GLCと共通のプラットフォームを使いながら、電気モーターを搭載。シームレスな加速感とともに、随所にメルセデス・ベンツらしい心地良い走りが楽しめる。(Motor Magazine 2019年12月号より)
EQはメルセデスのEVに冠される新ブランド
EQは「エレクトリックインテリジェンス」を意味するメルセデス・ベンツの新しいブランド。これまで本国にはBクラスのEVがあったが、今回試乗したEQCは実質的にメルセデス・ベンツの電動化に向けた幕開けと言っていい。
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テスラ モデルXやジャガーIペイスなど、SUV系EVが増えているが、EQCもその仲間だ。
エクステリアデザインは角張ったところがなく、全体がシームレスで繋がってひと塊りに見える。フロントもリアも一筋のライトが左右に繋がっているアレンジで、新しさを強く感じさせる。
EQCは「CクラスのEQ」ということで、プラットフォームはGLCと共通だが、エンジンとトランスミッションがない代わりに、バッテリーと電気モーターを搭載するためのモディファイを施してある。
ボンネットを開けるとエレクトリックドライブモジュールがあるが、綺麗なカバーで隠されている。この部分はサブフレームで囲まれ衝突安全性はガソリン車並みになっているという。
電気モーターは同じものが前後軸に配置される4マティックだ。負荷がないときにはFWDだが、加速時やコーナリング時には後輪へのトルク配分を増やしてドライバビリティを上げている。電気モーターならではの素早くキメの細かい制御が可能だ。
2個のモーターが発揮するパワーとトルクはトータルで300kW(408ps)、765Nmで、床下に収められるバッテリーは80kWhと大容量。約2.5tの車重でも0→100km/h加速は5.1秒、0→60km/h加速も2.5秒と俊足を誇る。
乗り込んで走り出すまでの作法はメルセデス・ベンツそのもの。ブレーキペダルを踏んだままスタートストップスイッチを押し、右手でコラムから生えたセレクターを下に押せばDレンジに入る。
アクセルペダルを踏むと音もなくスルスルと加速していく。スピードを上げても室内は静かだ。風切り音はほとんど聞こえないし、タイヤのパターンノイズもロードノイズも小さく抑えられている。
WLTPモードで航続距離400km
加速だけでなく、ブレーキングや コーナリングでも軽快な動きで、重さを感じさせることは少ない。まあこれが雪道やアイスバーンになれば相応のイナーシャを感じることになるだろうが、アスファルトで走る限りは極めて普通にメルセデス・ベンツらしく安定感のある走りが楽しめる。
インバータの音を聞かせたり、アクセルペダルの操作ゲインを上げてスポーティにしたりという小細工はなく、ある意味では保守的なEVかもしれない。パワーソースはガソリンだろうが、ディーゼルだろうが、EVだろうが、あくまでもメルセデス・ベンツらしい良いクルマを提供したい、という意図が明確に伝わってくる。
あまりにも快適なので長距離ドライブにも行きたくなるEQCだが、80kWhの電気量はさすがに結構な距離を走ることができる。WLTPモードで400kmの航続距離だ。200Vでも、急速充電のCHAdeMOでも充電できる。
ハンドルの裏には回生ブレーキの 効き具合をドライバーが選ぶパドルがある。通常のDは最大減速力0.6m毎秒毎秒、左のパドルでD-(マイナス、0.7m毎秒毎秒)さらにD--(2.5m毎秒毎秒)まで可能。さらに右パドルでD+にすると、回生なしのコースティングも可能だ。EVを意識させず、メルセデス・ベンツらしさを味わえる1台だ。(文:こもだきよし)
■メルセデス・ベンツEQC 400 4マチック 主要諸元
●全長×全幅×全高=4761×1884×1623mm
●ホイールベース=2873mm
●車両重量=2495kg
●モーター最高出力=408ps
●モーター最大トルク=765Nm
●駆動方式=4WD
●車両価格(税込)=1080万円
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