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【スズキ悲哀のハイブリッド事情】スズキのハイブリッドはトヨタと組んで変わるのか!?

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【スズキ悲哀のハイブリッド事情】スズキのハイブリッドはトヨタと組んで変わるのか!?

 スズキは現在2種類のハイブリッドを設定している。燃費はいいけど価格が高いフルハイブリッドと、価格は安いが燃費ではフルハイブリッドに少し劣るマイルドハイブリッドだ。

◆ マイルドハイブリッドを設定する車種
・イグニス
・クロスビー
・スペーシア
・スペーシアカスタム
・スペーシアギア
・ワゴンR
・ワゴンR スティングレー

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◆マイルドハイブリッドとフルハイブリッドを両方とも設定する車種
・スイフト
・ソリオ
・ソリオバンディット

※フルハイブリッドだけ設定している車種はない

 以上のラインアップを揃えるスズキだが、ディーラーマンによると、「他社はハイブリッドが人気だが、価格や省燃費性能を考えると、スズキではフルハイブリッドではなくマイルドハイブリッドを進めることが多い…」と、販売単価の高いハイブリッド車を進めにくい内情があるという。

 そんな悩めるディーラーを抱えるスズキは、2019年9月にトヨタとの資本提携を発表した。

 ハイブリッド技術の特許を無償公開するなど、ハイブリッド技術に強い自信と戦略を持っているトヨタと組むことで、スズキのハイブリッド車戦略は変化する可能性があるのか?

 また、トヨタのハイブリッド技術を搭載したら、価格面と性能面で魅力的な軽のハイブリッド車が生まれる可能性があるのか? その可能性を分析してもらった。

文/渡辺陽一郎
写真/SUZUKI、編集部

【画像ギャラリー】フルハイブリッドを搭載したスズキ車を紹介!

■スズキが保有するハイブリッド技術

◆シンプルなマイルドハイブリッド
 スズキの小型/普通車が搭載するハイブリッドは、マイルドタイプとフルハイブリッド(ストロングハイブリッド)に大別される。

 マイルドハイブリッドは、ISG(モーター機能付き発電機)/リチウムイオン電池/制御システムを搭載する。ISGが減速時を中心とした発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う仕組みだ。

マイルドハイブリッドは、減速時のエネルギーを利用して発電し、加速時にはその電力を活かしてエンジンをアシストすることで燃費の向上を実現する

 モーターの最高出力は3.1ps、最大トルクは5.1kgmと小さく、モーター駆動を体感しにくいが、燃費数値は非装着車に比べて12~14%向上する。

 またISGではアイドリングストップ後の再始動をベルト駆動で行うため、一般的なスターターモーターを使った再始動に比べてノイズが小さい。

 そうなるとアイドリングストップの作動に伴う煩わしさも解消され、頻繁なアイドリングストップが可能になるため、燃費の節約効果をさらに向上できる。

◆ユニークなフルハイブリッド
 そのいっぽうでスイフトやソリオは、マイルドハイブリッドと併せてフルハイブリッドも用意する。

フルハイブリッドは、デュアルジェット エンジンにMGU(駆動用モーター)とAGS
(オートギヤシフト)を組み合わせ、エンジン出力にモーター出力を上乗せして力強くアシストする走行モードと、EV走行モードを可能にしている

 モーターの最高出力が13.6ps、最大トルクは3.1kgmとされ、マイルドハイブリッドと違ってモーター駆動を体感できる場面も多い。

 エンジンを停止させてモーターのみで走ることもあるから、周囲に注意を促す車両接近警報装置も採用されている。

 マイルドハイブリッドのトランスミッションは、無段変速ATのCVTだが、フルハイブリッドは有段式の5速AGS(オートギヤシフト)だ。

AGS(オートギヤシフト)は、MTをベースにクラッチおよびシフト操作を自動で行う電動油圧式アクチュエーターを採用したトランスミッションで、一般的にはAMTと呼ばれている

 5速AGSは1組のクラッチを自動的に操作するため、ホンダやフォルクスワーゲンが採用する2組のクラッチを使うタイプに比べて、コストが安い代わりに変速時間が若干長い。この影響で変速の度に加速が途切れ、車両の動きがギクシャクしやすい。

 そこでスズキのフルハイブリッドでは、5速AGSの変速タイミングを見計らって、モーターの出力を一時的に高める。加速が途切れにくく、シングルクラッチ方式のATとしては滑らかな変速を行える。

 ただしそれでも販売店によると「主力はマイルドハイブリッド」だという。一番の理由は、燃費と価格のバランスだ。


■コスト競争力が低いフルハイブリッド

 フルハイブリッドの価格は、マイルドハイブリッドに比べて割高だ。ソリオの場合、消費税が8%で22万4640円、10%では22万8800円高い。JC08モード燃費は、マイルドハイブリッドが27.8km/L、フルハイブリッドは32km/Lになる。

