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ポルシェの歴史を変える1台、鮮やかに登場! 新型タイカンの斬新な発表会とは?

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ポルシェの歴史を変える1台、鮮やかに登場! 新型タイカンの斬新な発表会とは?

ビデオスクリーンを兼ねたステージ後方の巨大な壁がヒラリと開くと、亜熱帯の海から生暖かい風が流れ込んできた。

中国福州市平潭島の「長江澳」という入江に沿って作られた仮設の建物が、ポルシェ初の電動スポーツカー「タイカン」がワールドプレミアを飾る舞台だった。

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件の壁が開くと、その外側に巨大な風力発電機がいくつも並んでいる様子が見えた。私たちが建物に入るときはすでに辺りが真っ暗でその存在に気づかなかったが、このドラマチックな光景を演出するため、風力発電機のひとつひとつが赤いスポットライトで照らし出されている。

あまり知られていないが、中国は風力発電の累計設置容量でアメリカやドイツをしのぐ世界第1位の“風力発電大国”。それを象徴する地域のひとつが、長江澳なのだ。

長江澳の会場周辺には、多くの風力発電機がある。もっとも、ポルシェは中国だけでタイカンのワールドプレミアを行なったわけではない。

ポルシェのお膝元であるドイツの首都ベルリン、そしてアメリカとの国境に近いカナダのトロントでもワールドプレミアを開いており、ベルリンでは巨大な太陽光発電機群が、そしてトロントでは水力発電にも活用されるナイアガラの滝が、お披露目されたタイカンの背景として広がっていた。

つまり、ポルシェは世界3カ所で、しかも同時刻に、タイカンの発表会を催したのである。

ベルリンの発表会場周辺には、多くの太陽光発電機があった。カナダの発表会場は、ナイアガラの滝のすぐ近くだった。「福州市、ベルリン、トロントの3ヵ所をワールドプレミアの場所に選んだのは、中国、ヨーロッパ、そして北米がEVの主要なマーケットであることが1番目の理由です」とは、ポルシェで研究開発を担当するミハエル・シュタイナー取締役の説明である。

「2番目の理由は、EVは自然エネルギーで発電した電力を使うことで初めて価値が生まれる点にあります。福州は風力発電、ベルリンは太陽光発電、トロントは水力発電で有名なため、この3都市を選びました」

タイカンは内燃機関を搭載しないピュアEV。ご存じのとおり走行中のEVはCO2を排出しない。しかし、EVに供給される電力は、発電の段階でCO2を発生する可能性がある。たとえば、石炭を燃料とする火力発電では1kWhを発電するのにおよそ1kgのCO2を生み出す。おなじ火力発電でも燃料を石油にすれば約0.7kg、最新のLNGコンバインド方式であれば約0.5kgまで削減できる。

ちなみに、タイカンの電費は最高で0.23kWh/kmなので、石炭火力発電の電力を使った場合、そのCO2排出量は230g/kmとなる。これではEUのCAFE規制(CO2の平均排出量を自動車メーカーごとに定めたもので、現時点では1台あたり130g/km。2021年からは95g/km)をクリアできない。

ところが太陽光発電(0.038kg/kWh)、風力発電(0.026kg/kWh)、水力発電(0.011kg/kWh)ではいずれも10g/kmに収まり、将来的な規制に対しても余裕がある。シュタイナー取締役が主張したかったのは、このことだ(発電方式ごとのCO2排出量は電気事業連合会発表の資料に依った)。

液晶パネルがずらりと並んだインテリア。タイカンに関する前回のリポートで、私はタイカンの特徴が「徹頭徹尾、ポルシェとして作られている点にある」と、指摘した。そのことはワールドプレミアの取材であらためて浮き彫りになったが、では、そもそも“タイカン”の名前はなにを意味しているのだろうか? プロダクト&コンセプト担当バイスプレジデントのゲルノート・ドエルナー氏に訊ねたところ、次のような回答が返ってきた。

「タイカンはアラビア語など東洋の言語で『若い野生の馬』を意味します。ポルシェのロゴには“跳ね馬”が描かれていますが、あれがまさにタイカンです」

タイカンは、パワーが異なるふたつの仕様を設定。ハイパワー・バージョンは「ターボ」の名が付く。もちろん、ピュアEVだからターボチャージャーは搭載しない。ハイパワーを象徴する単語として、使われる。これを聞いて私は驚いた。ポルシェのロゴこそはブランドを象徴するシンボル。そこに登場する“馬”に由来する名前を与えたとなれば、タイカンは次世代のポルシェそのものを意味するといっても過言ではないだろう。

もちろん、ポルシェは今後も純エンジン・モデルやプラグインハイブリッド・モデルを作り続けていく。タイカンが発表されたからといって、1日にしてすべてがEVに切り替わるわけではないのだ。それにしても、ポルシェというブランドが電動化に向けて歩み始めた瞬間に立ち会えたのは、自動車ライターである自分にとって貴重な経験になったと確信している。

文・大谷達也

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