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812スーパーファスト以降にみるフェラーリの新戦略(2017-2019)【フェラーリ名鑑】

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812スーパーファスト以降にみるフェラーリの新戦略(2017-2019)【フェラーリ名鑑】

ここまで、1947年のフェラーリ社の創業から代表的なモデルともにその歴史を振り返ってきた。やはり最後は現行モデルの2シーター、そして「ICONA」と呼ばれる、少数が生産されることを基本的なスタンスとした、フェラーリの新しいビジネスから誕生したモデルを解説して終わることにしよう。

2017年「812スーパーファスト」発表

ハイブリッド時代に突入「ラ フェラーリ&SF90ストラダーレ」(2013-2019)【フェラーリ名鑑】

現行モデルの12気筒2シーターモデルは、2017年のジュネーブ・ショーで発表された「812スーパーファスト」。スーパーファストとは、かつてフェラーリが生産した高性能なGTに与えていた伝統的な車名だが、それが今回はプロダクションモデル・ラインナップのトップに位置する12気筒2シーターに与えられることになった。

そのデザインは、近年のフェラーリの流儀に則って縦長の変型ヘッドランプをフロントのアイキャッチとするもの。サイドには彫刻のようにシャープなラインが刻まれ、テールのデザインと相まってニューモデルとしての斬新さを生み出している。フェラーリによれば、前作のF12ベルリネッタと比較して、フロントのダウンフォースは30%、リアは12%増という結果を得たというから、この過激な造形は確かな機能をもつものと結論づけることができる。

フロントミッドシップされるエンジンは、8900rpmがレブリミットとされる6496cc仕様のV型12気筒(自然吸気)。13.6という圧縮比から得られる最高出力は800psと驚異的なもので、すなわち車名の812とは、800psの12気筒モデルであることを示している。組み合わせられるトランスミッションは7速のF1デュアルクラッチで、デファレンシャルはもちろんE-Diff。F12tdfで初採用された後輪操舵システムも、この812スーパーファストには受け継がれている。ステアリング上には5つの中から路面状況や好みに応じてベストなモードを選択できるマネッティーノが備わり、コンフォートモードを選べば、日頃の足として使えるほどの快適さを味わうこともできる。

「F8トリブート」に込められた近未来の方向性

一方、8気筒2シーターの最新作として2019年に発表されたのが「F8トリブート」だ。トリブートとは、「感謝や尊敬の気持ちを表す」という意味をもつ言葉であるから、フェラーリはこのモデルを最後にV型8気筒エンジン搭載車の生産を終了するのではないかという噂さえ、フェラリスタの間では流れている。仮にフェラーリが現在のV型8気筒ツインターボエンジンから、さらに環境性能を高めるとするならば、考えられるのはハイブリッドやPHEVというシステムを搭載するモデルだろう。フェラーリの販売はいまだ世界的に好調であり、仮に年産1万台を超えると、排出ガス規制の新しい枠組みを加わえなければならない。そうなればパワーユニットのエレクトロニック化も不可避なものになってくる。

F8トリブートのデザインには、あのF40にインスピレーションを得たディテールがいくつも採用されているという。さらにフロントのSダクトを始め、サーキットで培われたエンジニアリングが加わる。ミッドのエンジンは、720psの最高出力を誇る3902ccのV型8気筒ツインターボ。これは488GTBに対して50psの強化を得た計算になる。車重はドライウエイトで1330kg。0→100km/hを2.9秒でこなし、最高速度は340km/hに達する。

限られたカスタマーにのみ販売する新戦略

そして2018年、フェラーリから発表された「ICONA」は、少量生産を前提に選ばれたカスタマーのために限定車を販売するというニュービジネスだ。ファーストモデルとなった「SP1 モンツァ」と「SP2 モンツァ」は、合わせて500台を生産するモデル。前者はシングルシーター、後者は2シーターとされ、フェラーリのコンペティツィオーネ・バルケッタの始まりとなる1950年代を想起させるデザインが採用されている。ベースは812スーパーファストで、エンジンは810psにまで強化。これを購入できるカスタマーになるには、かなりの時間と資金が必要となるのは言うまでもないだろう。

【SPECIFICATION】

フェラーリ 812 スーパーファスト

年式:2017年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)

排気量:6496cc

最高出力:588kW(800ps)/8500rpm

最大トルク:718Nm/7000rpm

乾燥重量:1525kg

最高速度:340km/h

フェラーリ F8 トリブート

年式:2019年

エンジン:90度V型8気筒DOHC(4バルブ)

排気量:3902cc

最高出力:530kW(720ps)/7000rpm

最大トルク:770Nm/3250rpm

乾燥重量:1330kg

最高速度:340km/h

フェラーリ SP1 / SP2 モンツァ

年式:2018年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)

排気量:6496cc

最高出力:596kW(810ps)/8500rpm

最大トルク:719Nm/7000rpm

乾燥重量:1500kg(SP1) 1520kg(SP2)

最高速度:300km/h

※すべてメーカー公表値

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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