毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
日産はパイクカー(Be-1やフィガロ)をなぜ復刻させないのか
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 180SX(1989-1998)をご紹介します。
文:伊達軍曹/写真:NISSAN
■シルビアとは異なるキャラで愛された“ワンエイティー”
「デート」と「走り」をこよなく愛した80年代末期の人気車、S13型日産シルビアの兄弟車として誕生し、約10年にわたって販売を継続。
そして今なお中古車としてそれなり以上の人気を維持している小ぶりなFRのスポーティハッチバック。それが日産180SX(ワンエイティ エスエックス)です。
1988年5月にデビューしたS13型シルビアは、流麗なデザインとFRならではの走りでたちまち大ヒット作となりました。
そしてそのS13型シルビアの北米向け輸出仕様である「240SX」を日本市場向けに仕立て直したのが、今回ご紹介する180SXです。
S13型シルビアの「リトラクタブルヘッドライト&ハッチバッククーペスタイル版」としてラインナップされた180SX(写真はTYPE2)
180SXのデビューは、S13型シルビアに遅れること1年の1989年5月。
エンジンやプラットフォーム、トランスミッション、サスペンションなどの基本構造はS13型シルビアと同一ですが、足回りのセッティングなどは180SX専用に調整されています。
そしてシルビアが2ドアクーペであったのに対し、180SXはファストバックの3ドアハッチバッククーペで、ヘッドライトもリトラクタブル式になりました。
各部のフラッシュサーフェス化(表面の突起や段差をなくすこと)なども図ったことで、空気抵抗係数は当時クラストップレベルのCd値0.30を達成しています。
前期型の搭載エンジンは最高出力175psのCA18DET型1.8L直4ターボで、S13型シルビアでは用意された自然吸気エンジンは180SXには採用されませんでした。「シルビアとは異なるスポーティなキャラクター」を全面に押し出すための方策です。
組み合わされるトランスミッションは5MTまたはフルレンジ電子制御式4速ATでしたが、新車として販売された180SXの約9割が5MTだったと言われています。
シルビアとのパーツの互換性が高かったため「シルエイティ」「ワンビア」と呼ばれる合成車も流行った。のちに「シルエイティ」は日産純正として500台限定で販売されている(写真はTYPE2)
1991年1月にはマイナーチェンジが行われ、エンジンを最高出力205psのSR20DET型2L直4ターボに一新。また従来のHICAS-IIも、このタイミングで「Super HICAS」に進化しています。
1996年8月にはビッグマイナーチェンジが実施され、リアコンビネーションランプがスカイライン風の丸型になるなどと同時に、自然吸気のSR20DE型2L直DOHC(最高出力140ps)を搭載するタイプSも設定されました。
このような形で地道な改変を受けながら9年8カ月の長きにわたり販売が続けられた日産180SXでしたが、1998年12月、S15型日産シルビアに統合される形で生産終了となってしまいました。
■1998年シルビアとの統合により消滅 しかしその魅力と支持はいまも不変
兄弟車であるS13型シルビアが1993年10月にS14型へフルモデルチェンジされた後も、180SXはそのままの形で販売が続けられました。
いや、むしろシルビアがモデルチェンジされたことにより、「そのまま」だった180SXの人気はさらに高まったと言えるでしょう。
その理由は、S14型シルビアが「3ナンバーサイズ」へと大型化されると同時に、キャラクター的にも「ありがちな普通のクーペ」に変わってしまったからです。
そういったシルビアの改変を好まなかった当時の若年層が、「ならば180SXのほうがぜんぜんイイじゃん!」とばかりに、5ナンバーサイズであり、FRレイアウトであり、チューニングに適したパワフルなターボエンジンであり、なおかつ比較的安価でもある――という180SXの魅力に気づいたわけです。
しかし1990年代前半の若年層は確かにまだそういったタイプの車に興味を持っていましたが、1990年代半ば頃から世の中のムードは一変しました。
S14型が3ナンバーサイズとなり、そのデザインとともに不評となったこともあり、180SXはS13型と共にホンダ プレリュードやマツダのRX-7、トヨタのセリカといった名車たちを相手に長く好まれ続けた
「スポーティなクーペやハッチバック」を好む層ももちろん一定数はいましたが、大半の人の興味はミニバンやSUV、当時の言葉で言うRV(レクレーショナルヴィークル)に移っていったのです。
そのため、同時期に販売されていた不人気車であるS14型日産シルビアとともに、180SXの販売台数も徐々に低迷していきました。
「平成12年度排ガス規制」という理由もあるにはありますが、結局は市場の縮小と採算性の悪化により、日産180SXというなかなかの名作は「1代限り」で終わってしまったのです。
とはいえ「気持ちよく操縦できる小ぶりなFRスポーツ」という車が備えている価値は、ある意味永遠です。
それゆえ日産180SXの中古車は今なお一部の層には確実に刺さり続けており、180SXを使ってチューニングやドリフト走行などを楽しむ人の存在は、今後も決して「絶滅」することはないでしょう。
■日産 180SX 主要諸元
・全長×全幅×全高:4520mm×1695mm×1290mm
・ホイールベース:2475mm
・車重:1220kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1998cc
・最高出力:205ps/6000rpm
・最大トルク:28.0kgm/4000rpm
・燃費:11.0km/L(10・15モード)
・価格:249万8000円(1996年式タイプX)
◎ベストカーwebの『LINE@』がはじまりました!
(タッチ・クリックすると、スマホの方はLINEアプリが開きます)
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
四国と関西をつなぐ「紀淡海峡大橋」はいつできる? 新たな本四連絡橋で関西圏に環状道路網の誕生なるか。
既存モデルの新車の「バックカメラ」が5月から義務化されます 本当にバック事故対策になるのでしょうか?
ホンダ 新型「プレリュード」まもなく復活!? 次期型“流麗クーペ”は「デートカー」それとも「スポーツカー」? 歴代初の「タイプR」登場はあるのか
かつて全盛だった「ステーションワゴン」なぜ人気低下? 国産ワゴンは絶滅寸前!? それでもワゴンが良い理由とは
ホンダのスゴい「新型軽バン」発売延期! 「100万円台」なるか 斬新「前後2人乗り」で注目も! 6月に価格発表、どんな声集まる?
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?