次の一手が必要だった。カワサキは1960年代に「マッハ」、70年代に「Z」というシリーズ・ラインアップを完成させ、2&4ストロークとも“大排気量スポーツに強いブランド”という評価を国内外で得ていた。70年代中期にはマッハは750cc、Zは1000ccに達していた。
しかし2ストロークは燃費や騒音問題、アンチ・ポリューションといった時代の要請から、スーパースポーツの分野ではいずれ淘汰されていく運命にあった。オーバー750クラスは、4ストローク1本に絞られていくことになる。日本車ではホンダCBに市販車初の4気筒の座を譲ったものの、Z1でDOHC4気筒を載せて巻き返した自負もあった。われわれには750ccの“ゼッツー”で親しまれたZシリーズだ。
Zはその後Z-FX、GP-zへと進化していくのだが、80年代を生き延びるためには新しい技術チャレンジが必要だった。パワーユニットのコンパクト化である。たとえばハーレー・ダビッドソンやBMWのように唯一無二の個性的なエンジンを持つなら、それを貫けばいい。だがハイパフォーマンスを売りにするマルチシリンダーは、常に最先端と最高性能を追求しなければならなかった。
フレームやエンジンはスーパースポーツの成り立ちだが、ハンドルを高めに、ステップを前寄りにするポジションを採ることで、ツアラーとしての性格も与えられた。カワサキが選んだ道は「水冷化」だった。84年に登場したGP-zの新開発エンジンは全幅を狭めるべくウェットライナー(シリンダースリーブを冷却水路が直接冷やす方式)を採り、排気量は従来より小さい900cc。空冷に比べエンジンマネジメントに優れ、ラジエターなど冷却系コンポーネンツの追加を差し引いても「オツリがくる」のだった。モデル名はGPZ900R、以前の空冷車は小文字の「z」、水冷車は大文字の「Z」で区別される。
トム・クルーズの愛車として銀幕を駆け抜けるGPZ900Rのもうひとつのエポックは、そのサブネームにあった。“Ninja(ニンジャ)”だ。前回紹介したスズキ・カタナもそうだが、東洋の神秘、ジャパネスクをたちどころに想起できるこの名称を、カワサキはフルカウリング横のいちばん目立つ場所に貼り込んだ。最大市場である北米の人々にとってそれは「スシ、フジヤマ、ゲイシャ」級の魅力だった。86年に日本公開された映画『トップガン』で、トム・クルーズ演じるパイロットの“マーベリック”が、愛車のニンジャで滑走路を駆け抜けるシーンはあまりに有名で、国内外での「Ninja」人気を不動のものにした。
北米で発売当初の80年代は日本ではオーバー750ccの販売自主規制があったため、日本市場ではボア/ストロークを縮めたGPZ750Rとして登場した。あれから30有余年の時を経て、来夏の公開が発表された続編でも、ファイアクラッカーレッド/メタリックグレーのニンジャGPZ900Rがマーベリックのなつかしい相棒として登場すると伝えられる。Ninja人気再燃の予感である。
文・金子直樹
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