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【ヴィッツ改めヤリス】日本メーカーが日本と海外で別車名を使う理由

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【ヴィッツ改めヤリス】日本メーカーが日本と海外で別車名を使う理由

 日本車に限らず、本国と海外で車名が違うというクルマは少なからず存在する。例えば先代のヴィッツを紹介する場合、ヴィッツ(海外名ヤリス)という表記を見たことがあるハズ。逆にWRCに参戦しているヤリスWRCの場合、日本名ヴィッツと表記したりする。

 なぜこんな面倒なことをするのか? 車名を世界で統一すれば問題ないように感じる。

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 実は日本車の海外で使われている車名のほうがメインとなっているケースも多い。つまり、日本での車名は日本専用または地域限定であったりする。

 本企画では日本と海外で車名の違うクルマにスポットを当てていく。

文:永田恵一/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MITSUBISHI、SUZUKI

【画像ギャラリー】車名はこの先も継続か!?日本と海外で違う車名の現行モデル10選

なぜ今になってヤリスに変更?

1999年にスターレットの後継としてデビューしたヴィッツ。愛らしいデザインとともにヴィッツの車名の響きもよく一気にコンパクトカーの代名詞となった

 トヨタヴィッツは1999年にスターレットの実質後継車としてデビュー。2005年の2代目、2010年の3代目までヴィッツの名を名乗ったが、すでに公開され2月から販売を開始する4代目はヤリスと車名変更された。初代を除き、日本以外の国、地域ではヤリスの車名で販売されている。

 では、なぜ日本はヴィッツの車名で販売していたのか?

 ヴィッツは才知・機知といった意味のドイツ語『Witz』などに由来する造語で、いっぽうのヤリスはギリシャ神話の美の女神『Charis』に由来している。

 日本ではヤリスの響きがイマイチよくないという理由から、ヴィッツという日本専用名が与えられた。ちなみに同時期にデビューしたファンカーゴは欧州ではヤリスヴァーソという車名で販売されていた。

ファンカーゴはヴィッツのワゴン版というイメージでヤリスヴァーソという車名で販売されていた。ヴァーソはトヨタがよく欧州で使用する名称で2代目イプサムはアベンシスヴァーソという車名で販売されていた

 逆にヴィッツという車名は欧州ではいい意味では受け取られないということで、日本、海外の車名が違う形になっていた。

 ヤリスの響きが悪いから日本での採用を見送りながら、なぜ突然ヤリスに変更するのか疑問に思うのも当然だ。

 3代目から4代目になるにあたりトヨタはエンジン、プラットフォーム(TNGAの採用)をはじめすべてを刷新して、「これまでにないコンパクトカー作る」という思いから車名変更を決断したという。

 そこで働いたのが数の優位性で、ヴィッツとヤリスを合わせると世界中で累計800万台オーバーの販売をマークしているが、販売地域が広いこともあり圧倒的にヤリスのほうが多い。日本以外の多くの地域で浸透したヤリスを日本でも名乗ることになったようだ。

ヴィッツからヤリスに車名変更したのはトヨタの意気込みの表れだというのはわかるが、ヴィッツの名前を惜しむ声は大きいのも事実。ユーザーがどう反応するか?

日本専用の車名はグローバル展開しづらい

 日本のマーケットは特殊だと言われるが、こと車名に関しても独特スタンスだ。海外、特に欧州では、BMW、メルセデスベンツ、アウディ、プジョー、シトロエンなどを見てもわかるとおり数字やアルファベットの車名は数字が大きいほうが上級などとわかりやすくて好まれる。

BMWの車名は3ケタの頭の数字でクラスを表す。かつては下2ケタの数字は排気量とリンクしていることが多かったが現在はそうでもないから逆に難解となった

 しかし、日本ではこの数字やアルファベットの車名が不評で浸透しない。レクサス車が日本でも定着してきているが、SUVを例にとると車名だけではUX、NX、RX、LXの序列はわからないという人は多く、車名に関しての満足度は低い。

 そこで日本メーカーは日本マーケット用にクルマのキャラクターなどをもとにオリジナルの車名を考えて命名する。もちろん意味のない車名は付けないが、できるだけ日本人の耳に響きのいい車名が選ばれる傾向にある。

 人気Lクラスミニバンのアルファードは、星座の中で最も明るい星を意味するαに由来する造語だが、響きを重視しているがため、海外ではなぜそんな名前? となってしまうので日本車名はグローバル展開しづらい。

レクサスは数字、アルファベット車名が浸透しない日本マーケットでも十分な認知度を誇る。ただし、ヒエラルキーは車名からはわからない(写真はUX)

