■歴代最強!? MINIのハイパフォーマンスモデル「JCW」はどんなクルマ?
「クラシックミニ」と呼ばれるBMC時代のMiniに対して、BMWが商標を取得して開発されたのが「ニューMINI(BMW・MINI)です。
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2001年に初代がデビューした時には賛否がありましたが、BMWグループのプレミアムスモールカーとして独自のキャラクターや走りなどが高く評価され、現在ではMINIといえばこちらを指す人のほうが多いと思います。
数々の派生モデルも生まれ“MINIワールド”を形成していますが、その1台がステーションワゴンの「クラブマン」です。
3代目となる現行モデルは2016年に登場。3/5ドアがBセグメントの「プレミアムスモールコンパクトセグメント」に属するのに対し、クラブマンはひと回り大きいCセグメントの「プレミアムコンパクトセグメント」に属するモデルです。
MINI史上最大のボディですが、家庭環境の変化などでMINIを卒業しなければならないユーザーを食い止める、という役割も担っているそうです。
そんなクラブマンが大幅改良を受けましたが、今回ひと足お先にドイツ・フランクフルト近郊で試乗をおこなってきました。試乗したのは高性能モデルのJCW(ジョン・クーパー・ワークス)です。
JCWは「レーシングカーにもっとも近いMINI」、「日常的なシーンでも乗れるエキサイティングなマシン」をコンセプトに、ハイパフォーマンスなスペックが与えられています。
外観はリング型のデイライトが採用されたヘッドライト、クーリング性能向上のために開口部が拡大されたバンパー、ハニカムグリルによりアグレッシブさがプラスされています。
テールライトも新デザインとなり、ユニオンジャックをモチーフにしたLED式に変更されていますが、どれもわかる人にはわかる、といった小変更レベルの改良です。
しかし、今回の改良の注目は見える部分ではなく、中身にあります。2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンは、大型ターボ、ピストン、コンロッド、吸排気系と大きく手が入っており、従来モデルの231馬力/350Nmから、306馬力/450Nmと大きくパフォーマンスを引き上げています。
ちなみに、これはMINIブランド60年の歴史のなかで、ナンバー付きロードカー史上最強のスペックです。トランスミッションは同じ8速ATながらも、新世代にバージョンアップされています。
また、このパワートレインは現在開発中のMINI3ドアJCWのサーキットスペック「JCW-GP」と同じユニットですが、駆動方式はFFではなくAWDの「ALL」を採用しています。
パワートレインのパフォーマンスアップに合わせて、シャシ側にも大きく手が入っています。高出力化に合わせて最適化されたスポーツサスペンション(可変ダンパーはオプション設定)、スポーツブレーキに加えて、フロントにMINI初採用となるメカニカルLSDが装着されています。
タイヤはMINIお得意のランフラットタイヤを採用せず、エンジニアいわく「このクルマに最適なスペック」という225/40ZR18サイズのミシュラン・パイロット・スーパースポーツを履いています。
■従来のMINIに懐の深さがプラス! 速く快適に走ることが可能なチューニング
エンジンはとにかく「速い」のひと言に尽きます。高出力ユニットですが、最新エンジンだけあり実用域もフレキシブルな特性を備えています。回すほどに本領を発揮する性格です。
車両重量は1.5トン超えと意外と重量級ですが、それを感じさせない絶対的な力強さはもちろん、レスポンスの鋭さやエンジンサウンドなど、従来モデルが“普通のエンジン”に感じてしまうほどの差を感じました。
ちなみにアウトバーンでは200km/h巡航も楽々で、今回の試乗では250km/h(リミッター作動)という最高速度に迫る240km/hオーバーを記録しました。
8速ATは、ノーマルモードではスムーズさ重視ですが、ドライブモード「スポーツ」を選択するとシフトスピードとダイレクト感を重視した制御で、これなら「DCTいらず」だと感じました。
ちなみに減速中にシフトダウン側のパドルを引き続けると、車速に応じた最適なギアまで自動でシフトダウンが可能な機能も用意されています。これはスポーツドライビング時に非常に嬉しいアイテムです。
ボディサイズ/車両重量を感じさせないクイックで軽快でハンドリングは健在ですが、LSD効果も相まってワンディングでは従来モデルよりもグイグイとノーズをイン側に向けてくれます。
回頭性の高さと絶大なリアの安心感はもちろん、3ドアと比べると薄皮一枚挟んだかのような心地よい“タメ”があるのでコントロール性も高く、100km/hで流れる白線のないワインディングでも、安心して走らせることが可能でした。
一方、高速道路ではセンター付近に心地よいダルさを持ったステアリング、重さを活かしたシットリとした足の動き、硬めながらもフラット感が高く、よほどの凹凸でなければアタリも優しい快適性など、グランドツーリング性能はオプションのアダプティブダンパーを選択しなくても高いと感じました。
従来モデルはドライバーファーストな乗り味、つまり確信犯的なハードなセットアップでしたが、新型は優しさがプラスされています。これは乗り心地のために甘口になったのではなく、懐が深くなった結果だと思います。
このように、ワインディングでは「スポーツカー」、高速道路では「グランツーリスモ」の2面性の走り、そしてファミリーカーとして使える居住性/ラゲッジスペースを兼ね備えた新型のMINIクラブマンJCWは、筆者(山本シンヤ)はMINIシリーズのなかでもっとも「マルチパフォーマンス」を備えた1台だと思っています。
日本への導入が非常に楽しみです。
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