■独自技術「センタータンクレイアウト」の長所とは
現在、軽自動車と小型車が国内販売の主力となっているホンダ。この主力車種の多くに採用されているのが「センタータンクレイアウト」と呼ばれるクルマの構造に関する技術です。
ホンダ「次は失敗できない」 今年投入の新型「フィット」でハイブリッドの方向性示す!
「センタータンクレイアウト」が採用された車種の多くが人気モデルとなっていますが、他のメーカーで採用されたクルマはほとんどありません。なぜ他社では採用されていないのでしょうか。
「センタータンクレイアウト」は、クルマの部品のなかで大きな部類に入る燃料タンクを、前席の床下に配置するホンダの特許技術です。
一般的に、燃料タンクは後席や荷室の下など車体の後ろ側へ搭載されていることが多いのですが、「センタータンクレイアウト」の場合は、薄型の燃料タンクが前席下に置かれているため、後席や荷室の下に障害となるものが存在しません。
そのため、荷室の床面を低くすることができ、より広い室内空間を実現することができました。
この技術が初めて採用された初代「フィット」は広い室内が好評となり、2001年6月に発売されてから約6か月で累計販売台数が10万台を突破しています。
その後、ホンダはフィットの派生モデルとして開発されたセダンやコンパクトワゴンなどにも「センタータンクレイアウト」を取り入れ、採用車種を拡大させていきます。そして、いま日本で一番売れているクルマ「N-BOX」にも、「センタータンクレイアウト」は採用されています。
「センタータンクレイアウト」について、ホンダは次のように説明します。
「小型車や軽自動車を中心に搭載しています。国内販売されている現行モデルでは、『フィット』『ヴェゼル』『グレイス』『シャトル』『N-BOX』『N-BOX SLASH』『N-ONE』『N-WGN』『N-VAN』に採用されています」
※ ※ ※
「センタータンクレイアウト」はホンダが特許を持っているため、他のメーカーが利用する場合は技術供与を受ける必要がありますが、他社への技術供与が積極的にされたという話は聞かれません。
搭載車種がこれだけ人気となっているにもかかわらず、いったいなぜでしょうか。2006年に技術供与を受けて「センタータンクレイアウト」採用モデルを発売した三菱自動車は、次のように説明します。
「2013年まで発売されていた軽自動車『i(アイ)』は、センタータンクレイアウトが採用されておりました。駆動方式にMR(ミッドシップ・リアドライブ)が取り入れられていたことが、採用の理由となります。
開発にあたっては、車種ごとに駆動方式や様々な条件などを考慮した最適なレイアウトを採用しているため、現時点では採用している車種はありません」
iでは、エンジンを荷室下に収める必要が出たことから、「センタータンクレイアウト」を用いる必要があったと考えられます。しかし三菱自動車を含めた他のメーカーでは、現在は採用されていません。
「センタータンクレイアウト」は、燃料タンクを薄く仕上げることや、フロアの設計も新たにおこなう必要があるため、専用の部品も少なくないと考えられます。そのため導入のハードルが高くなってしまうことが、採用車種が増えない理由のひとつなのでしょう。
ホンダは、2019年秋に新型のフィットを公開する予定です。このフィットでも「センタータンクレイアウト」が続投されるのか、注目されています。
■ハイブリッド技術を無償開放したトヨタ、本音は?
ホンダの「センタータンクレイアウト」は特許のからみで他社で採用された例はほとんどありませんが、トヨタはハイブリッド車の開発で培った約2万3740件の特許実施権を、無償で提供すると2019年4月に発表しました。公開される範囲はモーターやPCU(パワーコントロールユニット)、システムの制御など多岐に渡ります。
これに先立って、2019年3月にはトヨタとスズキが新たな協業について検討を開始したと発表し、協業を検討する項目のひとつとして、スズキがトヨタからハイブリッドシステムの供給を受けることが含まれました。
ハイブリッド車はトヨタの人気車種の多くに搭載されており、この技術は将来においても同社の核となることは間違いありません。なぜ、トヨタは技術の公開を決めたのでしょうか。
その理由は、一企業からの二酸化炭素排出量だけでなく世界全体での排出量削減に貢献するため、とトヨタは説明します。同社の寺師茂樹取締役・副社長は、次のようにコメントしています。
「ハイブリッド車など電動車普及の必要性を感じておられる多くの企業から、トヨタの車両電動化システムについて、お問い合わせをいただくようになりました。
そのため、今こそ協調して取り組むときだ、と思いました。とくにこれからの10年で一気に普及が加速すれば、電動車が普通のクルマになっていくでしょう。そのお手伝いをさせていただきたいと考えました」
※ ※ ※
トヨタがハイブリッド技術を公開したほかの理由としては、自社システムを他社でも採用してもらうことで「業界標準」といえるようなポジションを確立させたい、という考えも推察されます。
「電動車」というジャンルにおけるトヨタのライバルが、他社のハイブリッド車のみならず電気自動車をはじめ数多く登場している現状を考えると、そのような狙いがあったとしても不思議ではありません。
同じ「特許技術」というものの扱いからも、両社の戦略の違いを見ることができます。
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みんなのコメント
重心を考えれば、リア寄りに燃料タンクを置いたほうがFFはバランスがいいよね。