「週末に家族と出かけるためのSUVが欲しい」。そうした声を受けてロールス・ロイス初のSUV「カリナン」が誕生したと聞いて、私は自分の耳を疑った。しかも、そんなSUVを欲しがっているのが若きロールス・ロイスのオーナーと聞いて2度、度肝を抜かれた。
「私たちが勝手にイメージしているロールス・ロイス オーナーの平均像と現実が、実は大きく食い違っているのではないか?」
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2018年、アメリカ・ワイオミング州ジャクソンホールで開かれたカリナンの国際試乗会に参加して、私の心の奥底にそんな疑問が芽生えた。
謎を解く機会は意外と早くきた。カリナン試乗会から1年と経たない2019年6月のある日、ドイツ・ミュンヘンで開かれたBMWのブランド・イベントにおいてロールス・ロイスのトルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOに単独インタビューできることになったのだ。
2010年からロールス・ロイス モーター カーズのCEOのトルステン・ミュラー-エトヴェシュ。新型SUV「カリナン」とともに。「2018年は115年におよぶロールス・ロイスの歴史において記録的な1年になりました。新型ファントムのセールスが世界中で好調なためです。しかも年末にはカリナンも販売開始され、私たちのビジネスはさらに加速しようとしています」
そう切り出したミュラー-エトヴェシュCEOに、「若い顧客がロールス・ロイスを購入しているという話は本当か?」と、訊ねてみた。
「とてもいいポイントを指摘されましたね」。ミュラー-エトヴェシュCEOは満足げな笑みを浮かべながらこう続けた。「10年前、ロールス・ロイスの顧客の平均年齢は56歳でした。ところが、2018年にはこれが43歳まで下がり、BMWでもっとも平均年齢が若いブランドとなりました。そうです、私たちのお客様は平均的にいってミニよりも若いのです」。
カリナンはロールス・ロイス初のSUV。カリナンのドアは、観音開きタイプ。なぜ、彼らは若くしてロールス・ロイスを購入できるのか? 「現代社会ではITや投資などで経済的な成功を収めることが可能です。つまり、経済的な豊かさと年齢は必ずしも一致しなくなったのです。実際、世の中には若い方々のためのビジネスがたくさん存在します」
もっとも、それは裕福な若者が増えたというだけの話で、だからといって若者がロールス・ロイスを買いたがるとは限らない。なぜ、彼らは先を争うようにしてイギリスが生んだ「走る至宝」に手を伸ばすのか?
2018年1月より日本市場で販売されている現行ファントム。価格は5460万円から。HARNIMANリアシートは独立した2座タイプも選べる。HARNIMAN「それは、私たちが若いお客様に喜ばれる製品を投入しているからです」 と、ミュラー-エトヴェシュCEOは満足そうな笑顔を浮かべたまま、そう述べた。
「およそ10年前にゴーストを投入しました。フラッグシップのファントムと異なり、自分でドライブするためのサルーンがゴーストです。続いて2ドア・クーペのレイスを投入しましたが、これも明らかにドライバーズ・カーです。そして魅力的なコンバーティブルのドーンを送り出しました。もちろん、これもドライバーズカーです」
4ドアサルーンの「ゴースト」。ファントムよりひとまわり小さい。続けてミュラー-エトヴェシュCEOは、「さらに私たちは“ブラックバッジ”を発表しました。若いお客様にフォーカスした、ダイナミックなデザインのシリーズです。これはロールス・ロイスの暗い側面、謎めいた側面を表現しています。そしてカリナンは若いファミリーに向けたSUVで、普段遣いにしたくなるクルマです。これも新たな市場を開拓することになりました」と、述べた。
ボディやアルミホイールなどがブラックになった“ブラックバッジ”シリーズ。なぜ、ロールス・ロイスは若者向けのプロダクトを次々と発売することになったのか?
「最初に戦略がありました」と、ミュラー-エトヴェシュCEO。「10年前に現職に着任したとき、“将来の社会構成”がどのようになるかを徹底的に調査しました。その結果、ロールス・ロイスを購入するお客様の層がどんどん若返ることが明らかになったのです。ショーファーだけにステアリングを委ねる時代は間もなく終わり、顧客は自分で運転を楽しむ時代がやってくると予想されたのです。そこで私たちはゴースト、レイス、ドーン、カリナンなどを製品化しました」
さらにミュラー-エトヴェシュCEOは、「プロダクトだけではありません。どのようにブランドを見せるか、ブランドをどう位置づけるか、それらをどのようにマーケットに伝えていくか、という点も、こうした戦略にあわせて改革していきました。そうでなければ若いお客様の関心は惹きつけられなかったでしょう」
2ドア・4シーターの「レイス」。旧来のオーナーも歓迎する“若返り”老舗ブランドが若返りを図ろうとするとき、決まって起きるのが旧来からの顧客のブランド離れである。この点はどうだったのか?
「10年前、15年前からロールス・ロイスをお買い求めいただいているロイヤル・カスタマーも、私たちの変化を喜んでくださっています。たとえば、ショーファーが操るファントムEWB(エクステンデッド・ホイールベースの略。つまりロングホイールベース版)の、リアシートに乗るのを好まれるコンサバティブなお客様が、ブラックシリーズの登場を歓迎してくださっているのです」
笑顔でインタビューに応じるミュラー-エトヴェシュCEO。古くからの顧客が、若返りを図ろうとするロールス・ロイスに声援を送る理由は実に明快だった。インタビューに同席したリチャード・カーター広報部長が説明する。
「年齢を重ねて経済的にも成功されているお客様はみなさん、とても聡明でいらっしゃいます。しかも、彼らはご自分で“ブランド”を保有しているケースも少なくありません。つまり、そういった方々も日ごろブランドの若返りで頭を悩ませているのです。ですから、私たちの取り組みを見て『君たちがやろうとしていることはよくわかるよ!』『是非、それを続けたほうがいい!』と応援してくださるのです」
4シーター・オープンの「ドーン」。あざやかなレッドも選べる。スポーツなどを趣味にするアクティブなユーザーに、ぜひ、カリナンを勧めたいという。次世代に向けた改革という意味では電動化も避けられないところだろう。すでにロールス・ロイスは将来的なピュアEVの投入を明言しているが、成功の見込みは立っているのか? ミュラー-エトヴェシュCEOに訊ねた。
「私たちは8年ほど前にファントム・エクスペリメンタル・エレクトリック(102EX)というEVを試作し、世界中で100名ほどのお客様に試していただきました。その結果、『EVはロールス・ロイスというブランドに完璧にマッチする』という多くの声をいただきました。いっぽうで、航続距離(約200km)と充電時間(約8時間)に関してはご納得いただけませんでしたが、これらは次の10年間に実現するテクノロジーの進化で克服できるはずです。きっと、皆さまのご期待に応えられるEVが完成することでしょう」
ロールス・ロイスの成功はいましばらく続きそうだ。
文・大谷達也
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