セダンマーケットが大幅に縮小しているなかにあって、国産セダンでは独り勝ち状態にあるクラウンだが、 2018年6月の発売から1年が経過し、販売にデビュー時の勢いがなくなっているのも事実だ。
現行クラウンはクラウン史上初めてニュルブルクリンクで走行テストをしたことがセールスポイントになっているが、そのいっぽうで「硬すぎる」、「ここまでスポーティである必要はない」、といった意見もユーザーから聞こえてくる。
【どうしてエアロパーツは少なくなったのか?】その効果はあるのか?
スポーティすぎるクラウンを販売の現場はどのように見ているのか? クラウンの販売の最前線を遠藤徹氏が直撃!!
文:遠藤徹/写真:TOYOTA、ベストカー編集部
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デビュー後1年経過で販売減
現行クラウンが登場したのは2018年6月26日だった。発売当初は月販5000~7000台とまずは順調に売れ、登録車の車名別販売ランキングで15位以内に入るなどで推移していた。
しかし半年から1年以上経過した2019年1~9月の月販平均では3400台弱であり、大幅なマイナスとなっている。前年対比は9月単月だと37.2%減、ランキングは26位と大幅に後退している。
現行クラウンはクラウン史上初めてニュルブルクリンクを走りこんで開発が進められた。走りのポテンシャルは歴代でもナンバーワンの評価を得ている
この要因を首都圏にあるトヨタ店の営業担当者に聞くと「現行クラウンはよりスポーティ&スタイリッシュでカッコよくなり、これ以上ないくらいのハイクオリティ、走り、安全対策強化で、できは抜群によくなったが、セダンマーケットの縮小、レクサスブランドへの流出、ラグジュアリーミニバンへの乗り換えの流れの加速、などで売れ行きが頭打ちになっている」とコメントする。
苦戦はしているがセダンで独り勝ち
クラウンを乗り継いでいるオーナーにとってクラウンの代名詞でもあったロイヤルシリーズが消滅したことは大きな不満のひとつ
具体的に分析すると、まずセダンマーケットの縮小については国内だけでなく世界的な傾向であり、ここ数年は圧倒的なSUVブームに押されて、生産中止モデルが続出している状況にある。
トヨタの国内向けモデルでもマークX、他メーカーでは日産のフーガは存在自体が希薄になっているし、ティアナも消滅の可能性がささやかれている。
「それでもクラウンは国内では独り勝ちで頑張っている」(前出首都圏トヨタ営業担当者)と胸を張る。
若者を取り込むことをターゲットに開発が進められた現行クラウンだが、皮肉にも若者はレクサスに流れてしまっているという現実がある
レクサスブランドへの流出はレクサスが発足した10年前から少しずつクラウンやマークX(マークII)、カムリのシェアを食い始めていた。
「若い実業家、自由業者はクラウンからレクサスのIS、LSに代替えする傾向が強い」(トヨタ店営業担当者)といった見方もある。
「クラウンは年寄りのクルマ、レクサスは今風の高級セダンだからこちらを選ぶ。」といった考え方をする風潮があるようだ。
これは高級ブランド志向でクラウンユーザーの卒業生がベンツやBMWに乗り替える流れと似ている。ラグジュアリーミニバンへの乗り換えの傾向もある。アルファード、ヴェルファイアを選ぶオーナーが増えており、これもクラウン需要の頭打ちに拍車をかける要因のひとつになっている。
アルファード/ヴェルファイアの豪華&快適な空間に魅了されるクラウンユーザーも多く、ユーザーの流出は深刻化している
ユーザー層はこれまでと変わっていない
現行クラウンは若返りを目指しスポーティ&スタイリッシュなデザインを採用したわけだが、この結果若者ユーザーにはどうアピールできているか。
トヨタ販売店筋によると、「40歳から70歳までのユーザー層は変わっていない。硬すぎる、スポーティ過ぎるとの評価の多くは、長い間歴代クラウンのコアユーザーである法人、会社役員、ミドル以上の高額所得者の指摘といえる」(トヨタ店営業担当者)と語る。
