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日本製フラグシップはどこまで進化する? レクサス LS500h試乗記

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日本製フラグシップはどこまで進化する? レクサス LS500h試乗記

トヨタの高級車ブランド、レクサスがアメリカ合衆国で誕生して、今年で30周年を迎えた。その記念すべき年の10月某日、「LEXUS ALL LINE-UP試乗会」が大磯で開かれた。

試乗の前にレクサスの歩みが、レクサスの広報マンから簡略に語られた。すべては1989年1月のデトロイト・ショーで発表された初代「LS」から始まった。

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初代「LS」は1989年発表。日本では「セルシオ」の名でトヨタ・ブランドで販売された。高性能オートエアコンを採用するなど、機能性の高さもセールス・ポイントだった。「NEW ERA」と誇らしげにうたう初代LSのアメリカでのテレビCMが会場に設置されたスクリーンに流された。レクサスの原点、初代LSは高い静粛性と優れた乗り心地、卓越した品質がたちまち認められ、ブランド全体の価値としてそうした諸要素は定着した。

1998年には初代「RX」が販売開始され、SUVの機能性を融合したクロスオーバーとして、こんにちのプレミアムSUVブームのパイオニアとなった。2004年にはRXにハイブリッドを登場させ、レクサスは革新的なブランドというイメージをつくりあげていく。

レクサス初のSUV「RX」。FWD(前輪駆動)ベースだった。日本では「ハリアー」の名でトヨタ・ブランドから販売。本革シートやウッドパネルなどを使ったインテリア。転機は2011年8月に訪れた。デトロイトでの4代目、現行レクサス「GS」の発表会のおり、あるアメリカ人ジャーナリストが“カー・ガイ”豊田章男社長に、「レクサスはボアリング(退屈)なブランドだ」と、言ったのだ。推測するに、章男社長にも内心、思い当たるところがあったのではあるまいか。

社長の行動は素早かった。翌2012年、レクサスをレクサスインターナショナルという、より独立性の高い組織に改変し、みずからチーフブランディングオフィサー(CBO)とマスタードライバーに就任、2度と退屈とは言わせない、という強固な決意を内外に示したのである。

5.0リッターV型8気筒自然吸気ガソリン・エンジン搭載のハイパフォーマンス・モデル「GS F」。以来レクサスは、驚きと感動を届ける“ラグジュアリー・ライフスタイル・ブランド”として再出発。その新世代レクサスの第1弾が、2017年発表の大型2ドア・クーペ「LC」である。この30年間で築き上げてきた静粛性、乗り心地、そして品質の3つの価値は、今後も守りつつ、その上でマスタードライバーが理想とする「対話できるクルマ」を目指す。レクサスはいま、「ALWAYS ON」なる新たな看板を掲げ、たゆまぬ進化を宣言して年次改良に勤しんでいる。レクサスの原点にしてフラッグシップ、現在5代目のLSは2017年10月に販売開始して、わずか10カ月後に1回目の改良をおこない、AWDモデルのダンパーや、ハイブリッドのサウンド、変速制御のチューニング等に改良を加えて、乗り心地と静粛性の向上を図っている。

さらに本年2019年10月の2回目の一部改良では、ハイブリッド・モデルの走りと静粛性を向上させた。ビッグ・データを活用してユーザーの走り方を解析し、バッテリーのアシスト量を増やしたというのだから、いかにもいまっぽい。電気モーターの最大トルクの数値は変わらないものの、アクセル開度40%時のトルクを170Nm 上げ、発生回転数を500rpm下げたという。

【主要諸元】全長×全幅×全高:5235mm×1900mm×1450mm、ホイールベース:3125mm、車両重量:2300kg、乗車定員:5名、エンジン:3456ccV型6気筒DOHCターボ(299ps/6600rpm、356Nm/5100rpm)+モーター(132kW/300Nm)、トランスミッション:電気式無段変速機、駆動方式:RWD、タイヤサイズ:245/50RF19、価格:1487万6000円(OP含まず)。また、昨年AWD車に採用した新しいダンパーをRWD(後輪駆動)車にも採用、同時にランフラット・タイヤの構造の見直し(除く“F SPORT”)、可変ダンピング・システムのAVSと、リア・サスペンションのマウント・チューニングにより、後席の快適性を向上させたという。

あらためて驚くLSの魅力とは?ということで、試乗したのはLS500h“version L”である。試乗時間はおよそ30分でそのうちの半分を一般道の下りが占めているという特殊な状況ながら、正直申し上げて、驚いた。LSってこんなにいいクルマだったっけ?

