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「命がけのアタック、FC3Sが宙を舞った・・・」フルチューンFC3Sで世界最速に挑んだ男の物語/後編【DANDY×FC3S最速王座・奪取計画at2010】

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「命がけのアタック、FC3Sが宙を舞った・・・」フルチューンFC3Sで世界最速に挑んだ男の物語/後編【DANDY×FC3S最速王座・奪取計画at2010】

まさかの大クラッシュ! 衝撃の結末を迎える…

2年計画でレーシングビートの記録更新を狙う!

「命がけのアタック、FC3Sが宙を舞った・・・」フルチューンFC3Sで世界最速に挑んだ男の物語/後編【DANDY×FC3S最速王座・奪取計画at2010】

Day.5(8/18 Wed.)

予想以上に悪い路面状態、エンジン回転数も頭打ちに

今回初めて走るロングコースで田中サンが思い描いたシナリオ。それは、レーシングビートの記録238.442(383.653km/h)を上回りつつ、249MPH(400.641km/h)以下に留めて、ライセンスAとレコードランの権利を一度で手にしてしまおうというモノ。これまでのアタックから、「確実に400km/hを狙える」と確信を持つレイも、その作戦に同意した。

また、9000rpmシフトでは3→4速でパワーバンドを外してしまうため、さらに上まで引っぱれるよう、ここで初めてCPセッティングを変更。9200rpmのレブリミットが9500rpmに引き上げられた。

前日までにレイが獲得したライセンス。上から順にA~Eで、クラスごとに色分けされている。ちなみに、Aの上にAA(250~299MPH)、さらにアンリミテッド(300MPH以上)というライセンスも存在する。

一方、考えてることや気付いたことをメモに取り、いつでも目にできるようタバコとともに持ち歩く田中サン。クラスレコードの更新に王手をかけるには4速で引っぱり切るか、5速でキープか…悩みどころだ。

田中さんいわく、「増速ギヤの5速だとミッションにかかる負担が大きくなるから、できれば直結ギヤの4速で最高速を狙いたいところ。中古の純正ミッションだから耐久性が未知数だし、計算上は9000rpmで390km/hに達するからね。ただ、エンジンの負荷を考えると4速9000rpmまで引っぱって、5速に入れたら加速せずにキープ…ってのもアリかな」。

ところが、アタック後、4速7300rpmでサチュレートして、ブースト圧も最大1.2キロしかかからなかったことが発覚。トップスピードは2.4.205MPH(328.566km/h)に留まった。

レイが言う。「オーバードライブでの頭打ちみたいな状態になってエンジンが吹けてくれなかったんだ。それと路面状態が悪すぎ。なんとか持ちこたえたけど、2回スピンしかかったからね。これだと200MPHから上を目指すのはキビシイかも…」と。

そこで、今回はロングコースを走ったけど、次は路面状態のチェックを含めてコンボ(ショート&ロング併用)コースでアタックすることに。

さらに、A/F値やサクション系に問題がないことを確認した上でVVCを半回転ひねり、最大ブースト圧が1.6キロ+αになるよう調整。焼け具合がよかったプラグも、念のため新品に交換された。

コースはピット側からロング、コンボ、ショートの計3本。一番手前のロングコースなら問題ないけど、その奥のコンボコースになると、走るマシンの車種を肉眼でギリギリ判別できるかどうかのサイズにしか映らない。

ふと、風が強くなってきたことに気付いた。スタートラインの方向に目をやると、どんよりとした灰色の雲が空を覆い、ほどなくしてポツポツと雨も落ちてきた。なにかイヤな雰囲気…。

遠くの方で、細い線のように見える塩煙を巻き上げながら走ってくる1台のマシン。FC3Sか? いや、違うか?? グングンとスピードを伸ばし、ピットのほぼ真正面に差しかかるあたりで、不意に怪しい動きを見せ始めた。これはスピンモードに突入したな…と思った次の瞬間から目の前で繰り広げられたのは、まったく想像してなかった戦慄の光景だ。

まるで車重がないかのようにフワッとボディが浮き、数秒にわたって滑空。ルーフから激しく路面に叩き付けられ、走行中とは明らかに違う不規則な塩煙を盛大に上げながら滑走していく。その運動エネルギーが衰えるまで数100mは要したはず。腹下をさらけ出したまま、ようやく動きが止まった。

直後、撮影画像をチェックしたカメラマン小林のひとことに耳を疑った。

「ヤバイ、FC3Sが飛んだ!」。

エアロパーツを装着できないGTクラスのマシンはダウンフォースが小さいから、さすがに“飛ぶこと”はないだろう…今まで常識だと思ってたことが、今回のクラッシュで見事に覆された。写真から判断するしかないけど、FC3Sは5mくらいの高さまで舞い上がってたはずだ。

