やりたいと思ったことが実現することになって、かえってビビる。そんな風に思えることこそ、本コーナーにおける“挑戦”にふさわしい。というわけで第1回は国産車初の本格グランドツーリングカーであり、今となっては国産ヴィンテージ界の最高峰に君臨するトヨタ2000GTを借り受けて、本当にGTしてみようという挑戦だ。GT Japanである。
群馬県太田市にある“オートロマン”。その昔、国産車ディーラーのあった場所をとある有名コレクターが買い取ってコレクションホールとしていた。そのコレクターが亡くなり、場所ごと継いだのがモロイさんだった。ついでにクルマ好きには懐かしいカーディーラーの屋号「オートロマン」も正式に引き継いで、「クルマを愛する人たちに集まってもらえるような場所」(モロイさん)として再びオープンしたのだ。
ギャラリー:トヨタ2000GTで1000kmのドライブに出かける VOL.2──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第1回」トヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GTスタート地点である群馬県館林ICから一路京都へ。距離にして約550kmほどの道のりを走ることに。借りたクルマでのロングドライブは神経を使うが、幸運なことに走り出してすぐに2000GTとの相性の良さを確認。幸先の良いスタートが切れた。トヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GTトヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GT高速道路のP.A.やガソリンスタンドといった見慣れた風景も、2000GTがあるだけでまったく違った雰囲気に。もちろん道行く人からの視線もすごい。給油ももちろん丁寧に自分の手で。パートナーへの感謝の気持ちを忘れてはならない。給油をするまでの道中でも相変わらずクルマは絶好調である。苦労をしながらようやく目的地の京都へ。このあとのレポートは第3回に続くのでお楽しみに。オートロマンで2000GTのキーを受け取る。まるでレクサスでも託すかのように「じゃ、気をつけて行ってらっしゃい」と事も無げに仰るのでこっちも慌てて「あの、注意するべきことは?」。「ないと思いますよ。2000GTの実力を楽しんでみてください」
果たしてこんなに気軽で良いものだろうか。ドキドキとワクワクとザワザワの混じった神妙かつ奇妙な面もちで群馬ナンバーの白い2000GTに乗り込んだ。
旧車のエンジンスタートはいつだって緊張する。自分のクルマでも緊張するのに、人のクルマとなればいっそう。それに快く愛車を貸してくれたオーナーの手前、みっともないスタートもできない。というか、ここで失敗したら不安にさせるだけだ。キーを一段階捻り、燃料ポンプの作動音を聞いて、軽くガソリンを導く。慎重に、そして気持ちをこめてもう一段階キーを捻った。火がついたと感じた刹那、軽くアクセルペダルをあわせて爆発させる。無事にストレート6がまわりはじめた。
キャブレター付きエンジンが掛かった時の安堵感と言ったら! たとえ完璧に調整されていると分かっていても嬉しいものだ。肩の荷をひとつ下ろせた気分とでも言おうか。小さなシアワセ、そして笑顔。だいたいこの瞬間に、そのクルマと自分との相性も掴めてしまうもの。この2000GTとは上手くやれそうだと思った。
小さいが美しい2000GTのボディ横に立ってみれば、尋常ではない“小ささ”に驚く。写真から想像できるサイズよりふたまわりは小さいと思ってもらったほうがいい。それだけ主張のあるデザインなのだろう。現物はとにかく小さい。だから小さいドアを開けて乗り込んだ着座位置もまたとてつもなく低い。まわりのすべてを見上げる感覚になる。サニー用のステアリングホイールを改造したという細身のウッドグリップを握りしめると俄然、気分も昂揚しはじめた。同じくウッドのシフトノブを握りしめカチャカチャと動かす。
ドライビンググラブを忘れてきたことを悔やんだ。
美しいウッド製のインストゥルメントパネルには向かって右から大きなスピードメーターとタコメーターがあり、センター部分に小さな五つのメーターが配置されている。丸いハンドルに丸いメーターの並びがいかにもコクピット感を醸し出していて格好いい。これぞ正に、Behind the Wheel。