日本でよくても海外ではダメなケースも

 お国が違えば食文化も変わるというが、車名を取り巻く環境も大きく違う。本国だけでなくすべての国・地域を満足させるのは難しい。これは日本、海外共通だ。

 有名なところでは、2019年に長い歴史に終止符を打った三菱パジェロだ。北米や欧州ではパジェロではなくモンテロという車名で販売されているのだが、イギリスとスペインではショーグンという車名となる。

日本人にとってはパジェロはパジェロでしかないが、そのパジェロの車名が使いたくてもマーケティング上使えないこともある。これは仕方がないこと

 パジェロという車名でグローバル販売できなかったのは、パジェロという言葉がスペインでは卑猥な言葉として使われているからと言われている。

 同様にトヨタセリカXXは北米ではスープラの車名で販売されていたが、当時アメリカでは成人映画などのX指定(現在のR指定に近い)があり、XXの車名がそれを連想させるということでスープラの車名で販売された。2代目からは日本でもスープラで統一。

1978年にセリカの上級モデルとして追加されたセリカXX。北米への輸出に際し、XXの車名がアメリカでは成人映画などのX指定を連想させるということでスープラとして販売

 輸出していないが、ダイハツネイキッド(全裸)、スズキハスラー(成人雑誌を連想させる)、ホンダThat’s(あれは!)などもアメリカ人に失笑される車名だ。まぁ、これは外国人が字面が気に入って『大馬鹿者』などの日本人では恥ずかしくて着られないTシャツを着ていたりするのと同じだろう。

英語ではネイキッドは丸裸という意味もあるようだが、タフでむき出しな感じのキャラクターを車名にしただけ。軽自動車はどんどん自由なネーミングにしてほしい

商標だけではない語感の壁もある

 そのほかの要因としては、商標の問題がある。原則的に他が登録しているものは使言えないか、使うならそれ相応の対価が必要になってくる。

 日本マーケットに導入される輸入車でも、古いところではヒュンダイエクセルがヒュンダイXL、ルノークリオがルノールーテシアとして販売せざるを得なかったのは日本での商標に阻まれたから。

三菱商事が1988年にソウルオリンピックを記念して150台限定で日本に導入。エクセルがすでに商標登録されていたためエクセルをXLで代用したかたち

 商標だけでなく、語感、響きが似ているという理由で車名が使言えないケースがある。車名ではないが、レクサスは1989年の立ち上げ時にアメリカの企業から響きが似ているということで使用禁止を求められた(後に解決)。

 ヒュンダイのコンパクトカーのゲッツは日本ではTBという車名で販売されたが、これはヴィッツと響きが似ているからヒュンダイが断念したといわれている。

2002年に打倒日本のコンパクトカーを掲げ低価格で日本導入されたヒュンダイTBは、韓国本国ではクリック、欧州ではゲッツの車名で販売された

日本と海外で車名が違うことのメリットはあるのか?

 日本メーカーにとっては、日本のユーザーが喜んでくれるというのが最大のメリットだが、戦略上のメリットはほとんどないと思われる。

 逆にここ20年くらいの間に、コロナ→プレミオ、カリーナ→アリオン、セドリック/グロリア→フーガ、ブルーバード→シルフィなどビッグネームや慣れ親しんだ車名が続々と消滅している。日本専用の車名でも変わることでデメリットは小さくない。

 日本独自の車名の減少は、すなわち日本専売モデルが激減していることとも関係があると思われる。

現在数少ない日本専売モデルのプレミオもコロナから車名変更。そのプレミオも現行モデルをもって消滅する可能性が高いとされている

 今後日本車もグローバル化がさらに進行するが、続々と統一ネームとなるのか気になるところだが、日本専売の軽自動車は、外国人がどう思おうが、失笑しようが、自由なネーミングが続くだろうし、それはやめないでもらいたい。

 グローバルでの統一ネームと言えばマツダが推進していて、第7世代商品群に切り替わったのを機に、アクセラがマツダ3になり、アテンザはマツダ6、デミオはマツダ2に車名変更。マツダでグローバル車名に統一されていないのはロードスターのみとなった。

 古くからマツダは海外モデルは数字3ケタの車名を使っていてアクセラの前身のファミリアは323、アクセラになってマツダ3という具合に、日本での車名とグローバルの車名を別々にしていたが、ここにきて一気に統一。

マツダの第7世代商品群のトップバッターのマツダ3。日本で浸透したアクセラの車名を捨てグローバルネームで統一

 前述のとおり、日本は数字やアルファベットの車名を受け入れにくい土壌だから、マツダは大丈夫なのか、と心配する声が多いのだ。

 車名が消滅したアクセラ、アテンザ、デミオとも認知度、語感ともすこぶるいいだけにレクサスのように浸透し、受け入れられるのかに注目したい。

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