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業界ニュース 2019.6.13

NSXとRC213V-S──2台のホンダ製ハイエンドスポーツに試乗してわかったこと

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それぞれ2370万円と2190万円のプライスタグを掲げるNSXとRC213V-S。前者はありとあらゆる最先端技術で武装して欧州のライバル勢に挑み、後者はまさに公道に放たれたMotoGPマシンそのものである。どちらもほかに類を見ないアプローチであり、極めて日本らしいハイエンドモデルの姿とも言える。ホンダが放った2台の超弩級モデルを駆り、プレミアムスポーツの在りかたを考える。REPORT●永田元輔(NAGATA Gensuke)/小泉建治(KOIZUMI Kenji)PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)※本稿は2017年7月発売の「モーターファン Vol.8」に掲載されたものを転載したものです。クルマの仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

速さ、走りの楽しさ、そして使いやすさのすべてが備わっている

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 NSXの歴史は、挑戦の歴史だ。1990年に登場した初代、そして2016年に登場したこの新型。いずれも欧米のスーパースポーツカーに、日本車として殴り込みをかける――は言い過ぎにしても、その一角を占めたい、という挑戦として、生み出されたクルマである。そのための飛び道具として、初代は世界初のオールアルミボディ、そして新型は世界初のエンジン+3モーターによるトルクベクタリングを与えられた。新型が路上を走り始めて数ヵ月、その間に色んな人のさまざまな意見が飛び交っていたが、その内容は賛否両論、といったところだろうか。

 あらためて新型NSXに乗ってみると、こう言うと偉そうだがじつに良く出来ている。V6ツインターボエンジンはレスポンスも良く、吹け上がりの感触もなかなかにドラマチックで気分を盛り上げる。そして、やはり速い。クワイエットモードでも十分に速いが、スポーツモードにすればもうこれ以上は必要ない、というほどの加速を見せる。ただ、その加速感があくまでも冷静なのはハイブリッドの特性だろう。もっとも、これはこれで十分に新しさを感じさせる走りである。

 山道に行ってコーナーにさしかかり、ステアリングを切ってアクセルを開けて行く時、モーターによるトルクベクタリングAWDの効果を実感することができる。とにかくフロントの入りがやたらとシャープなだけでなく、インに向かってグイグイとノーズが入っていくのである。最近のスーパースポーツカーはAWDを採用する例も多いが、それらのステアリングを切った方向にかっ飛んでいく、という感じとはまたちょっと違う、まるでクルマが意志を持って曲がっていくかのような感じである。最初は驚くが、慣れると夢中になってコーナーを走っている自分がいる。

 この走りを支えている要因のひとつには、ボディ剛性の高さもある。アルミのスペースフレームによるボディは適度なしなやかさも感じさせながら路面からの入力を完全に受け止め、ドライバーとクルマの一体感を演出する。重量物を極力ボディの中心寄りに配置して実現したフロント42%、リヤ58%という前後重量のバランスの良さも相まって、コーナーでは自分を中心にクルマが回転しているかのような感覚だ。限界域でのクセを指摘する声もあるが、一般レベルで峠を攻めるくらいでは、そんな思いをすることもない。

 また日本車らしいのは、街中での扱いやすさだ。前方視界が優れているのはもちろんのこと、このクラスで後方がこれほど見やすいミッドシップスポーツは稀だろう。足の長いドアミラーはデザイン上のアクセントにもなっているが、側方視界の向上にも大いに役立っている。1940mmという全幅さえ頭に入れておけば、普段の使用にも十分に使えるはずだ。また、都内中心の走行で10km/ℓ台という燃費も、特筆すべき素晴らしさ。あと必要なのは、一時的にフロントの車高を上げるリフターくらいのものだろう。

NSXに足りないものは、自信と強さではないだろうか

 ただし、気になる部分もいくつかある。ほかのホンダ車と共有のようなウインカー&ワイパーレバーの質感の低さ。ビニール製で、しかも取り付けがグラグラしているサンバイザーの安っぽさ。差し込み式でしかもプラスチック製というドリンクホルダーのやる気のなさ。実用性の高さを謳いながら電動格納が備わらないので、駐車のたびに手でドアミラーを畳む情けなさ。いずれも現代の2370万円のスーパースポーツカーということを考えると、どうしても違和感を禁じ得ない。

 つまり、新型NSXにつきまとうネガティブな意見は、このあちこちから感じる“違和感”のせいではないだろうか。室内まわりや装備類だけでなく、最新モデルの割には斬新さ、新鮮さが薄いボディデザインもそうだし、頑張ってはいるもののエクステリアと同じく新しい提案性には欠けて、どうしても他のホンダ車との共通性を感じさせるインテリアも、このクラスのクルマの顧客には違和感として映るかもしれない。

