伊藤真一さんにホンダのオートバイを思う存分乗り尽くしてもらい、新しい魅力を発見するロングラン研究所。今回は、2019年の4月にマイナーチェンジされた新型CB250Rに試乗! 一体どこがリニューアルされたのか?
マイナーチェンジで乗り味が大きく変化
過去、この連載ではCB250Rを2回取り上げてきましたが、今回の新型で3回目になりますね。
ライバル対決! スズキ KATANA / カワサキ Z900RS / ホンダ CB1100RS を乗り比べ!
つい、この間に出たばかりのニューモデルという印象のCB250Rが、早くもマイナーチェンジを受けたわけですが、何が変わったのかには非常に興味がありました。
まず跨った瞬間に驚かされたのは、外観上は大きな違いがないのに、ライディングポジションが大きく変わっていることでした。
跨ってシートに体重をかけたとき、沈み込む量が旧型よりかなり多かったです。
旧型はハンドル幅が広くて、上体がアップライトな感じの、いわゆるストリートファイター的なポジションでした。
しかし新型は、ストリートファイターっぽさを微塵も感じさせないような、自然で普通のネイキッドバイク的な、ライディングポジションに感じました。
走り出してからの印象も、旧型と全く違うライディングフィーリングになっていたので、非常に驚かされましたね。
旧型のCB250Rは、フロントフォークがスコスコっと動いている印象でしたが、この新型はだいぶじんわりと沈み込むような印象になっていました。
そして旧型はリアタイヤのグリップ感が、タイヤが台形になっているように感じるくらいベターっと路面にグリップしている感覚だったのですが、新型はそこまでのリアのグリップ感がない、ある意味「普通」のグリップ感になっていました。
マイナーチェンジでここまで別物と思えるくらい、ハンドリングのキャラクターが変わることはあり得ない! と思って、タイヤの空気圧が規定値ではないのかも? と疑ったのですが、チェックのためにお邪魔した「ホンダドリーム蘇我」で計測したところ、試乗車のタイヤ空気圧が規定値を外していないことは確認できました。
サスペンションセッティングや仕様の変更だけで、新型と旧型のCB250Rは、まったく別物のハンドリングになっているわけです。
なぜこれだけ、ハンドリングの性格を変えるマイナーチェンジをしたのだろう……?
その辺りに関心を感じての、試乗を今回はすることになりました。
旧型のようにサスの動きやグリップ感が別々ではなく
前後のサスのバランスがよく動いている感じです
兄弟車のCB125Rと、旧型のCB250Rは、フロントフォークがスコスコっと沈んで、前輪にかかった荷重によるグリップ感がちょっと遅れて、ベターっとしたリア側のグリップ感に伝わるフィーリングでした。
一方、新型のCB250Rは、フロントフォークのセッティングが変わって圧側の減衰が上がり、イニシャルもちょっと強く掛かっていますね。
そしてユニットが変わったリア側は、跨ったときの1Gでストンと沈み込み、コツコツと路面からの突き上げを拾うようなフィーリングになっています。
そんなこともあり、シートの座面も感触的に旧型よりも硬くなったような印象を受けました。
先ほどお話したように、旧型はフロント側とリア側のサスペンションが、ちょっと遅れて仕事をするような感じで、それがリア側のベターっとしたグリップ感という、とても独特なフィーリングを生んでいたのですが、新型は旧型ほどハンドリングの個性が強くなく、ある意味「普通」のハンドリングにまとまっていました。
旧型はステアリングヘッドパイプ辺りの重心点が、シートの荷重をかけるところと水平な位置にあった感じでしたが、新型はリアの1Gの沈み込みが大きくなったこともあり、ステアリングヘッドパイプ辺りの重心点がリア側よりも高くなっていますね。
そのため、フロント側への荷重のかかり方がゆっくりとしたものになり、ステアリングの舵の入り方も穏やかになっています。
旧型のように、サスの動きやグリップ感も別々という感じではなく、前後のサスがバランス良く動いている感じです。
現行のCB400SFのように、これぞホンダ! というようなまとまり感のあるハンドリングに、新型はなっています。
旧型のハンドリングは、今までのホンダ車にはなかった個性的なもので、個人的には気に入っていたのですが、改めて思うと自分が比較的体重があるほうで、スローイン・ファーストアウトの走りが身についていたから、そういう風に感じていたのかもしれませんね。
コーナーにゆっくり入って、アクセルを早めに開けて立ち上がりを重視して、クイックに曲がっていく。
しっかり後ろに座って、リア側に荷重を移して立ち上がる……というスポーツライディングの基本が身についている人には旧型のハンドリングを楽しめると思いますが、CB250Rに限らず250ccクラスのモデルは、体重50 kg台から80 kg以上の人まで、また初心者からベテランまで、幅広いユーザーの方が選ぶものです。
おそらく旧型は体重の軽いビギナーの方が乗ると、ある意味で玄人好みのハンドリングの良さを引き出せなかったと思いますね。
その点で新型のハンドリングは、かつてのVTR250のような普遍的なバランスの良さがあり、ビギナーの方が乗っても安心して楽しめるものに仕上がっていると思いました。
新型はまるで400ccに乗っているような錯覚を受けるくらい
乗り味が変わっていますね!