走りのポテンシャルは高いが、クラウンにはここまでの硬い乗り味、スポーティなハンドリングは必要がない、というオーナーも存在する
実際に試乗をしたユーザーのなかには、スポーティすぎる、乗り味が硬すぎる、という理由で購入を回避することもあるという。
実際に今後の商品戦略としてはRSにGRスポーツの設定を検討していたが、クラウンのコンセプトとユーザー層にはニーズがないとして当面は先送りになっている。
ノーマルモデルよりもさらに足回りなどを強化したGRスポーツはこのままお蔵入りとなってしまう可能性が高い。
トヨタにとって現行クラウンはGRの素材として最高の1台だが、ユーザーのニーズがなければ発売する意味がない。このままお蔵入りとなる可能性が高い
値引きは合計30万円ほど
現行クラウンの首都圏にける売れ筋グレードやエンジン構成はスポーティなRSが約60%、ハイブリッド比率は70%、大半は2.5Lとなっている。
つい最近では2019年7月に投入した買い得の特別仕様車「エレガンス スタイル」の売れ行きが高まる傾向にある。10月には同じく特別仕様車の「スポーツ スタイル」を追加するなど積極攻勢をかけている印象だ。
2019年7月に発売を開始した特別仕様車のエレガント スタイルはS、S Fourをベースとした買い得感の高さで上場の人気を誇っている
では、実際に売れ筋のRSについて見積もりを取ってみた。
車両本体価格590万7000円の2.5RSアドバンス(FR)のホワイトパールにITSコネクト、ETC2.0、パノラミックビューモニター、デジタルインナーミラー、プレミアムコーティング、フロアマット、ハーフシートカバー、サイドバイザーなどのオプションパーツ約35万円をつけて弾いて貰うと法定&法定外諸費用込みで670万円弱と出た。
値引きは初回回答で車両本体から10万円、用品10万円、用品サービス10万円、合計30万円となっている。
首都圏のトヨタ店各社は年末までのセールで1.9%と通常よりも1.6ポイント低い低金利の残価設定クレジットで売り込みを強化している販社もある。
クラウンに過度なスポーティさは必要ない、という意見があるいっぽうで、スポーティグレードのRSの販売比率が高いということは、現行クラウンが受け入れられている証拠
証言1:首都圏トヨタ店営業担当者
クラウンは国内では独り勝ちになっているが、セダン市場が極端な低迷状態になっており、厳しい曲面を迎えている。
現行モデルでスポーティ&スタイリッシュなデザインとし、走り、クオリティ、安全対策なども最高に進化させたが、ユーザー層は40~70代と変わっていない。30代で個人事業主といった若い高額所得者はクラウンではなくレクサスに代替えするケースが目立っている。
インテリアのクォリティも歴代クラウンで群を抜くレベルに仕上げられていて、この点はユーザーの評価、満足度ともかなり高い
「クラウン」というブランドがかつてのような「いつかはクラウン」といった憧れのクルマから「金持ちのお年寄りのクルマ」のイメージに変化している。
また「アルファード/ヴェルファイア」のほうにステータス性がシフトしているのも、クラウンニーズの頭打ちを助長させる要因にもなっている。
証言2:首都圏トヨタ店営業担当者
最近のクラウンの売れ筋は最も多いのがRSアドバンスで、設定したばかりの特別仕様車「エレガンス
スタイル」も徐々に売れ行きがよくなっている。
ただ全体としては新型になってから1年以上が経過し、頭打ち傾向にある。レクサス、ラグジュアリーミニバン、ベンツ、BMWに流れているケースもあるが、60~70代でアクアなどコンパクトハイブリッド車へ乗り替える下級車シフトも顕著になっているのも影響している。
クラウンに乗り継いでいるオーナーは高齢者も多く、より運転しやすいコンパクトハイブリッドのアクアなどに流れるケースも無視できない
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