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【来春から東京都でも義務化!? 全国急増中!】「自転車保険」の中身とは?

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【来春から東京都でも義務化!? 全国急増中!】「自転車保険」の中身とは?

 毎年、約6分8秒に1回(2018年)発生しているという自転車事故。自転車事故を起こして、当事者となり、相手をケガさせてしまったり、最悪の場合は死亡させてしまった場合には、刑事上の責任とは別に、民事上の損害賠償責任を負わなければいけない。その金額は数千万円から約1億円にも上ることもある。

 そうした万が一の高額な損害賠償金の支払いに備えるのが、「自転車保険」の個人賠償責任補償だ。自動車でいえば任意保険にあたるこの自転車保険、今、急速に全国の自治体で自転車保険の義務化が始まっている。

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 兵庫県が2015年10月に全国の自治体としてはじめて自転車保険を義務化。2019年10月1日からは東京都豊島区や神奈川県が義務化し、さらに東京都は2020年4月の導入を目指している。

 さて、その自転車保険の内容はどのようなものか? いくらでどのくらい補償されるかなど、自転車保険の今を高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸(自動車テクノロジーライター)
写真/Adobe Stock

(画像ギャラリー)東京都の自転車保険義務化の条例改正案、神奈川県の自転車保険義務化ポスター、TSマーク付帯保険の補償内容詳細

自転車といえども保険に入るべき

たかが自転車と軽んじることなかれ。いざという時のことを考えて自転車保険に入るべきだ

 自転車保険と聞いて、自転車に乗っている人が転倒などした際に治療費などを補償する保険なのか、と思う人もいるだろう。それは医療保険や傷害保険の適用範囲だ。

 もちろん自転車保険にも、自分の怪我による治療費などをカバーしてくれる傷害保険まで含まれているものもあるが、自治体が条例で加入義務化を進めているのは、自転車に乗車中の人が他人にケガをさせた場合の治療費や慰謝料などをカバーする、損害賠償保険だ。

 というのも自転車と歩行者の接触事故、自転車同士の接触事故などで相手を重症や死亡させてしまった場合、裁判で高額な賠償金を支払う判決が出たケースもある。

 そんな状況になってしまったら加害者家族、被害者家族のどちらも不幸になってしまうことを避けるため、せめて保険金が支払われるように備えておく、というのが加入義務化の目的だ。

 「自転車保険」と聞くと自転車専用の新しい保険商品のように聞こえるが、その内容は30年前からある個人賠償責任保険と同じものなのだ。個人賠償保険とは、他人にケガをさせてしまったり、店舗などで高額な商品を破損させてしまった場合に賠償費用を保険金として支払ってくれるもの。

 しかも1億~3億と高額な賠償にも対応できるほど、保険金の上限額は高くなっていて、それでいながら保険料は安い。

 その理由としては自動車事故に比べ損害の発生する確率が低く、一般的には損害額も低めということもあるのだろう。

毎月100円台、年間数千円で、3億円の賠償金までカバー

 自転車保険、という名前での保険商品が出回るようになったのは、ここ10年前後でのこと。件の自転車ブームやロードバイクブームなどがあり、自転車による交通事故に注目が集まったこと、高額な賠償金の判例が出たことがきっかけだったと思われる。

 自転車保険は、自転車での事故のみ賠償するものであれば、1カ月103円、年間1300円程度という低額から存在する。

自転車保険のネット申し込みランキング1位のau損保の場合。本人が加入する例を示したが、家族全員のタイプはブロンズが年間8090円、シルバーが1万4860円、ゴールドが2万2250円となる。詳細は保険会社にお問い合わせください

全日本交通安全協会・損保ジャパン日本興亜の自転車保険の一例。プランAの賠償のみプランの場合、年額1230(月額102.3円)だが、ケガの補償は本人、家族ともに補償されない

 自転車運転者本人のケガまでカバーする個人賠償保険でも、保険料は年間3000円前後、家族までカバーするタイプでも年間4500円前後からあるので、それを選んでもいい。  

 これには弁護士特約などの示談交渉サービスまで含まれていることも多く、生活トラブルにも利用できるケースもあるので、入っておくと安心だ。

 自治体などの条例で自転車保険の加入を義務化するのも、市民にとって負担が少なく、万一の時の備えとして充分な内容であるからだ。

 自転車屋さんで有料の安全点検を受けるとTSマークというシールが貼られ、それにも賠償責任保険が付いている。

 TSマーク(自転車向け保険)は自転車安全整備士が点検確認した普通自転車に貼付されるもので、このマークには傷害保険と賠償責任保険、被害者見舞金(赤色TSマークのみ)が付帯している。

 TSマークには、青色マーク(第一種)と赤色マーク(第二種)があり、賠償内容が違う。 死亡もしくは重度後遺障害(1~7級) の補償は青色TSマークが1000万円、赤色TSマークが1億円。

 傷害補償の死亡もしくは重度後遺障害(1~4級) 補償は青色TSマークが30万円、赤色TSマークは100万円。

 入院補償(15日以上)は青色TSマークが1万円、赤色TSマークが10万円となっている。肝心の保険料の目安は店の整備代金にもよるが青色TSマークが1500円、赤色TSマークが2500円ほどだ。