 走りは確かに素晴らしいが、ステアリングを通じて得られる路面の微細なインフォメーションがやや希薄に感じられるのも、スーパースポーツカーとしては違和感であろう。実際に新型NSXに触れて、乗って、そして感動もしているのだが、その一方で新型NSXから受けるこれらの「何となく」の違和感は、心の隅に澱のように漂っている。

 今回、同時に借り出したRC213V-Sは2190万円という非常識ともいえる価格のバイクだが、そのような違和感が不思議とない。ボクはバイクに乗れないので眺める専門だが、「これはスゲえ」と素直に感動できる。NSXとRC213V-S。同じホンダの製品でありながら、この違いは何か。考えてみるに、それはつまり作り手側の「自信」の違いなのではないだろうか。

 ホンダは二輪メーカーの雄であり、MotoGPなどでの活躍を見てもわかるように、スポーツバイクで世界をリードする存在だ。RC213V-Sには、そんなホンダの自信が詰まっている。「イヤなら乗らなくていいよ」という、奢りともいえるくらいの迫力を感じる。エクスクルーシブな乗り物には、それくらいの強さが必要なのだ。それはもはや信仰に近いのかもしれない。

 NSXには、そこまでの強さがない。周りの顔色を窺っている雰囲気が、どうしても感じられる。そこもまた、エクスクルーシブな乗り物としての違和感につながるのだろう。そこには新参者への偏見もあるかもしれないが、ある種のブランドビジネスであるこのテのクルマの世界では、それもまた当然なのだ。

 しかし、NSXはまだ発売されたばかり。これから熟成と改良を重ね、NSXだけの世界を構築すればいい。初代NSXだって、個性が確立したのは3年後に登場したタイプRからだった。必ずしもその方向性は、ホンダの当初の予定通りではなかったかもしれないが。

■ホンダNSX
● 全長×全幅×全高:4490×1940×1215mm ● ホイールベース:2630mm ● 車両重量:1800kg ● エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ ● 総排気量:3492cc ● ボア×ストローク:91.0×89.5mm ● 最高出力:373kW(507ps)/6500-7500rpm ● 最大トルク:550Nm/2000-6000rpm ●前輪モーター最高出力:27kW(37ps)/4000rpm ● 前輪モーター最大トルク:73Nm/0-2000rpm ● 後輪モーター最高出力:35kW(48ps)/3000rpm ● 後輪モーター最大トルク:148Nm/500-2000rpm ● トランスミッション:9速DCT ● サスペンション形式:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡウィッシュボーン ● ブレーキ:ⒻⓇベンチレーテッドディスク ● タイヤサイズ:Ⓕ245/35ZR19 Ⓡ305/30ZR20 ● 車両価格:2370万円

どこを見ても妥協がない───RC213V-Sはすべての乗り手を黙らせる

 フェラーリがグランプリシーンにおける輝かしい歴史と実績を自らの市販モデルに投影させ、高いブランド価値を与えることに成功していることは周知の通りだ。ならば二輪において、ホンダにもその資格はあるはずだ。かつてのWGP、現在のMotoGPにおいて、ホンダほど輝かしい実績を残してきたメーカーはほかにない。

 にもかかわらず何に遠慮しているのか、ホンダは1000ccのスーパースポーツまで「イイモノを安く」の精神で生真面目に作り続けてきた。1980年代のレーサーレプリカ全盛期と根っこは変わっていない。スーパースポーツやレーサーレプリカを安価と言うのは語弊があるだろうし、歴史を繙けばNRのようなエクスクルーシブモデルも存在したけれど、いずれも性能や成り立ちを考えたら十分にリーズナブルと言えた。それがホンダの魅力でもあるが、速さ以外の部分に付加価値を見出しづらいという点では欠点ともいえる。

 と、歯がゆく思っていた矢先だ。2014年の秋、正気の沙汰とは思えぬ新型車がリリースされた。RC213V-Sである。なにしろMotoGPマシンに保安部品をくっつけてそのまま公道を走れるようにしました、というのだ。そして価格は量産車史上最高額の2190万円! 何から何まで自分の理解力を超えていたが、まるでバイクに興味を持ち始めたばかりの小学生の如く胸を躍らせてしまったのは本当だ。

 しかし今、その2190万円が目の前に鎮座し、筆者が火を入れるのを待ち構えているとなると、胸を躍らせるだけではすまない。全身全霊を捧げてライディングに集中せねばならない。

 スターターボタンを押すと、999ccV4はあっけなく目覚めた。バラつきながらもテンポの速いアイドリング音がいかにもV4らしい。音量はかなり大きめだ。シートは高めだが、身長174cmの筆者がブーツを履いていれば両足のかかとが地面につく。ハンドルはさすがに低く、前傾はきつい。

