが特長です。
これならガソリン車から乗り換えても違和感はないでしょう。燃費はまだ公表されていませんが、開発者は「絶対的な数値を狙っておらず、カタログ燃費=実用燃費」と語っています。
■新型モデルは「フィットなのにフィットじゃない!?」
また、新型のプラットフォームは現行モデルを踏襲していますが、ボディはサスペンション保持部を中心に補強、加えてアルミ製リアダンパーマウントの、低フリクションサスペンション、VGR(バリアブルギアレシオシステム)の採用などがおこなわれています。
エンジニアに聞くと「現行モデルで使っているプラットフォームの基本素性は高いものの、すべてを使いこなせていませんでした。そこで刷新よりも熟成の道を選びました」と語っています。
実際に乗ると、「フィットなのにフィットじゃない!?」と思ってしまうくらい“大人”な仕上がりです。ハンドリングはシャープというよりマイルドで穏やかな特性ですが、操作に対して忠実かつ自然に反応します。
コーナリング時のクルマの一連の動きにも連続性があり、一体感は現行モデルよりも高い所にあります。ワインディングを模したコースではハイペースでも安心して走らせることができました。
それでいながら高速走行の直進性も全高の高い5ナンバーのコンパクトハッチとしては非常に優秀なうえに快適性も高く、凹凸の吸収の仕方や、アタリの優しさなどは現行モデルより1ランク上に感じました。
つまり、見せかけのスポーティではなく、最初から専用のカスタマイズパーツを装着して販売されるコンプリートカーブランドの「Modulo X」と呼びたいくらい全方位で質の高い走りに仕上がっています。
これはボディ剛性とサスペンションのバランスの良さに加えて、上級セダンへの採用も見据えて開発された「ボディスタビライジングシート」の効果も大きいでしょう。
面で支えるMAT構造と高密度クッションの採用で、柔らかなかけ心地とフィット感を両立させています。また、現行モデルでウィークポイントのひとつだったリアシートも、厚みのあるパッドの採用により、長時間乗ってもお尻が痛くなることはありません。
ただ、ここまで走りがレベルアップしていると、よりスポーツ性を高めたグレードが欲しくなります。
2019年12月上旬にタイでお披露目されたホンダのコンパクトセダン新型「シティ(日本名:グレイス)」には1リッター直列3気筒ガソリンターボエンジンを搭載した「RS」が設定されていますが、そのフィット版があってもいいと思います。
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