■ほぼ同じクルマでも販売台数に差が存在?
自動車業界では、同じ形のクルマなのにブランドロゴや車名ロゴが違うモデルが存在します。俗に、OEM車と呼ばれ、提供を受けるブランドは製造を請け負うOEMメーカーからクルマを仕入れて、販売元として自社のブランド名や商品名、型式などで販売しているのです。
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OEM(original equipment manufacturer)元のブランドイメージが強いため、供給され販売するブランドの製品は大きな販売台数を稼ぐことができないことも多いのですが、そのなかで、ダイハツ「トール」をベースとしたトヨタ「ルーミー/タンク」は、国内の普通車市場でベースの「トール」よりも売れているのです。
なぜ販売台数に逆転の差が生まれているのでしょうか。
OEMの目的は、クルマの開発コストなどをかけずに、モデルラインナップを揃えて競合自動車メーカーとの販売において、遅れをとらないためです。
そのため、普通車をメインとする自動車メーカーにおいて、OEMのほとんどは軽自動車の場合が多く、2019年3月時点で軽自動車を作っている国内自動車メーカーは、ホンダ、ダイハツ、スズキです。
なかでも、ダイハツとスズキは軽自動車や小型車に力を入れている自動車メーカーのため、普通車のOEMを他社から受けています。
ダイハツは、トヨタ「カムリ」を「アルティス」、トヨタ「プリウスα」を「メビウス」として販売。スズキでは、「日産「セレナ」を「ランディ」として販売することで普通車のラインナップを補っています。
このように販売面の弱い部分を補うためにOEMが増えているのは事実ですが、日本自動車販売協会連合会の発表する2018年度の販売台数においては、日産「セレナ」が10万17台(登録車4位)に対して、スズキ「ランディ」はランク外という結果です。
しかし、ダイハツ「トール」をベースとしたトヨタ「ルーミー/タンク」、スバル「ジャスティ」は、普通車に強いトヨタとスバルにダイハツがOEM提供している形になっています。
販売台数においても、従来であれば供給元のベース車が上位に位置するのが一般的ですが、トール4兄弟の場合は、2018年度の販売台数において、トヨタ「ルーミー(8万6645台)」「タンク(7万3013台)」に続きダイハツ「トール(3万227台)」という結果です。(スバル・ジャスティはランク外)
このトール4兄弟は、「トール」「ルーミー/タンク」は2016年11月9日に、「ジャスティ」は同年11月21日に発売されました。当時の販売状況について、トヨタの販売店スタッフは次のように話します。
「発売当時、ルーミーとタンクは『普通車から軽自動車に乗りかえするユーザーへの代替案』という販売戦略の一環として投入されたと聞いています。
しかし、既にトヨタには小型車クラスのモデルが多く存在していました。そのため、他モデルに比べて個性を出すために、いまでも人気のある背の高いモデルという特徴を活かしたモデルとして、ダイハツさんが全高のあるトールを開発し、OEM車としてルーミーとタンクを展開することになったようです。
ルーミーとタンクの販売台数が好調な理由としては、基本的に軽自動車やミニバンと同じく室内空間の広さが人気のひとつです。そして、軽自動車よりも走りが安定し、ミニバンより取り回しが良いといった部分が受けています。
そのため、今までセダンやミニバンに乗っていたユーザーがちょうど良いサイズのルーミーとタンクに乗りかえることも多く好調なのだと思います」
■同じクルマが4社から登場するOEMのメリットとは
国内メーカーのなかでもスズキはOEMが多く、マツダのOEM元として「アルト⇒キャロル」、「ワゴンR⇒フレア」、「ハスラー⇒フレアクロスオーバー」、「スペーシア⇒フレアワゴン」というモデルが存在します。
また、スズキ「エブリイワゴン」は、マツダ、日産、三菱というメーカーを超えたOEM元になっており、スズキ「ソリオ」は三菱「デリカD:2」としても販売されています。
なぜOEMが増えているのか、多くのメーカーにOEM車を提供しているスズキは次のように話します。
──OEMのメリットはなんでしょうか。
提供する側としては、生産台数が増えることによる製造コストの削減や生産性の向上といったメリットがあります。逆に提供を受ける側としては、開発コスト削減や、自社にないラインナップを加えることにより、幅広いお客さまのニーズにお応えすることが可能になり、新たな顧客の拡大が期待できます。
──自社販売車種と他社に供給している車種とで、販売時に競合となってしまうことはないのでしょうか。
販売時に競合となるケースもあるかと思いますが、それよりもコスト削減などのメリットの方が大きいと考えております。
※ ※ ※
最近の自動車業界では、軽自動車の開発・製造・販売をひとつの自動車メーカーがおこなうにはビジネスとして成り立たたなくなっています。
しかし、複数の自動車メーカーが提携すれば可能となり、日産と三菱の提携や軽商用車の幅広いOEMは、日本独自の軽自動車ビジネスにとって必要な戦略なのです。
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