 そろーりと発進しようとして、お約束のようにカンッとエンストをかました。1速がおそろしくハイギヤードで、まるで一般的なバイクの3速くらいの感覚だ。おまけに低速トルクが細い。アクセルを開けつつ、しっかり駆動がタイヤに伝わるサマを感じながらクラッチをつながなければうまく発進できない。筆者は600ccのスーパースポーツという、最もピーキーで街乗りに向かないとされているカテゴリーのバイクを所有しているが、それとだって比較にならないほど気を遣う。

 だが走り出してしまえば快適そのもので、NSXと速度を合わせての並走撮影もなんのその。街中でもフツーに走れてしまうことにまずは感心させられた。

RC213V-Sには、作り手の迷いが見えない

 だが本当に驚いたのは高速道路に入ってからだ。日本仕様のRC213V-Sはレブリミットが7200rpmに抑えられていて、最高出力も70psにとどまる。サーキット専用のスポーツキットを組めば1万3000rpmで215psを発生するが、そこまで回すと公道では騒音規制にまず通らない。だから胸のすくような加速はほんの一瞬しか味わえないのだが、逆にそのおかげで、エンジンパワーというものはMotoGPマシンの凄まじさのほんの一部に過ぎないことを思い知らされたのだ。

 まず、目地段差のいなしかたが見事と言うほかない。足をかためたスーパースポーツの場合、どうしてもフロントを軸にリヤが跳ねるような仕草を隠せないが、RC213V-Sにはそれがない。もちろん車体が軽いから、何ごともなかったかのように、とはならないが、トンッと乗り手に軽くインフォーメーションを伝えつつも、リヤタイヤは接地を失わない。

 そしてブレーキングである。100km/hから無遠慮にフロントブレーキを握りしめても、リヤが不安定になることなくシュウッと瞬く間に速度を殺してしまう。考えてみれば当たり前だ。MotoGPでは350km/hから一気に50km/hまで落とすような超ハードブレーキングを何度も繰り返すわけで、100km/hなんて最初っから止まっているに等しい。

 そしてワインディングロードに入って、感心は感涙に変わる。とにかくすべての動きが素直かつスムーズで、唐突な挙動を一切見せないのだ。素人が無理してキッカケなど作らなくてもフロントは自然と入ってくれるし、アクセルを開けていけば見事に視線をトレースする。そのアクセルを開けている間のトラクション感もすばらしい。タイヤが路面を蹴り上げている様子が頭の中に拡大されて映し出されるような感覚で、安心感がとてつもない。限界域ではどうだか知らないが、公道レベルではとにかく乗りやすいのである。

 金が掛かっているとはこういうことか。

 もちろん2190万円のバイクなんて、よほどの大富豪でもなければ手が出せない。だが、RC213V-Sにはプレミアムスポーツ作りの大きなヒントが隠されている。

 前述の通り、このバイクは70psしかない。200psが当たり前のリッタークラスのスーパースポーツとは比べものにもならない。にもかかわらず、筆者は2190万円という価格設定に異論はないし、試乗を終えた今はもっと高くてもいいとさえ思っている。ホンダのサテライトチーム向けMotoGPマシンの価格は、一年間のサポート付きで8000万円と言われている。そこからサポートのコストを大まかに引くと、車両単体の価格は5000万円ほどと見ることができる。そう考えると2190万円という価格は、依然として「イイモノを安く」の延長線上にあるのだ。

 たったの70psで乗り手にそう考えさせるのは、RC213V-Sが圧倒的な自尊心と説得力に満ち溢れているからだ。説得力とは、歴史や実績に裏打ちされるものである。前述の通りホンダはその点において申し分ない。必要なのは自尊心だ。

 果たして自尊心に満ちたホンダが放ったRC213V-Sには、作り手の迷いが見えない。だから乗り手に至上の満足感を与えるのだろう。

■ホンダRC213V- S
● 全長×全幅×全高:2100×790[770]×1120mm ● ホイールベース:1465mm ● シート高:830mm ● 車両重量:170[160]kg ● エンジン形式:V型4気筒DOHC ● 総排気量:999cc ● ボア×ストローク:81.0×48.4mm ● 圧縮比:13.0 ● 最高出力:51[158]kW(70[215]ps)/6000[13000]rpm ● 最大トルク:87[118]Nm/5000[10500]rpm ● トランスミッション:6速MT タイヤサイズ:Ⓕ120/70ZR17Ⓡ190/55ZR17 ● 車両価格:2190万円
※[ ]はスポーツキット装着時

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(MotorFan MotorFan編集部)

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