 実用燃費がJC08モード燃費の85%、レギュラーガソリン価格が1L当たり145円で計算すると、1kmを走るのに要するガソリン価格はマイルドハイブリッドが6.1円、フルハイブリッドは5.3円だ。フルハイブリッドを選ぶと、1km当たり0.8円を節約できる。

 この節約によって22万円を超える価格差を取り戻すには、27万kmを走らねばならない。現実的には、フルハイブリッドの価格上昇分を燃料代の節約で取り戻すのは困難だ。

ソリオ(写真左)はマイルドハイブリッドが170万3160~208万1160円、フルハイブリッドが201万9600~217万9440円。ソリオバンデッド(写真右)はマイルドハイブリッドが194万4000~207万360円、フルハイブリッドが216万8640円

 フルハイブリッドの損得勘定を成立させるには、マイルドハイブリッドとの価格差を半額以下に抑えねばならない(フルハイブリッドの燃費を大幅に高めるのは無理だ)。

 仮に価格差が10万円であれば、12~13万kmで取り戻せるから、1年間に1.5万km以上を走るユーザーにとっては現実的な選択になり得る。

 それができない理由はふたつある。まずはISGを使ったマイルドハイブリッドが軽自動車にも普及して大量に売られ、低価格を実現できたことだ。

 量産効果に基づくコスト低減により、マイルドハイブリッドと非装着車の価格差が実質約10万円に縮まった。マイルドハイブリッドは、燃費性能を割安に向上させている。

 ふたつ目の理由はフルハイブリッドが高コストなことだ。

 開発者によると「フルハイブリッドが装着している5速AGSは、スズキの内製だから、燃費だけでなくコストを低減させる効果も大きい」というが、それでもなお、フルハイブリッドはマイルドハイブリッドに比べて22万円以上高い。生産台数が少ないこともあり、価格を下げられない。

 このほか5速AGSの変速フィーリングも売れ行きに影響を与えた。前述のようにフルハイブリッドの5速AGSは、変速タイミングを見計らってエンジン出力を高める制御を行い、シングルクラッチの欠点を抑えている。それでもCVTに比べれば違和感が生じるから、販売店の説明を聞いてCVTのマイルドハイブリッドを選ぶユーザーもいる。

 バリエーションも異なる。マイルドハイブリッドでは、前輪駆動の2WDと4WDを選べるが、フルハイブリッドは2WDだけだ。駆動方式の選びやすさでもフルハイブリッドは不利になり、量産効果の向上を妨げる。

 以上のような事情に基づいて、スズキのフルハイブリッドは高価格だが、トヨタとの資本提携によって安くなる可能性はないのか。

■トヨタと組むことでハイブリッド戦略に変化はあるか?

 トヨタのTHSIIは低コストのシステムとはいえず、排気量が最も小さなタイプでも1.5Lだ。全長が3.7~3.9mに収まる1.2Lエンジンを主力としたスズキのコンパクトカーに、そのまま搭載するのは難しいだろう。

 しかし、将来的にモーターや駆動用リチウムイオン電池をトヨタ車と共通化できれば、量産効果によるコスト低減が可能になる。現状で22万円に達するマイルドハイブリッドとの価格差を、10万円に近づけることも可能になるかも知れない。

アクアが搭載するハイブリッドシステムは、1.5Lエンジン+THSIIだ。生産台数の多いトヨタと部品共用化ができれば、量産効果によるかなり大きいコスト削減が可能になる

 それでも主力はマイルドハイブリッドであり続ける。コンパクトカーはボディが軽く、ノーマルエンジンの段階から低燃費を開発の柱に据えている。そうなるとマイルドハイブリッドでも優れた燃費性能が達成され、フルハイブリッドを用意しても大幅に向上させるのは難しい。

 トヨタを含めた他メーカーのように、ノーマルエンジンとフルハイブリッドの2種類だけを用意するなら成立するが、スズキのようにノーマルエンジン/マイルドハイブリッド/フルハイブリッドの3種類では、フルハイブリッドに割高感が生じてしまう。

 またコンパクトカーは、営業車などを除くと、1年間の走行距離が伸びにくい。買い物などの日常的な移動に使われ、1年間に走る距離が5000km以下の車両も多い。これではフルハイブリッドのメリットを得にくい。

 以上の点を踏まえると、トヨタとの提携も、マイルドハイブリッドの燃費向上やさらなるコスト低減に生かすのが得策だろう。

 ユーザーにとっても、トヨタ車とスズキ車が同じハイブリッドを搭載したところで、大きなメリットは生じない。

 トヨタのTHSIIを搭載したアクセラハイブリッドも販売面で失敗した。スズキの独自性と、トヨタとの提携効果を両立させてほしい。

【画像ギャラリー】フルハイブリッドを搭載したスズキ車を紹介!

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