驚愕のストレッチでもはや車種判別不能
心臓部には4.2LV8ツインターボを収める!
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ボンネビルで最高速を出すためだけに作られたマシン(実際はストリートカーもあったりするけど)は、目的がハッキリしてる分、割り切った、あるいは想像もつかないようなメイキングが施されてて実に面白い。2009年、4輪クラスには381台、2輪クラスには179台ものエントリーがあったけど、その中で我々の目を最も引いたのがコレだ。
ベースはシボレーキャバリエで、日本でも90年代なかばにトヨタがOEM供給を受けて販売したアレ。所ジョージが出てたテレビCMを覚えてる人も多いだろう。一見するとゼロヨンマシンのファニーカー風だけど、全長はそれよりはるかに長いハズ。フロントマスクは一応キャバリエっぽく仕上げられている。派手なカラーリングを施さず(時間がなかった!?)、シルバーのボディにゼッケンとクラス、エントラント名のみ入ったシンプルな見ためがカッコいい!
といってもこのマシン、パイプフレームでシャシーを全面的につくり直すことで超ロングノーズ化が図られ、もはやガラスエリアとテール周りにベース車の面影を残すのみ。ひとめ見て、すぐにこれがキャバリエだとわかる人は、まずいないと思う。さらに、搭載エンジン&駆動方式も直4横置きFFからV8縦置きFRへと改められていたりする。
エンジンはシボレーのV8通称スモールブロックで排気量4228cc(258ci)。ホイールベース延長によって完全なフロントミッドシップとされている。その片バンクに1基ずつ、ショップで組み上げられたオリジナルタービンがセットされ、最大ブースト圧1.5キロ+α時にピークパワーは1000psに達するという。
面白いのは、ホーリー製4バレルツインキャブ→ターボチャージャー→インマニという吸気系のレイアウトで、ターボは空気でなく混合気を加圧してるってことだ。一般的なキャブターボはターボチャージャー→キャブ→インマニという配置になるからキャブを覆うボックスが必要になるけど、これなら不要。さらに、吸気量に対する燃料を最適化できるメリットもあるワケだ。しかも、大排気量ターボ(アメリカじゃむしろ小さいくらいかもしれないけど…)でありながら、レブリミットは8400rpmと、かなりの高回転型に仕上がっている。
また、ボンネビルを走る最高速マシンではよく見られるけど、ラジエターを持たない点にも注目。リヤのラゲッジスペースにウエイトを兼ねた巨大な水タンクを積んで、そこからエンジンに循環させることで冷却してるのだ。
そんなエンジンに組み合わされるミッションは、ドラッグレースで高い実績を持つアメリカ・リバティ製の5速直結タイプ。独自のクラッチレス構造を持ち、エアシフターを追加することで切れ目のない加速を実現している。
さらに、足まわりは前後ともストロークに対して対地キャンバー角が変化することなく、構造的にもシンプルなリジッド式を採用。タイヤ接地面積の変化やアーム類のトラブルが文字通り“命取り”になりかねないボンネビルでは、もっとも信頼性の高いサス形式といってイイ。
フロントサスはストローク時のヨコ方向のズレを防ぐため、パナールロッドにワッツリンク式が使われる。また、ホーシングの前方にセットされた黒いボックスが燃料タンクで、フレームにくくりつけられたスイッチはメンテ時にクルマを持ちあげる油圧ジャッキ用だ。
フロントサスのナックル部。リジッド式サスでフレーム側にダンパーユニットが付き、さらにブレーキを持たないため見た目はシンプルそのものだ。
リヤサスはホーシングを左右で支えるダンパーユニットの他、デフキャリア部にも上下2本のダンパーユニットが水平にセットされる。これはホーシングの前後方向の動きを規制するモノで、上側が加速時に、下側が減速時に効くのだ。
車内は、まさに“戦うための空間”といった様相。ケースむき出しのミッションがド迫力で、万がいちプロペラシャフトが脱落してもフロアを貫通しないよう、トンネル部にはスチールパイプ製の頑丈なガードも設けられる。さらに、写真ではイマイチわかりにくいかもしれないけど、ペダルはアクセルだけ!! 減速はパラシュートのみという作りがすごい…。
とまぁ、見ためも中身もボンネビルスペシャルであることを主張しまくってたけど、トラブル続きで結局1本もまともに走れず。リザルトには計測結果が掲載されてないほどだったりして…。これでクラスレコードの更新でもしてくれてたら最高だったのに!
E/BFCCクラス
Stringfellow & Kirk
CHEVROLET CAVARIER
MAX SPEED:———
ドライバー:JimKirk
●PHOTO:小林克好(Katsuyoshi KOBAYASHI)/TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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