あまりにも衝撃的なクラッシュだけに、想定したのは“最悪の事態”だ。レイは無事なのか? マシンのダメージは? いても立ってもいられなくなって、カメラマンとレンタカーに乗り込み、ロングコース横断もおかまいなしに最短ルートで現場に向かう。

次第に姿が露わになってくるFC3S。ルーフのつぶれ方がヒドイ。レンタカーを降りて駆け寄ると、大きく割れたフロントウインドウ越しに、運転席に座ったままピクリとも動かないレイの姿が目に飛びこんできた。

絶対にあってはならないこと。それに対する心の準備ができないまま、オフシャルが衝撃で開かなくなったドアをバールでこじ開け、力づくでレイを車外へと引っぱり出すまでの救出作業を呆然と見守る。

座らされて、ヘルメットを脱がされるレイ。オフシャルに囲まれながら二言三言、会話してるようすを目にした途端、それまでの緊張感が一気にほどけてこの上ない安堵感に包まれた。よかった…ホントにヨカッタ。

一方、FC3Sは全損級のダメージを受けてることが明らか。オフシャルいわく、「2マイル地点で217MPH(349.153km/h)出てた」とのことで、そこからまだまだ加速してる最中に思わぬ形で最期を迎えてしまったのだ。

台車がついた専用クレーンに吊られて、コース上から速やかに運び出されるFC3S。クレーンの右側に1台付き添ってるのは、クラッシュしたマシンがピットから丸見えにならないよう、目隠しをしているに違いない。

大きく倒れこんだ左側Aピラーやフロントフェンダーの変形具合が、路面に叩き付けられた瞬間の衝撃の強さを物語る。ボンネット&ヘッドライトの塗装がまだらにはげてるのは、逆さまになった状態で滑走してる時に路面とこすれた跡だ。

センター部が盛り上がって“へ”の字に変形したフロントタワーバー。よく見ると、左右ストラットタワーの高さもズレている。衝撃が、想像もつかないような伝わり方をしたということだ。

塩にまみれた室内。着地の瞬間、運転席側のロールケージには数トンの力が加わったと推測されるけど、しっかりとキャビンを守っていることに驚くしかない。

それとシート位置。もし、車検時に内側へのオフセットを指示されてなかったら、ヘルメットとロールケージが激しく激突してたはず。安全性に対する主催者の真剣な姿勢が、そこで初めて分かった。

燃料ラインは大きくひしゃげただけでなく、根もとからポッキリ折れてしまった箇所も。燃料漏れによる車両火災に至らなかったのが幸いだ。

Cピラーに深いシワが寄り、リヤゲートとボディパネルには大きなすき間ができてしまうほどモノコック自体が変形。リヤサスとマフラーも左方向にズレてしまっている。

ところどころスリキズのような跡が見られるヘルメット。HANSとの間で相当な力が加わったようで、カーボン製にも関わらず側面下部には幅10cmほどのクラックが入っていた。

精密検査のため、200キロ離れたソルトレイクシティの病院に入院したレイ。首に巻かれたコルセットが痛々しいけど、大きなケガはなく意識も問題なし。鮮明に覚えているクラッシュの一部始終を田中サンに話していた。

これでダンディFC3Sのボンネビル挑戦は終わった。悔しいけど、レーシングビートが持つクラスレコードの更新も、叶わぬ夢となった。

しかし、実はクラッシュの直前に“強烈な輝き”を放っていたことが明らかになる。証言者は他もでない、FC3Sのステアリングを握り、アクセルペダルを踏み続けたレイだ。

■ATTACK for ライセンスA

計測地点 通過速度

2mile 165.623MPH(266.487km/h)

2.25mile 183.387MPH(295.069km/h)

3mile 190.232MPH(306.083km/h)

4mile 204.205MPH(328.566km/h)

5mile 192.328MPH(309.946km/h)

※取得の条件:200~249MPH(321.800~400.641km/h)

国内最速ロータリーマシン、ソルトフラッツに散る…

カメラマンが捉えた壮絶クラッシュの一部始終

テールが流れた瞬間。微妙にカウンターステアがあたり、リヤタイヤの巻き上げる塩煙が横方向にも拡がっている。

テールのスライド量が徐々に大きくなる。すでにドライバーのコントロールが効かない状態だ。

ほぼ横を向き、右側の前後輪が浮き始める。ボディのヨジレか、あるいは下方向からの風圧によって、純正ボンネットが大きく歪んでいる。

リヤから浮いて完全に宙を舞い、左回転するように上下が逆さになる。

そのまま左Aピラーから路面に叩き付けられ、固定されていたサンルーフのパネルが後方に吹き飛ぶ。

滑走しながら一度大きく半時計回りに回転するが、フロントが進行方向に向き直る。着地した時の衝撃によるものか、ハザードランプが点いているように見える。

停止後まもなくオフィシャルが到着。マシンに駆け寄り、ドライバーの安否を確認する。

●PHOTO:小林克好(Katsuyoshi KOBAYASHI)/TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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