現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則28】カイエンはポルシェにとって「新しい形のスポーツカー」だった

ここから本文です
業界ニュース 2019.10.17

【ヒットの法則28】カイエンはポルシェにとって「新しい形のスポーツカー」だった

  • みんカラ つぶやく
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2002年のパリ オート サロンでワールドプレミアされ、2003年春に日本デビューを果たしたポルシェ カイエン。その後、世界のポルシェ総販売台数の半分以上を占める稼ぎ頭に成長している。ポルシェにとって、カイエンとはどういうクルマだったのか。2005年春、カイエン ターボの試乗をとおして、こもだきよし氏が検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年5月号より)

カイエン登場の裏にあるバイザッハ研究所の存在
カイエンはポルシェの歴史の中でユニークな存在なのかというと、ボクは決してそんなことはないと思っている。ただポルシェブランドとしてSUVであるカイエンを製造したということがエポックなのである。つまりポルシェとして「形」はユニークだが、そこにはハイパフォーマンスなスポーツカーを創ろうという意図が明確に見えており、SUVといえどもスポーツカーメーカーであるポルシェらしいクルマに仕上がっていると思うからだ。

    判明した! ヴィッツ改めヤリスのアウトライン

もうひとつ。ポルシェとして、というよりその傘下のバイザッハ研究所としてのクルマ創りのノウハウは、何もスポーツカーばかりではない。バイザッハ研究所には世界のカーメーカーから開発の依頼が数多く来ている。そこでさまざまなクルマの研究開発がなされているからだ。バイザッハ研究所がEクラスをチューニングして、メルセデス・ベンツが500Eとして販売したのは有名だ。もう少し古い話では、アウディ自慢のクワトロ4WDシステムもバイザッハ研究所が開発に関わったと言われている。

これらでもわかるように、ダイナミックな性能の研究開発では世界の最先端を行っているバイザッハ研究所は、何も背の低いスポーツカーばかり手がけているわけではないのだ。我々には知らせることなくバイザッハ研究所の手を経て発売されているクルマが多くあるということも否定できない。

カイエンの場合には、そのクライアントがポルシェ本社になっただけだ。もちろん並みのクルマを創るのではなく、究極のパフォーマンスを発揮するスポーツカーとしてのSUVに仕上げることが条件になった。

なぜこのようなSUVがポルシェに必要だったのかを追求していくと、それはポルシェという会社を21世紀にも末永く繁栄させるためのマーケティング上の手段であることに気付く。

ポルシェが生き延びるためにはアメリカ市場を無視することはできない。2ドアの高級スポーツカーを創り続けるだけでなく、もっと幅広い層にも訴えかけることができるクルマが望まれたのだろう。そのクルマはメインターゲットがアメリカ市場だとしても、ヨーロッパやアジアなど他の市場でもある程度の需要が期待できるものでなければならない。そのひとつの答えがカイエンというSUVなのである。

アメリカ市場を重視しなければならないという現実はポルシェに限ったことではない。例えば毎年莫大な利益を出しているトヨタだが、北米市場による販売がなければ、半分の利益を出すのも難しいかもしれない。レクサスブランドを成功させ、ドイツ高級車と肩を並べておいしい商売をしている。

ホンダはそれ以上だ。日本でのアコードの販売台数は月1000台を超える程度。しかしオハイオの工場で年間40万台もの北米向けアコードを生産しているのである。三菱はアメリカ市場での販売に失敗した。いま会社の建て直しが思うようにはかどらないのも、アメリカ市場を持ってないからだ。

このように、今や日本の自動車メーカーもアメリカ市場を無視した経営は成り立たなくなっているのである。でもポルシェにも、もうひとつの選択肢はあったはずだ。それはアメリカ市場に頼らない経営だ。細々と2ドアの純粋なスポーツカーを創り続け、理解してもらえる人にだけに買ってもらうという方法だ。

しかしMBAの資格を持った経営者がポルシェにいるとしたら、先の見通しが利かない細々とした活動より、販売台数と売上高を伸ばし、利益を大きくし出資者に配当を出すことを善とするだろう。そのためには大きなマーケットであるアメリカを優先した経営をしなければならない。

かつてのイギリスの自動車メーカーを例に出すまでもなく、繁栄していることにあぐらをかいていると衰退してしまうことは明らかだ。いくら良い味のクルマを作る技術があっても、会社に力がなければそれを生産に結びつけることができなくなる。そうした判断をポルシェの経営者がしたはずだ。

ポルシェが背の高いSUVに手を染めたというのは「なんでも創るぞ!」というポルシェからのメッセージだと感じたのはボクだけではないだろう。

ただしこれが4ドアの911やノッチバックセダンのポルシェだったら、カイエンほどのインパクトはなかったろう。背の低い2ドアスポーツカーとは正反対のクルマをポルシェが創ったから面白いのである。

でもカイエンを並みのSUVにするわけにはいかなかった。それは根幹であるスポーツカーのイメージを引きずり下ろしてしまう可能性があるからだ。あくまでもスポーツカーメーカーのポルシェでいなければ、生き延びてはいけないことを経営者は知っているのである。だからカイエンは安易に台数を増やすだけのクルマではない。

怒涛の加速力と室内の高級感、ポルシェらしい高度な技術力
今回連れ出したカイエン ターボに乗ると、高級車であると同時にスポーツカーとしての資質を兼ね備えていることがすぐにわかる。ドライバーはスポーツカーとしてのパフォーマンスを楽しむことができるし、パッセンジャーシートに乗る人は高級車に乗ったことに満足できるだろう。

