■2016年を最後にトップの座をトヨタC-HRに奪われていたが……
一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)から軽自動車を除いた登録車の通称名別の販売ランキングが発表され、2019年上半期におけるトップ50が判明しました。登録車全体のトップは半年で70,277台を売ったトヨタ・プリウスです。
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さて、自販連のランキングからSUVカテゴリーのトップ10を抽出すると次のようになります。
●2019年上半期 国内SUV販売トップ10
ホンダ ヴェゼル 33,445台
トヨタ C-HR 32,221台
日産 エクストレイル 22,603台
トヨタ ハリアー 20,772台
マツダ CX-5 20,201台
トヨタ RAV4 17,775台
SUBARU フォレスター 17,639台
トヨタ ランドクルーザー 15,960台
マツダ CX-8 14,790台
スズキ クロスビー 13,852台
なんと、2013年12月にデビューしたホンダ・ヴェゼルが久しぶりにトップになったのです。ホンダ独自のセンタータンクレイアウトのプラットフォームにより生まれたグローバルモデルのSUVである「ヴェゼル」は、2014年~2016年まで暦年での販売台数においてSUVカテゴリーの販売1位になるほどのヒットモデルで、日本の自動車マーケットにSUVカテゴリーを定着させる原動力のひとつとなりましたが、2016年12月にトヨタがスタイリッシュなSUV「C-HR」を誕生させると、以降はその後塵を拝することになったのです。
しかし、2019年上半期には僅差ですがヴェゼルが逆転。デビューから5年以上を経ていますから新鮮味も薄れているはずですが、ものともせずトップに返り咲いたのです。その理由として、ヴェゼル自体の要素としては2019年1月に1.5L VTEC TURBOエンジンを搭載した「VEZEL TOURING」という新グレードを追加するなどの商品改良が挙げられるでしょう。これによってヴェゼルは、手頃な価格帯の1.5L NAエンジン、省燃費な1.5L ハイブリッド、そしてパワフルな1.5Lターボと選択肢を増やしたのです。もともと、ボディサイズからすると巨大ともいえるラゲッジスペースを持つなどセンタータンクレイアウトのメリットを活かしたパッケージは高く評価されていますから、パワートレインのラインナップを増やしたことが商品力アップにつながったといえそうです。
外的要因としては、2019年4月にトヨタがRAV4をリリースしたことが国内SUVカテゴリー全体の勢力図に変化をもたらしたことの影響があったという見方もできます。直近(2019年6月単月)でのSUVカテゴリーの販売台数トップ5は次のようになっているのです。
●2019年6月 国内SUV販売トップ5
トヨタ RAV4 7,822台
ホンダ ヴェゼル 6,143台
トヨタ C-HR 4,342台
トヨタ ハリアー 3,155台
日産 エクストレイル 2,720台
RAV4とC-HRではセグメントが異なるので競合にはなりえないという見方もできるでしょうが、数字を見る限りはトヨタのSUVを狙うようなユーザー層がRAV4の登場により分かれてしまったことで、ヴェゼルがトップに返り咲いたという風に考えることもできそうです。実際、C-HRの1.8LハイブリッドとRAV4の2.0Lガソリン車では価格帯が被っています。ホンダもCR-Vを復活させていますが、こちらは車格感が違いすぎてヴェゼルは影響を受けなかったといえそうです。しかし、トヨタは単純に自社内でカニバリしているとはいえません。それは一年前の数字と比べると明確です。
●2018年6月 国内SUV販売トップ5
トヨタ C-HR 6,820台
ホンダ ヴェゼル 6,502台
日産 エクストレイル 4,396台
トヨタ ハリアー 3,662台
マツダ CX-5 3,362台
6月単月の数字だけで市場トレンドを判断するのは誤解の元ですが、わかりやすいように同月トップ5だけで比較すると、SUVカテゴリーにおけるトヨタの販売台数は1.5倍ほどに拡大しています。単独車種での販売トップという栄冠はホンダに譲りながら、拡大するSUV市場の旨味はトヨタが得ているといったところでしょうか。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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