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外見からは推し量れない進化──、911カレラ海外試乗

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外見からは推し量れない進化──、911カレラ海外試乗

第8世代となった911シリーズの新型、タイプ992のベーシックモデル「カレラ」に、日本導入に先駆けドイツで試乗する機会を得た。

ポルシェ911は、1964年に初代が誕生して以来、丸いヘッドランプや基本的なスタイリングを55年間踏襲し続け、後軸より後ろにエンジンを搭載し、後輪を駆動するRR(Rear engine, Rear wheel drive)方式を基本とすることはかわっていない。これによる利点は、後輪のトラクション性能に優れることと、後部座席のスペースを確保できること。911が今なお世界中で支持されているのは、第一線級の走行性能を持つスポーツカーであると同時に、狭いながらも後部座席を備えた4シーターカーであるからにほかならない。

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そして、もう1つの人気の要因が巧みな商品企画にある。先代のタイプ991になぞらえてみれば、ボディタイプは「クーペ」、「カブリオレ」、「タルガ」の3タイプを基本に、駆動方式は2WDと4WDの2種類がある。さらにエンジン出力やスポーツ性能の違いによって、「S」をはじめ「ターボ」、「GTS」、「GT3」、「GT2」などが追ってライナップに加わることになる。これらの掛け合わせによってモデル数はなんと20を超えていた。ちなみに911だけで2018年の年間販売台数は約3万6000台。価格帯も異なるので単純比較はできないが、フェラーリが9251台、SUVの投入でセールスを倍増しているランボルギーニが5750台なので、911の人気の高さは瞭然だ。

カレラのボディサイズは、全長4519×全幅1852mm×全高1298mm。価格は1335万円から。ポルシェは、このタイプ992ではまず高出力版である「カレラS」とその4WD版の「カレラ4S」を市場に導入した。現在、日本国内でデリバリーが始まっているのもこの2モデルだ。ではなぜベースのカレラではなく、カレラSを先に発売したのか? この問いかけに911と718のセールス&マーケティングダイレクターを務めるヘンリッヒ・クリストフ氏は、「それはカレラSがもっとも人気のあるモデルだからです」とこともなげに答えた。

実は欧米ではカレラとカレラSの比率がおよそ3:7にも及ぶのだという。もちろん追ってGTSなどが登場するとその比率は変わってくるようだが、それにしてもカレラSが一番人気だ。一方で日本市場はといえば、圧倒的にベースのカレラの人気が高い。タイプ991ではおよそ5割がカレラで、ボディタイプは約85%をクーペが占めたという。

カブリオレのボディサイズは、全長と全幅はクーペボディと同じで全高が1297mmとなる。エンジンなどのスペックはカレラと共通で、価格は1560万円から。時代の要請に応えたコンパクトスポーツフランクフルトモーターショーのプレスデイの翌日、「カレラ」と「カレラカブリオレ」、そしてフランクフルトモーターショーで発表になったばかりの「カレラ4」と「カレラ4カブリオレ」というカレラから派生した4モデルの試乗車が用意された。

まずは日本では一番人気の仕様になるであろうタイプ992のカレラクーペを選んだ。実は、991の時代までは2WDと4WDで使い分けられていたボディが統一された。具体的に言えば991では4WDモデルは2WDに対してボディ全幅が約40mm広くなっていた。それが992の2WDでは、991の4WDとほぼ同寸の全幅1852mmに拡大して、一気にシャシー性能を高めている。そしてこの抑揚のあるワイドボディゆえに視覚的にも大きくなったなあという印象を強く与える。実際の数値は全長4519mm、全幅1852mmで、メルセデスCクラスやBMWの3シリーズと大差ない。今どきの基準でいえば“コンパクト”スポーツと言ってもいいんじゃないかと思うのだけれど。

カレラの標準タイヤがフロント19インチ、リア20インチなのに対して、オプションのフロント245/35ZR20、リア305/30ZR21のタイヤを装着していたことも大きいと感じた要因だろう。さらにオプションのスポーツエグゾーストを装着していたので、外観上はリアのエンブレムを見なければ、カレラなのかカレラSなのかカレラ4なのか見分けがつかない。

カレラとカレラSの最大の違いは、エンジン出力だ。両者とも991型後期より採用された3リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンに、最新の排ガス規制をクリアすべくガソリン微粒子フィルター(GPFべース)を装着する(とはいえ、排ガス規制の違いから日本仕様ではGPFは装着されないという。よりダイレクト感を享受できるというわけだ)。一方でパフォーマンス向上のためにインタークーラーを移設するなどクーリングシステムを新設計し、ピエゾインジェクションバルブを初採用した点などは共通だ。「カレラS」の最高出力は450ps、最大トルクは530Nm、一方でベースモデルの「カレラ」は最高出力385ps、最大トルクは450Nmとなる。加速性能でみれば、0-100km/h 加速はカレラSの3.7秒に対してカレラは4.2 秒、共にオプションのスポーツクロノパッケージを装着した場合には、さらに0.2 秒短縮できるという。