高級車としての証は豪華なインテリアである。電動調整式の革シートは大きくかつパシッとした張りがあって、座り心地が良い。アルカンタラの内張りもしっとりとした高級イメージを作り出している。ボディ設計時から共同開発していくことで最高の音響環境を作り出すボーズ社のオーディオも素晴らしい。CDを積極的に車内で聴きたくなるのがボーズサウンドである。

スポーツカーとしての証は怒涛の加速感だ。単に速いというのではない。ボディに重量感があって、それを押し出す凄いパワーを感じることができるようにわざわざチューニングされているかのようだ。

パワーウエイトレシオを小さくして加速力を高めるだけではなく、2.5トンに迫る重量を押し出す凄いパワーを感じさせるという意味である。それはまるで格闘技のようだ。重量級の選手の戦いはそれだけで迫力があるが、そのファイトをクルマで感じることができるのだ。0→100km/hの加速をカタログで見てみると、カイエン ターボの5.6秒というのは911カレラ(6速MT)の5.0秒と比べても遜色ない。同じ911カレラでも5速ティプトロニックSの5.5秒とほぼ同じ加速力だ。911は1.5トン弱であるから、それより1トンも重いクルマが同じ加速をするという尋常ではない現象にただ驚くだけだ。

300km/hまでのスピードメーターは伊達ではない。最高速度は266km/hだ。アウトバーンの長い下り坂ではもっと出すことができるだろう。250km/hのメーカー自主規制などしないのもスポーツカーメーカーたるポルシェらしいところ。

ハンドリング性能も、重量を感じながらもよく曲がるのが凄い。今回のカイエン ターボはオプションの275/40ZR20 106Y NOを履いている。NOというのはポルシェの承認タイヤの印。カイエンでも911やボクスターと同じレベルで扱っている証明である。このピレリPゼロ ロッソのグリップ力は助けになっているが、グイグイとハンドルの通りにノーズを内側に向けていくのも迫力がある。ここでも重量を感じながらも舵角に比例したハンドリング性能を有していることに敬服する。911やボクスターとは別世界のクルマの楽しみ方、ドライビングフィールを味わわせてくれる。

ブレーキ性能は赤いキャリパーがその存在を示してくれる。ここでも車両重量を感じるものの、ブレーキペダルの踏力に比例した制動力を引き出せるから安心感がある。ブレーキ性能の高さと信頼性はポルシェの伝統でもあるが、カイエンにも継承されている。

こうしたパフォーマンスだけでなく、スポーツカーメーカーのポルシェらしい高度なエンジニアリングも感じることができる。それはアクセルペダルの電子制御プログラムである。

ATのアクセルペダルの電子制御プログラムといえば、いわゆる登坂・降坂制御が思いつくが、一般的なクルマでもこれだけでなく雪道モードとかスポーツモードとか暖機運転モードなどもある。これらのプログラムは数種類用意されているのが普通だが、ポルシェはなんと数百種類ある。それを911やボクスターと同じようにカイエンにも採用しているようだ。

アクセルペダルの踏み込み具合に応じてシフトプログラムを切り替えるのだが、アクセルペダルの踏み込み深さ、踏み込み速さに応じて数百種類のプログラムに当てはめていくのである。だから同じようなアクセルコントロールをしても微妙に条件が異なるときにはシフトアップポイントが変わるのだ。

カイエンは単に速いだけでなく、こうした高度な知性も持ち合わせている。それがポルシェらしさでもあり、世界でトップのスポーツカーメーカーとしての自負でもあるのだろう。

これからもポルシェは他の形のクルマを作る可能性は否定できない。しかしあくまでも高級なスポーツカーを創るという軸はこのカイエンと同じようにブレないはずだ。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2005年5月号より)

ヒットの法則のバックナンバー

ポルシェ カイエン ターボ(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4800×1950×1700mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:2480kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4510cc
●最高出力:450ps/6000rpm
●最大トルク:620Nm/2250-4750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:1360万円(2005年当時)

[ アルバム : ポルシェ カイエン ターボ(2005年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

  • みんカラ つぶやく
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

(Webモーターマガジン Motor Magazine編集部)

コメントの使い方

みんなのコメント

ログインしてコメントを書く

  • kam*****|2019/10/17 20:06

    違反報告

    カイエンは5人慣れて荷物もそこそこ積めて、安心してぶっ飛ばせる最高のファミリーSUVだと思います。ただし歴代の911も程よく所有していますが、比べるとカイエンをスポーツカーと呼ぶのは個人的には違うとは思います。
    空冷信者やら、オンリー911信者、NA6発信者とか、今後は内燃オンリーとか、色々言う人はいますが、カイエンもマカンもパナメーラもタイカンも間違いなく全てポルシェがポルシェのラインナップとして製造しているのは間違いない。
    個人的にポリシー持ってこだわるのは良いけど、あれはダメとかこれはポルシェじゃないとか言ってる人は正直めんどくさいです。
    カイエンは間違いなくよくできたポルシェです。
  • nta*****|2019/10/17 19:37

    違反報告

    初代カイエンが出たとき「こんなのポルシェじゃない!」と騒いだ奴ら。今はどう思う?カイエンに謝れ!
    ポルシェはポルシェなんじゃ!
  • pov*****|2019/10/17 20:24

    違反報告

    初代のが出たときに仕事用に使えるか確かめにディーラーに見に行ったけど思ってたほど荷物乗らないし見た目もお粗末で残念な車だなと実感したのは今も覚えてます。

(株)カービュー関連サービス

メールマガジン メールマガジン

愛車無料一括査定

あなたの愛車今いくら?

車の種類を選択
事故車 商用車
お住まいの郵便番号を入力
-
※郵便番号がわからない方はこちら

※(株)カービューのページへ移動します