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業界ニュース 2019.10.31

なぜ新型「ヤリス」が1000万円? 交通社会を管理するシンガポールの新車購入制度とは

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■コンパクトカーのヤリスが1000万円になる理由とは

 2019年10月に日本で発表されたトヨタの新型「ヤリス」。発売は2020年2月なので、現時点では価格は未発表ですが、トヨタはヴィッツと同等レベルを維持する考えだといっていることから、150万円から250万円ほどになると予想できます。

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 そんな新型ヤリスがシンガポールに渡ると1000万円を超える車両価格になる可能性があるといいます。なぜ、200万円前後のクルマが1000万円を超えるのでしょうか。

 正確にいえば、価格が高いのではなく、購入するために必要な金額が物凄く高く、日本やアメリカ、欧州、さらにはシンガポール近隣の東南アジアと比べても、ざっと4倍から5倍も高いのです。

 そういわれると「税金が高いんでしょ」と考える人が多いと思いますが、確かに輸入税や所得税など、各種税金や手数料が新車価格と同じくらいの金額によりますが、問題はさらにその先にあります。

 それは、クルマを購入するための権利を買わないといけないということです。これをCOE(サティフィケート・オブ・エンタイトルメント)といい、実施しているのは、シンガポール政府の陸運庁です。

 驚きなのは、COEの購入方法がネット上でのビット(競争入札)であることで、日本人にとっては、不良債権化した不動産を買うようなイメージかもしれません。

 COEの対象車は乗用車・商用車などで4部門あり、乗用車の場合は排気量1.6リッター以下・または最大出力130馬力以下のカテゴリーAと、それ以上のカテゴリーBに区分されています。

 COEのビットは通常、毎月1日(1日2回)おこなわれ、最近ではカテゴリーAとBでは約1000枚のCOEが発行され、競争入札に参加する人は発行枚数の1.5倍から2倍程度です。

 倍率が低いのは、最低入札価格がかなり高いと予測している人が多いので、最初から入札に参加しないのです。

 入札された価格を見ると、月によって大きな差があることが分かります。直近の10月19日実施分ではカテゴリーAが3万4000シンガポールドル(約270万円)です。これが直近6か月間で、最低2万7000シンガポールドル(約216万円)から最高3万7000シンガポールドル(約300万円)まで大きく上下しています。

 そのため、車体価格が250万円ほどの上級グレードのヤリスを購入するには、新車価格と同じほどの各種税金や手数料に加えて、COEの入札価格(最高値の300万円と仮定)も上乗せされると800万円ほどに。場合によっては1000万円近くになる可能性もあるのです。

 それにしても、なぜシンガポールはCOEという世界では珍しいクルマ購入方式をとっているのでしょうか。

■シンガポールは交通をコントロールする国だった?

 筆者(桃田健史)はこの記事をシンガポールで書いています。滞在している理由は、ITS(高度道路情報システム)の世界会議の取材です。

 ITSとは高度交通システムのことで、世界会議には各国の政府関係者、バスや鉄道などの交通事業者、高速道路などの運営事業者、そして自動車メーカーなど交通に関わるさまざまな人たちが約1万人も参加しています。

 シンガポールは、マレー半島の先端にある小さな国。面積が東京23区とほぼ同じで、ここに中国系、マレー系、インド系など多様な民族が560万人も暮らしています。

 そうなれば当然、交通渋滞が懸念されますが、タイのバンコク、インドネシアのジャカルタ、そしてフィリピンのマニラなどの大都市と比べると、渋滞の度合いは低い印象があります。これが、COEの効果です。

 シンガポール政府が自動車の販売台数をコントロールすることで、市場に出回っているクルマの数をしっかり把握。その結果として、渋滞の緩和と排出ガス規制につながっているのです。

 ITS世界会議のセレモニーに登壇したシンガポール政府高官は「我が国はCOEや、ロードプライシングシステムによって、計画的な交通政策を成功させている。この知見をぜひ、世界各国で共有してほしい」と演説しています。

 ロードプライシングとは、市内中心部を通行する際、一般道でも平日の日中や夕方の交通混雑時に通行料を徴収する政策です。徴収には、三菱重工業が日本のETCを参考に開発した、ERP(エレクトリック・ロード・プライシング)が導入されています。

 それにしても、これだけクルマを買うために多額のお金が必要になれば、庶民がクルマが買えないのではないでしょうか。

 実情について、ITS世界会議に参加しているシンガポール人の複数に聞いてみました。

 それによると、やはりクルマは高級品というのが一般常識だといいます。シンガポールはバスや地下鉄が完備され、料金も安く、さらに最近では「グラブ」などライドシェアリングが急速に発展してきたので、クルマを持つ必要性が低くなったということです。

 とくに、30代半ば以下の人は「クルマを運転することは無駄」という意識を持っている人がとても多いという声を数多く聞きました。

 こうした状況は、狭い国土、多民族性、さらに政府の存在感が極めて強いシンガポールならではだと思います。

 日本で都心の渋滞がこれまで以上にひどくなれば、ロードプライシングはありかもしれませんが、COE導入は難しいのではないでしょうか。

 なぜならば、シンガポールには自動車メーカーの製造拠点がありませんが、日本の基幹産業の自動車業界を衰退させるような政策などはおこなえないからです。

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(くるまのニュース 桃田健史)

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