2019年10月における国内登録車(小型/普通車)の登録台数を見ると、トヨタの比率がレクサスを含めて約53%に達した。
ちなみに10月の登録台数は、台風15号/19号の影響と消費増税によって大幅に下がり、登録車がマイナス26.4%、軽自動車はマイナス22.3%、国内市場全体では24.9%減った。従って2019年10月が通常のデータと同列に見られない面はあるが、トヨタが強みを発揮していることも間違いない。
【カローラほか新型続々登場でいま一番面白い!】 国産Cセグメントモデル 最新ランキング
トヨタが強いのは今に始まったことではないが、トヨタの独壇場はいったいどこまでエスカレートするのか? 今後の動向なども踏まえ、渡辺陽一郎氏が考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、HONDA、NISSAN
【画像ギャラリー】2019年10月登録車販売ランキングトップ10のうち9台がトヨタ車!!
販売台数は2位ホンダの2倍以上!!
2019年10月における国内登録車(小型/普通車)の登録台数でトヨタの比率がレクサスを含めて約53%となったが、2019年4月にも、トヨタの国内登録車市場のシェアは50%を上回っている。
今は軽自動車の販売比率が高く、月別に見ると、新車として売られたクルマの37~39%を占める。そのために登録車が中心のトヨタが国内販売全体に占める割合は30~33%になる。
カローラシリーズが販売絶好調で2019年10月は登録車でナンバーワンに輝いた。特にステーションワゴンのツーリングの人気が高い
それでもトップメーカーであることに違いはない。1~10月の累計販売台数(軽自動車を含む)は、トヨタ(レクサスを含む)が137万台、2位のホンダは63.8万台、3位のスズキは59.3万台、4位のダイハツは56.3万台、5位の日産は49.7万台だ。トヨタと2位のホンダの間には、2倍以上の開きが生じた。
このトヨタの強みは、2019年10月における登録車の国内販売ランキングを見ても明らかだ。1位がカローラシリーズ、2位はシエンタ、3位はルーミー、4位はプリウス、5位はタンクとなり、1~5位をトヨタが独占した。
6位に日産ノートが入ったが、7位以降は再びトヨタで、アルファード、アクア、ヴォクシー、ヴィッツと続く。登録車ベスト10の内、9車をトヨタ車が占めた。
2019年度上半期(2019年4~9月)の登録車ベスト10を見ても、1位はプリウス、3位はシエンタ、4位はアクアという具合で、トヨタが7車を占めている。ほかのメーカーは、2位のノート、7位のセレナ、10位のフリードのみで、トヨタ車が圧倒的に多い。
2018年に登録車でベストセラーに輝いた日産ノートは、2019年度の上半期でも総合2位に入るなど大健闘している。今や日産の屋台骨に君臨
コンパクトカーが充実しているのがトヨタの強み
このようにトヨタが強くなった背景には、複数の理由がある。まず背の高い売れ筋軽自動車に対抗できるルーミー&タンクを2016年11月に発売して、好調に売れ続けていることだ。
2019年10月のルーミー&タンクの登録台数を合計すると、1万2382台になり、新型になった直後のカローラシリーズを少し上回る。
トヨタのブランニューコンパクトカーは初代ファンカーゴ、初代bBなどスマッシュヒットを飛ばすことが多い。現在はルーミー&タンクが販売絶好調
10月のシエンタも9302台と多く、ヴォクシー/ノア/エスクァイアの3姉妹車も、合計すると9516台に達する。Lサイズミニバンのアルファード&ヴェルファイアも、両車を合計すると7351台だ。
以上のようにトヨタは、コンパクトカーのルーミー&タンク、コンパクトハイブリッドのアクア、コンパクトミニバンのシエンタ、さらにモデル末期のヴィッツまで含めて、売れ筋カテゴリーとされる小さな車種をミニバンと併せて手堅く販売している。
この豊富なコンパクトカーのラインナップは、将来的にもトヨタにとって大切な強みになる。今は安全装備の充実や環境性能の向上により、クルマの価格が全般的に高まっているからだ。
2019年に販売を大きく伸ばしているシエンタは、8月、9月が1位で、10月は2位。新しくないモデルが売れるのはトヨタにとってかなりおいしい
今後もトヨタ車は堅実に売れ続ける
昔からファミリーカーの価格上限は200万円前後とされ、1996年に発売された初代タウンエースノアの価格は、売れ筋になるスーパーエクストラが2Lエンジンを搭載して195万5000円(消費税別)であった。
それが今は、同様の消費税別でも、ノーマルエンジンを搭載したノアSiは258万6000円だ。消費税別でも200万円前後のミニバンを探すと、1.5LのシエンタGが187万1000円、シエンタGクエロは201万2000円になる。
日本車は総じて高くなっているが、写真のノアSiも車両価格は258万6000円で、源流とも言えるタウンエースノアと比べると30%以上も高くなっている
これに10%の消費税を加えると、ノアSiが284万4600円、シエンタGが205万8100円、Gクエロは221万3200円に達する。クルマの価格が高まり、消費税も10%になって、割高感がますます強まった。