サイドサポートが大きく張り出したスポーツシートに腰掛ける。インテリアは、初代911を彷彿とさせる水平基調のデザインに最新のデジタルデバイスを組み合わせたモダンなもの。991から乗り換えるとひと目で新しさを感じる。911伝統の5連メーターは、中央のタコメーターのみアナログで、周りの4つはデジタル液晶になった。ここに速度や燃費や空気圧のみならず、オプションのアダプティブクルーズコントロールなど、ADAS(先進運転支援システム)の情報が映し出される。スポーツカーであっても時代の要請に応じる必要があるというわけだ。

インテリアは先に投入したカレラSと共通。センターコンソールには10.9インチのタッチディスプレイを搭載し、ディスプレイやスマートフォンから車両を操作できるPorsche Connectが利用可能。911のベースグレードならではの良さキーレスゴーによって、鍵をさすというアクションはなくなったけれど、ステアリングの左側にあるノブを右にひねってエンジンを始動する911伝統の儀式は踏襲されている。暖機を終えたエンジンは、GPFの影響なのか思いのほか静かだ。それゆえ試乗車のすべてにオプションのスポーツエグゾーストが装着されていたのだとのちに気づくことになる。市街地ではノーマルで走り、郊外のワインディングなどで興が乗ってくれば、スイッチ1つで切り替えられるのがいい。4000回転を超えたあたりから気持ちのよいサウンドを奏でる。

メーターパネルには、アナログメーターに2つの7インチディスプレイを組み合わせる。速度などだけでなく先進運転支援システムの情報を確認できる。タイプ992から標準装備になった8速PDKは、低速域からスムーズに変速を行い、ノーマルモードでは効率的にタンタンとリズムよくシフトアップしていく。Sportモードではシフトスピードを高め、高回転域を維持しながら走る。先出のクリストフ氏に、MTの設定はないのか尋ねると、「そう遠くないタイミングで7速MTを導入するから楽しみにしていて」と答えた。日本にMT仕様が導入されるのかついては、まだポルシェジャパンからアナウンスはないが、期待して待つことにしよう。

フランクフルトの市内からポルシェ本社のあるシュトゥットガルトまで、約300kmをアウトバーンをメインに走った。カレラには、Sにはオプションで用意されるリアアクスルステア(4WS)の設定はないが、ギア比は先代比で11%高められておりドライバー入力に対して素直に反応する。静粛性は高く、アルミの比率を7割に高めたことによる高剛性ボディの恩恵もあって大径タイヤがバタつくようなこともない。フロントトレッドの拡大によってスポーツカーとしての性能を高めたのはもちろん、スタビリティも大幅に向上し、グランドツアラーとしての能力にも磨きがかかっている。

途中でカブリオレに乗り換えた。ソフトトップの骨組みはマグネシウム合金製で、リアウインドウはガラス製。50km/hまでなら走行中の開閉も可能で、機構に新技術の油圧システムを採用したことにより、所要時間は約12秒にまで短縮されている。オープンカーというと、屋根をあけた途端にボディのねじり剛性が落ち、ステアリングのレスポンスが鈍くなるようなクルマもあるが、一般道を走行している限りそういったレベルの低いネガは一切ない。ワインディングでは電動ディフレクターによって風の巻き込みが最小限におさえられているし、スポーツエグゾーストの音も心地いい。実際、欧米ではクーペとカブリオレの比率がほぼ50:50なのだという。日本ではカブリオレの割合はわずか1割というから、911の楽しみ方にもいろいろな違いがあるのだ。

カレラにはもちろん日本で先に試乗したカレラSほどの速さはない。いや正直にいえばカレラSは日本の道には速すぎるとすら感じた。カレラでアウトバーンやドイツ郊外の制限速度100km/hのワインディングロードを走っていると、適度なパワー感に惹き込まれた。誰にでも扱いやすく、速く、快適に、911の根幹をなすモデルとして「カレラ」は、外観の変化からは推し量れないほどの進化を遂げている。カレラの販売はすでに日本でも始まっている。デリバリー開始は2020年の年初の予定という。

文・藤野太一 写真・Dr. Ing. h.c. F. Porsche AG 編集・iconic

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