1Gの沈み込みが新型は大きいので、大関さんと2人乗りしたときはハンドリングがどうなるのだろうと思いましたが、1人乗りのときと印象は変わらなくて驚きましたね。
エンジンがアクセルで低速からコントロールしやすいので、すごく乗りやすくてUターンなども楽でした。
旧型は125ccの車体に、250ccのエンジンを搭載したような印象のキビキビした感じがありましたが、新型はまるで400ccに乗っているような錯覚を受けるくらい、乗り味が変わりましたね。
その印象をさらに強くしたのは、旧型よりもエンジンの仕上がりが良くなったためかもしれません。
どの辺りが変わったのかは推察になりますけど、ECUのマッピングを煮詰めたのか全域で「燃え方」が良くなっていますね。
単気筒ですが、全域でフリクション感もまったくなかったです。
一般に単気筒に乗っているときは、高回転域を常用していると精神的にストレスを感じるので、ギアをローからトップまでポンポンポンとシフトアップしたくなるじゃないですか?
でも新型CB250Rでは、高速道路を走っているときでも、トップを使わずに5速で走っていた……なんてことがありました。
それくらい、エンジンが回っていて嫌な感じがないんですよね。
逆に、市街地でシフトダウンしているときに2速のままで、え? まだローギアがあるの? と感じるくらい、各ギアの守備範囲がプラスマイナス1速くらいカバーできる感じです。
単気筒250ccですが、これくらい仕上がりが良いのならば400ccはいらない、と思えるくらい新型CB250Rのエンジンは好印象でした。
今まで、ホンダの250ccモデルの中から1台を選ぶとしたら? 自分はレブルが一番お気に入りだったんですけど、新型CB250Rに今回乗ったら、これが一番! になりましたね。
ハンドリングのキャラクターは旧型からガラリと変わりましたが、製品としての完成度は新型はぐんと上がっています。
いつでもどこでも、気兼ねなく走り出してライディングを楽しめる1台になっていますね。
また、新型はABSモデルのみに統合されましたが、標準でABSを装備する方が、多くのライダーにとっては良いことだと思いますね。
新型CB250Rでジムカーナをしたい、という方は困るのかもしれないですけど、一般道や峠道のツーリングを楽しみたい方にとっては、ABSが付いていることのメリットはとても大きいと思います。
RIDING POSITION ライダー身長:179cm、パッセンジャー身長:172cm
「跨ったときの印象も大幅に変わりましたね。
旧型はハンドルが広くて、アップライトな感じがしましたが、新型はそういう印象が皆無になってます」と、伊藤さんも前後サスのセッティングの変更による、乗車感の変化に驚いた様子。
足着き性が旧型よりはるかに向上したのは、スペック値以上の印象。
なお2人乗りの快適さについては、大関さんによると旧型より大きな進展はなかった様子。
足が窮屈とは、足が長くスタイル抜群の大関さんならではの悩みですね(笑)。
今月の試乗モデル
CB250R(2019)
ネイキッドのCB-Rシリーズの、人気の250ccモデルであるCB250Rは、早くもマイナーチェンジを受けて新型が登場。
新色の「マットパールアジャイルブルー」を追加するとともに、IMU(車体姿勢推定システム)付きのABSを標準装備化(ABS無しモデルは廃止)。
また前後サスペンションの仕様・設定を変更することで、乗車時の足着き性を向上させるなどの改良を施している。
伊藤さんの注目ポイント!
「う~ん……マイナーチェンジを受けたCB250Rは、注目ポイントをひとつに絞るのが難しいですね……。あえて言うなら、全部かな!」とのこと。
トータルパッケージでの変更が、伊藤さんには印象深かったようです。
DETAILS
旧型ではABS付きと、ABS無しを選ぶことができたが、新型はABSモデルに統一(価格は旧型ABS付きモデルから据え置き)。
なお前後ホイールが、ブラウンのカラーになったのも新型の外観上の特徴のひとつだ。
現在のホンダ製250ccモデルの「核」となっている、水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブエンジン。
どのエンジン回転域からでも、スロットル操作に対するリニアな加速感を得られる出力特性を有している。
[ アルバムはオリジナルサイトでご覧ください ]
PHOTO:松川 忍 まとめ:宮崎 健太郎
公式サイト
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