そのいっぽうで1世帯当たりの平均所得は、1990年代の後半をピークに下がり続けている。最近は少し持ち直す傾向にあるが、依然として20年前の水準に戻っていない。
つまり安全装備や環境性能の進化でクルマの価格が高まり、10%の消費税も上乗せされ、そのいっぽうで所得は減っているのが実情だ。そうなるとユーザーとしては、買うクルマのサイズを小さくするしかない。
そして今後所得が大幅に上向くとは考えにくく、当分の間、軽自動車とコンパクトカーの時代が続く。
軽自動車の販売比率は前述のように国内市場全体の40%弱、コンパクトカーは25%(登録車に限れば約40%)という比率で推移するだろう。
ヤリスは2月から販売を開始。ヴィッツから車名変更しただけでなく質感を高めたプレミアムコンパクト的なキャラクターにチェンジして新たなユーザーを狙う
この現状を見据えて、トヨタはルーミー&タンク、アクア、シエンタといったコンパクトな車種を揃え、先ごろコンパクトSUVのライズも加えるなど抜かりない。
ヴィッツはフルモデルチェンジを受けてヤリスを名乗り、前席を優先させた上質なコンパクトカーに進化させる。
今後はヤリスのプラットフォームを使って、かつてのファンカーゴに相当する背の高いファミリー向けの上質なコンパクトカーも開発されそうだ。
市場に合った小さなクルマを中心に、トヨタ車は堅実に売れ続けるだろう。
日本車が大型化するなか、5ナンバーサイズで登場したライズ。税込み167万9000円から購入できる買い得感の高さも魅力的。SUVブームということもあり大ヒットする可能性も高い
軽自動車依存はトヨタに好都合
ほかのメーカーも動向もトヨタの販売に影響を与える。
今のホンダはN-BOXの売れ行きが好調で、国内販売の総合1位になった。しかしこれに伴ってホンダでは登録車の売れ行きが下がり、N-BOXだけで、国内で売られるホンダ全車の34%前後を占める。軽自動車の届け出台数を合計すると、ホンダ全車の50%以上だ。
軽自動車でナンバーワン人気のホンダN-BOX。しかしフィット、ステップワゴンなどのホンダユーザーの乗り換えが多いのがホンダにとって頭の痛いところ
日産も軽自動車の国内販売比率が35%前後に達する。
最近の日産は新型車が乏しく、堅調に売れる登録車はノートとセレナ程度だ。その結果、軽自動車の販売比率が上昇した。
2019年度上半期の場合、デイズ+デイズルークスだけで日産の新車販売台数の29%になり、ノートとセレナを加えると67%に達するのだ。
日産はデイズの人気が高くデイズルークスと合わせて日産の新車販売の約30%を占める。売れるクルマだからセールスパワーが集中してしまうが利幅は大きくない
このようにダイハツとスズキに加えて、ホンダと日産まで軽自動車への依存度を強めると、登録車が中心のトヨタにとっては都合がいい。直接的な競争相手が減るからだ。登録車市場のシェアをさらに伸ばしやすくなる。
ただし軽自動車というカテゴリーは依然として脅威になるから、トヨタはコンパクトカーの品揃えを充実させる。ライズもそのひとつに位置付けられる。
トヨタは軽乗用では写真のピクシスエポック(ミライース)のほか、ピクシスメガ(ウェイク)、ピクシスジョイ(キャスト)の3車を販売中。軽に依存していない
シェアは維持できても販売台数は減る!?
トヨタの今度の動きで気になるのは、2020年5月から、全店が全車を扱う体制に移行することだ。トヨタ店のクラウン、トヨペット店のハリアーといった専売車種がなくなり、4つの系列は実質的に形骸化する。
複数系列の販売店が密集する地域では、トヨタ系販売店同士で激しい競争を展開するだろう。必然的に店舗数は減り、ヴォクシー/ノア/エスクァイアといった姉妹車を中心に、車種数も削減される。
2Lクラスミニバンがヴォクシーに統一されるという情報のほか、ラージクラスはアルファードに一本化されるという情報もあり気になるところ
この流れが加速すると、トヨタの登録車市場におけるシェアは減らなくても、全体の登録台数が下がることはあり得る。日産やホンダも、かつては販売系列を揃えていたが、これを撤廃して全店が併売になると店舗数と売れ行きを減らした。
例えば日産の場合、2000年代初頭の店舗数は3100カ所であったが、今は2100カ所まで縮小されている。国内販売台数も2005年には86.6万台だったが、2018年は61.6万台だ。
2020年5月からはトヨタの顔であるクラウンも全店扱いとなる。ユーザーにとっては便利になるかもしれないが、販売現場の混乱は必至
トヨタも全店併売、車種数の削減という方針を打ち出した以上、シェアは維持できても登録台数の減少は避けられない。
そしてトヨタの商品企画担当者は、「クラウンはお客様と、販売会社のトヨタ店、弊社が一緒になって育てた商品だと考えている」とコメントした。
販売系列はトヨタの強さの秘訣だから、それを形骸化させる痛手は、決して小さくはないだろう。カーシェアリングなどの分野で、トヨタがユーザーにいかなるメリットをもたらし、国内市場を活性化させるかが注目される。
【画像ギャラリー】2019年10月登録車販売ランキングトップ10のうち9台がトヨタ車!!
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