自転車屋さんで自転車を点検した際に料金を支払えば付帯保険に入ることできる。その際、貼られるがこのTSマーク。このマークには傷害保険と賠償責任保険、被害者見舞金(赤色TSマークのみ)が付いている(付帯保険)

 ただし、いざ保険金の支払を受ける時に手続きが面倒だったり、保険金が支払われる条件が狭かったりする可能性もあるので、単に保険料の安さだけで選ばず、保険の中身を見比べて選ぶことが大事だ。

 もっともクルマを持っていて自動車保険に加入しているドライバーなら、その自動車保険の特約として個人賠償保険を付けられる損保会社も多い。

 それなら同居の家族まで補償されて3000円前後で加入できるので、特約で加入することをお勧めする。もちろん弁護士特約などの示談交渉サービスの有無も確認して、選んでおくべきだ。

自転車事故の損害賠償、子供が当事者でも賠償金を支払う

自転車運転者が子供であっても賠償責任が発生する。未成年者の場合は監督者である親が支払うことになる

 自転車事故がその他の交通事故と異なるのは、子供であっても加害者になる可能性があるということだ。子供が自転車を運転していて事故を起こした場合でも、やはり損害賠償金を支払わなければならないのか? 

 自転車事故を起こしたのが、自転車を運転していた子供でも、大人が運転していた状況と変わらないので、過失の有無や過失割合の程度により、対人、対物ともに損害賠償責任が発生する。

 とはいっても子供は未成年だから監督責任は保護者である親が負うことになるのは当然だ。実際、過去の判例においても、両親に賠償命令が下されている。

加入は義務でも未加入の罰則はナシ。それで効果があるのか?

 ただし、加入は義務とはいっても、自転車保険に未加入でも罰則はない。というのも自転車保険は、クルマに例えると自動車保険(任意保険)という位置づけになり、自動車保険は未加入でも罰則がない以上、運転免許が必要ない自転車により厳しい法制度を導入する訳にはいかないのだ。

 それにクルマやバイクと違い自転車には登録制度がないため(防犯登録はあくまで盗難時の照会用)、加入を把握するのが難しいこともある。それでも県条例で義務化することは、それなりに意味があることなのである。

 実はこの自転車保険の加入義務化は、すでにいくつかの自治体で実施されている。最初に始めたのは兵庫県で、2015年10月から施行されている。

■自転車保険の加入が義務化されている自治体
都道府県では埼玉県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、 鹿児島県。政令市では仙台市、さいたま市、相模原市、名古屋市、京都市、堺市
■自転車保険の加入を努力義務とする自治体
北海道、群馬県、千葉県、東京都、静岡県静岡市、鳥取県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県
(2019年4月現在)※「努力義務」とは、自転車保険への加入に努める義務があるというもので、加入を義務づけているわけではない

 埼玉県では、すでに自転車保険の加入を義務化して約1年半が経過しているが、一定の手応えを感じているようだ。

 「自転車保険の加入率は、県政サポーターアンケートという意識調査の中に項目を組み込んで確認しています。それによれば、施行前の平成28年度は50%を切る加入率でしたが、平成30年度には64.3%にまで上昇し、今年31年度はまだ公表前ですが7割弱にまで高まっていることが確認できています」(埼玉県 県民生活部 防犯・交通安全課 総務・交通安全担当)。

 罰則がなくても、加入を条例で義務化するだけで加入率が高まるのは、やはり義務という言葉が与える心理的な影響力と、日本人の真面目な気質が関係していると思われる。

 「それに自転車保険の加入を義務化することで、県民からのお問い合わせが増えて、そこで自転車事故の判例などを挙げて説明することで保険への加入の必要性だけでなく、自転車の運転そのものにも気を付けるという声が返ってきています。これも良い傾向ではないでしょうか」(同交通安全担当)。

 2019年10月1日から義務化する神奈川県でも毎年県民ニーズ調査という意識調査アンケートを数千人対象に行なっており、今後はそのアンケートの項目に自転車保険の加入の有無を入れる方針だ。

 また、損害保険会社が全国の自転車ユーザーに独自調査した結果によれば、自転車保険の加入を義務化している自治体は、義務化されていない自治体と比べ、やはり加入率が高い傾向にあるそうだ。

 自動車メーカーの安全対策の努力もあって交通事故自体は全体として減っており、自転車の事故もそれに釣られるように減少傾向にある(国民の人口が減少傾向にあり、高齢化が進んでいることを考えれば、自然にそうなる)。

 しかし高齢者の比率が高くなっていることから、自転車での事故でも重症化する傾向もあり、以前に比べ自転車事故の深刻化は高まっているともいえるのだ。

 東京都内では豊島区がこの10月1日から自転車保険の加入を義務化しており、東京都でも2020年4月からの加入義務化を目指しているらしい。この自転車保険の義務化という動きは全国に広がっているのだ。

 これからは自転車に乗るユーザーは、自転車保険は必須。そしてもし交通事故を起こしてしまったら、後でトラブルにならないよう、警察を呼んで事故の記録を取ってもらうこと。

 事故証明書が発行されなければ、保険金の支払を受けることが難しくなり、折角入っている自転車保険も無駄になってしまう可能性もあるからだ。

(画像ギャラリー)東京都の自転車保険義務化の条例改正案、神奈川県の自転車保険義務化ポスター、TSマーク付帯保険の補償内容詳細

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