ABCペダルは全体的にかなり右寄り、つまり外側にある。アクセルとブレーキが近く、クラッチペダルがステアリングポストのほぼ真下にある。ペダル配置をいちいちうるさくいう専門家も多いけれど、筆者は全く気にならないほうだ。右ハンドルの旧いイタリア製スーパーカーなど、割とめちゃくちゃな配置のクルマに慣れているせいもあるだろう。
ステッキのようなハンドブレーキレバーを戻して、いざスタート。とりあえず笑顔でモロイさんに手を振るくらいの余裕はあった。クラッチペダルはさほど重くはないけれど、そもそも最近じゃ使うこともマレ。重くないといってもそれなりに負担にはなってしまう。ステアリングもノンパワーだが、重さが気になるのは微速域の切り始めだけで、動きさえしてしまえば何てこともない。
それより、隣に並んだ軽自動車さえ見上げてしまうほどの低さに改めて感動する。そして目の前に長く伸びたノーズの峰が美しい。
ロングノーズ&ショートデッキとはこのことをいう。
慣れてきた2000GTで目指すは京都太田から国道を通って館林へ向かった。旧車の場合、走り出して数分がまずはひとつめの正念場だ。全身全霊、とまでは言わないけれど、神経を張りつめて僅かな異変、音とか臭いとかも逃さない覚悟で慎重にドライブする。この十数分の印象で、この先長く乗っても大丈夫そうかどうかが何となく分かる。早く返したいなと思えばもうそれ以上乗らないほうが身のためクルマのためだ。モロイさんの2000GTには不安な気配などまるでなかった。
エンジンは快調に回っている。アシ回りもしっかりとしているし、妙な振動もない。旧いクルマだけあってブレーキは少々頼りないけれども、それはタイミングの問題だろう。余裕をもって踏めばいいだけのハナシである。
それにしても全般的に扱いやすいクルマだ。拍子抜けするほど、良い意味でフツウの乗用車っぽい。乗り心地も上々で、早くも乗り切る自信が湧いてきた。
入りがシブく、しばらくは飛ばしていた2速ギアがキレイに吸い込まれるようになった頃、高速道路のインター入り口に差し掛かった。東北道に入る。
ギャラリー:トヨタ2000GTで1000kmのドライブに出かける VOL.2──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第1回」トヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GTスタート地点である群馬県館林ICから一路京都へ。距離にして約550kmほどの道のりを走ることに。借りたクルマでのロングドライブは神経を使うが、幸運なことに走り出してすぐに2000GTとの相性の良さを確認。幸先の良いスタートが切れた。トヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GTトヨタ 2000GT|TOYOTA 2000GT高速道路のP.A.やガソリンスタンドといった見慣れた風景も、2000GTがあるだけでまったく違った雰囲気に。もちろん道行く人からの視線もすごい。給油ももちろん丁寧に自分の手で。パートナーへの感謝の気持ちを忘れてはならない。給油をするまでの道中でも相変わらずクルマは絶好調である。苦労をしながらようやく目的地の京都へ。このあとのレポートは第3回に続くのでお楽しみに。初めてエンジンを高回転域まで回した。4000回転からのエンジンフィールに胸がすく。5速に入れて3000回転で時速100キロメートル。思えば2000GTが登場した頃に日本の高速道路も始まったのだ。
東北道から圏央道に入って南下し東名へ。そこから新東名、伊勢湾岸、新名神を西進し京都へ至るルートを選ぶ。時間はすでに午後1時。果たして夜8時までにスタッフの待つ京都まで到着できるのだろうか……。
実は京都のとある場所にこの2000GTを飾ってのタウンミーティングを急遽開催することになっていたのだった。
この続きはまたVOL.3にてお届けしよう。
文・西川 淳 写真・柳田由人 編集・iconic
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