現行5代目LSには2017年に伊豆で開かれた最初の試乗会で乗って以来、筆者には久しぶりだった。あのときはホイールベースが3150mm、全長が軽く5mを超えるフルサイズ・セダンなのに、よく曲がるのに驚いた。そのために乗り心地がけっこう硬いのにも驚いた。

WLTCモードの燃費は13.6km/L。搭載するパワーユニットは3456ccV型6気筒DOHCターボ(299ps/6600rpm、356Nm/5100rpm)+モーター(132kW/300Nm)。“version L”の19インチアルミホイールはハイパークロムメタリック塗装が施されている。こんなにハンドリング優先でつくられた日本製大型セダンは、日産の「インフィニティQ45」以来だろう。Q45のくだりはいま思いついたので書いただけですけれど、それがパワートレインも乗り心地も、年次改良の狙い通り、快適性方向に修正されていて、これなら後席のVIPの方々も納得されるのではあるまいか。

1990 INFINITI Q45レクサス「LS」(初代)のライバル・モデルだったインフィニティ「Q45」。当時は珍しいアクティブサ・スペンションを装着していた。「伸圧独立オリフィス」なる、新しいオイル流路を設定するバルブ機構がついただけで、ダンパーの動きはかくもスムーズになるということなのだろう。それと、前述したランフラット・タイヤの改良等だけでなくて、伊豆の試乗会のとき、筆者が乗った試乗車はオプションの245/45の20インチを履いていたのにたいし、今回は245/50の19インチである。リリースに言及はないけれど、全車標準装備のエアサスも若干ソフトになっているのではあるまいか。

LS500hのマルチステージハイブリッドシステムは、LC同様、299psと356Nmを発揮する3456ccV6と、2基の電気モーター、それに4速オートマチックに相当する変速機構を直列に配置し、最高システム出力359psを得ている。

物理的スウィッチを極力少なくしたインテリア。フロントシートは、28Way(!)調整式パワータイプ。ドアトリムの切子調カットガラスは165万円のオプション。ステアリング・ホイールはウッド+レザーのコンビタイプ(パドルシフト付き)。メーターパネルはTFT液晶式。アクセルペダルはオルガンタイプ。ハイブリッド仕様が搭載するトランスミッションは電気式無段変速機。エンジン+モーターのパワーユニットから取り出した力をギアで変速する仕組みのおかげで、エンジンを上まで伸びやかに回している感があるところがマルチステージハイブリッドの長所だけれど、年次改良でバッテリー・アシスト量を増やしたことにより、ようするにEVモードで走る場面が増えている。電気モーターは単体で最大トルク300Nmを発揮する。モーター走行だから、ものすごく静かで、しかもレスポンスがいい。

駆動方式はRWD(後輪駆動)と4WDが選べる。現行LSのボディタイプはロングタイプのみ(全長5235mm)。上級グレードのリアシートは電動調整式。シート調整やエアコン操作用のモニター(タッチパネル式)はセンタコンソールに内蔵されている。“EXECUTIVE“の助手席シートは420mmスライドする。写真は1番前にセットした状態。ラゲッジルーム容量は400リッター。トランクリッドは電動開閉式。車重は2310kgもあるけれど、リチウムイオン電池をリアのアクスルのちょうど真上に配置していることが幸いして、前後重量配分は理想とされる50対50をほとんど完璧に実現している。

レクサスご自慢の新しいプラットフォームはもともとフロント・ミドシップだから、そもそもよく曲がる。加えて、LSのRWD車は後輪操舵を含め、エンジン、ブレーキ、ステアリングを統合制御するアクティブ・ステアリングを標準装備する。だから伊豆で試して知っていたけれど、よく曲がる。

そのよく曲がるLSがエアサスのふわふわ感を得たのだから鬼に金棒。「ALWAYS ON」で、さらにどんどん改善を加えていくというのだから、大いに楽しみである。

最小回転半径は5.6m。ちょい乗りしたLCに感動それともうひとつ、今回、RX450hとLS500h、それとLC500にも乗る機会を得た。LSとLCがドライビング・フィールに似た印象があるのはプラットフォームが同じだから、かもしれないけれど、RX450hもステアリングとかブレーキとか、操作類の重さや加速の仕方等にレクサスに共通するものが生まれ始めているように感じた。超多忙なスケジュールの合間に章男社長はテスト・コースに姿を現し、実際にステアリングを握って、汗をかいているという。そして、「対話できるかどうか」についてエンジニアに語り、それをエンジニアが数値化する。その数値化、解析方法がわかってきたという。

LC500は4968ccV型8気筒DOHC(477ps/7100rpm、540Nm/4800rpm)エンジンを搭載する。ボディは全長×全幅×全高:4770mm×1920mm×1345mm、ホイールベース:2870mm。レクサスがスゴイのは、今回お話をうかがったLCの製品企画の担当者もLSのチーフエンジニアも、実際にテスト・コースを走っていることだ。世界最大の自動車メーカーのひとつを率いる“カー・ガイ”がみずから走りの味づくりにかかわっている。その熱が組織全体に広がっている。これこそ現在のレクサスの最大の強みであるに違いない。

自然吸気5リッターV8のLC500は、グリーンのボディ色にタンの内装の、イギリス車風に仕立てた“PATINA Elegance(パティーナ・エレガンス)”という名前の特別仕様車で、柔らかくも丈夫な本革のシート表皮が自慢だけれど、筆者的には猛獣の咆哮を思わせるV8サウンドと強烈な加速に感動した。

LC500はニッポンが内燃機関時代の最後に送り出したラグジュアリー・クーペとして自動車史にその名を残すと筆者は思う。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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