■満充電で400km走行可能! 0-100km/h加速5.1秒の俊足ピュアEV
メルセデス・ベンツから100%電気自動車の「EQC」が発売されました。
素直なハンドリングで幅広いユーザーにオススメ! 新型メルセデス・ベンツBクラス試乗
これまでスマートのEVや、ドイツ本国には「Bクラス」のEVもありましたが、EQCはメルセデス・ベンツのEVに向かう新たなフェーズのスタートです。それはネーミングにも表れていて、「EQ」というのがメルセデス・ベンツの電動化を意味する新しい記号、「C」はCクラスの意味です。
EQCのプラットフォームは、DセグメントSUVの「GLC」がベースになっています。EQCのボディサイズは全長4761mm×全幅1884mm全高1623mmで、全長が少し長い程度でほぼGLCと同じです。
もちろん、ガソリン車とEVでは搭載するパーツが大きく変わりますので、EQC向けにアレンジが施されています。ボンネットを開けるとエンジンの代わりにエレクトリックドライブモジュールが搭載されていて、この周りをサブフレームが囲んでいるのが見えます。これによりパッシブセーフティ性能を引き上げ、ガソリン車並みになっているそうです。
客室のフロア下には80kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーが搭載されています。
一般家庭で使う1か月分の電気量は約400kWhくらいですから、これはおよそ6日分の量です。これにより、2495kgという車両重量でも400km(WLTCモード)の航続距離を誇ります。充電は家庭でおこなう「200V」(リヤバンパー右端)と急速充電の「CHAdeMO」(右リアフェンダー)の2つの方法が可能です。
前後軸にそれぞれ同じモーターが配置されている4マティック(4輪駆動)で、最高出力は300kW(408馬力)、最大トルクは765Nmを発揮し、最高速は180km/hに制限されるものの、0-100km/h加速は5.1秒と俊足をほこります。回生による発電は前後2つのモーターで可能となっています。
加速やコーナリングなどの状況に応じたドライバビリティを得られるように、前後のモーターに最適なトルク配分する協調制御をおこなっています。通常走行の負荷がないときはFWDですが、トラクション重視あるいは曲がることを重視するときはリアに多く配分し、安定性重視ならフロントに多く配分する4WDで走ります。電気モーターなのでスムーズで素早い制御が可能です。
タイヤは前235/50R20、後255/45R20というサイズで、試乗車は最新のミシュランパイロットスポーツ4 SUVを履いていました。これは乗り心地、ドライグリップ、ウエットグリップ、ハイドロプレーン性能に優れたタイヤですが、とくにEV用にふさわしく静粛性も優れたタイヤです。標準ホイールは5本スポークの間に青色のスポークを配置し、EVのイメージを強調しています。
■操作方法もその走り味も、メルセデスらしさを極めている
今回試乗できたのはスタンダードモデル「EQC400 4MATIC」でしたが、2019年中に入手できるEQCとして用意されている「エディション1886」には放射状の細かい模様の専用ホイールが組み込まれています。
エクステリアデザインはどこを見ても角が丸く、ヌメッとした印象で全体がひとつの塊に見えます。それでもフロントグリルの真ん中にスリーポインテッドスターが鎮座することで、誰もが即座にメルセデス・ベンツと認識できます。
MBUX(MercedesーBenz User Experience)と呼ぶ、音声認識アシスタントで操作できるインフォテインメントも装備されています。もちろんEV用にモディファイされて、航続距離、充電状況、エネルギーフローなどの情報が得られ、充電時間や出発時刻に合わせた空調などの設定もできるようになっています。
EQCに乗り込んで走り出すまでの操作は、他のメルセデス・ベンツと何ひとつ変わるところはありません。もし奥さまが日常的にメルセデス・ベンツに乗っているのなら、何のコクピットドリルも不要でそのまま乗ることができるでしょう。
シートポジションを合わせて、ハンドルとミラーの位置も合わせて、シートベルトをして、ブレーキペダルを踏みながら左手でスタートボタンを押し、右手でセレクターを下に下げればDレンジに入って、アクセルペダルを踏めば走ります。そして奥さまは「あらっ、今度のクルマはずいぶん静かになったのね」とつぶやくでしょう。
エンジンがないことで当然吸気音、排気音、エンジンの回転音もありません。EVでもインバータの音もほとんど聞こえません。さらにスピードを上げた場合でも、風切り音もタイヤのパターンノイズ、ロードノイズも最小限に抑えられていて、今のメルセデス・ベンツのラインナップのなかで、静けさではトップランクのモデルといえるでしょう。
ただ運転の仕方で違っているのは、パドルシフトの使い方です。
トランスミッションがないので、シフトダウンもアップもできないですが、アクセルペダルを戻したときの回生の強さをパドルによって変更できます。通常は「D」になっていて最大減速力が0.6m/s2です。
左側のパドルを一度引くと「D-」になり、1.7m/s2でブレーキランプが点灯する程度の減速力になります。
さらに左パドルを引くと「D–」になり、2.5m/s2という高速道路の本線上の料金所に向かってスピードダウンするくらいの強めの減速力が出ます。
このように、ワンペダルドライビングができそうな回生ブレーキですが、停止までは制御しないのとクリープは働くので、最後はブレーキペダルを使って止まらなくてはなりません。こういう点でもEQCというEVを特殊扱いせず、これまでのメルセデス・ベンツと変わらない走りと運転の仕方を目指しているのです。
ブレーキペダルの感触はダイレクトな感触ではなく、強いスプリングを介して押すような感じが、通常のエンジン付きメルセデス・ベンツモデルとは違う点でしょう。
静かで滑らかな走り味は、EVテイストを丸出しにした未来感ある走りのテスラ「モデルS」や、スポーティな走りを売りにしたジャガー「Iペイス」などとも違って、上級なメルセデス・ベンツの乗り味をEVで味わえるように仕立てたのがEQCなのです。
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