■いまなお人気は衰えないジムニーの歴史を紐解く!
2018年7月に20年ぶりにフルモデルチェンジをおこない、4代目モデルへと進化したズズキの本格的な四輪駆動車の機能と走破性を高めた軽四輪駆動車「ジムニー」。
快進撃止まらないスズキ「ジムニー」 都市伝説化した5ドアモデルの発売近し?
2018年度の新車販売台数では2万5663台を売り上げていますが、2019年7月現在も納車待ちが続いている人もいるといいます。そんなジムニーは、どのような歴史を経ていまにいたるのでしょうか。
軽自動車では初となる、四輪駆動の本格オフロード車として、1970年4月に初代ジムニーが発売されました。ジムニーを開発するきっかけは、ホープ自動車から「ホープスター ON型4WD」の製造権をスズキが買い取ったことが発端です。
いままでにない「軽の四輪駆動」であるON型4WDをプロトタイプとして、機能性を活かしつつも自社生産に向けて変更を加え、初代ジムニーが誕生しました。
初代ジムニー (LJ10型)は、悪路走破性を高めるためにラダーフレームを基本骨格とし、前後リーフリジッドのサスペンションを装備。タイヤは16インチの大経タイヤを採用し、副変速機で高速・低速の2段階で切り替える本格仕様のクルマとなっています。
乗用車ではなく商用車として発売された初代ジムニーは、土木や建設の現場や山間地での運搬など「プロの道具」として評価を得ました。
また、当時日本で普及していた四輪駆動車は、三菱「ジープ」やトヨタ「ランドクルーザー」など大型車種のみだったため、軽自動車で販売価格や維持費が安く、本格的な機動力を持つジムニーは注目を浴びたのです。
1972年には、空冷エンジンから水冷エンジンに変更したLJ20型を発売、それと同時にジムニー初となるバンモデルLJ20V型が追加されました。
軽自動車規格が変更された1976年には、車体サイズはそのままに新しい水冷直列3気筒2サイクルエンジンを搭載したSJ10型を発売。排気量を550クラスに拡大し、「ジムニー55」の愛称で親しまれます。
そして、スズキ初の4サイクルエンジンを搭載したSJ20型(ジムニー8)を1977年に発売。排気量800ccのエンジンであることから、ジムニー初の小型車登録となったジムニー8は、海外市場へと参入したモデルです。
1970年の発売から11年経った1981年5月に、2代目モデルへフルモデルチェンジをおこないます。2代目ジムニー(SJ30型)は、「Tough&Neat」をキャッチコピーとし、オフロードだけではなくオンロードの性能もアピールしたものとなりました。
乗用車からジムニーに乗り換える人などに向けて、工具なしで簡単に幌を前倒しでき、リアシートを前向きにするなど、初心者に配慮した設計としています。
1987年まで発売されたSJ30型は、日本で最後の2サイクルエンジン搭載の四輪自動車となったのです。
その後、1986年にジムニーでは初めての、ターボ付き水冷4サイクル3気筒エンジンを搭載したJA7型1を発売。1990年には軽自動車の規格が拡大したことにより、エンジン排気量が660ccとなったJA11型を発売しました。JA11型はジムニー初のAT車が設定されたモデルです。
1982年には発売されたSJ40型では、ユーザーから要望の多かった1リッターエンジンを搭載したモデルが登場。これは、海外市場で人気が高かった輸出モデルを、国内で発売したものでした。
また、その後のJB31型では、いまでもラインナップされる「ジムニーシエラ」が登場しています。
■平成、令和へと伝統を受け継ぐジムニー
軽自動車規格の改正によって、1998年フルモデルチェンジをした3代目ジムニーが発売されました。
3代目ジムニー(JB23型)は、これまでの箱形のデザインから、丸みを持ったデザインへと大きく変更され、モデルも5ナンバーワゴンのみとなり、幌やバンモデルは廃止されました。
初代ジムニーから続く、基本骨格のラダーフレームと前後リジッドアクスルサスペンションは守りつつも、新たに「軽量衝撃吸収ボディー」を開発し、高い安全性も追求しています。
また、室内が拡大されたことにより、居住性が高まり、オフロードだけではなくオンロード性能も向上したのです。
JB23型は、1998年の発売から2018年の生産終了まで、約20年という長い歴史を持ったモデルでした。その間には多数のマイナーチェンジや一部改良がおこなわれ、伝統を守りつつも進化は怠っていませんでした。
そして、2018年7月に現行モデルの4代目ジムニー(JB64型)が発売されました。デザインは3代目の丸みのあるデザインとは異なり、初代、2代目を思わせる箱形のデザインとなっています。
4代目ジムニーは、歴代モデルのデザインが採用されており、初代、2代目からは「丸型のヘッドランプ」、初代から「丸型の独立配置されたウィンカー」、3代目からは「5スロットグリル」が採り入れられています。
内外装ともに「機能に徹した飾らない潔さ」というコンセプトでデザインを刷新し、外装は車両状況が把握しやすい角ばったスクエアボディを採用しています。
また、厚手の手袋を着用しても操作が可能なスイッチ類を採用することで、どんな状況でも運転に支障をきたさない機能的なレイアウトを実現。
ジムニーの特徴でもある「悪路走破性」を高めるため、新開発ラダーフレームの採用や伝統的な縦置きエンジンFRレイアウト、リジッドサスペンションの改良により荒地や障害物などでの走行性能を格段に向上させているほか、「ブレーキLSDトラクションコントロール」や「ヒルホールドコントロール」などの機能でもドライバーをサポートします。
カラー設定について、スズキのデザイン担当者は次のように説明しています。
「今回のボディカラーは『機能を表現する色・素材』を狙いとしています。『キネティックイエロー』は、悪天候のなかでも目立つ性能を追求した要素を重要視しました。
『ジャングルグリーン(ジムニーシエラ)』は、森のなかなどで隠れる性能を追求しています。この2色に決定した背景には、実際に仕事使われている方や森林組合などへの調査結果で判明しました」
4代目ジムニーは、スズキでは初となる2018年度グッドデザイン賞金賞を受賞したほか、日本車では初となる世界カーオブザイヤー「ワールドアーバンカー」を2019年に受賞するなど、さまざまな分野で評価を得ているクルマです。
ジムニーがいまでも愛される理由として、50年以上の歴史と伝統を守りつつ進化し続けていくという、バランス感覚がその秘訣かもしれません。
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