2019年3月1日、ボルボの3列シートSUV「XC90」に、ディーゼル・エンジン搭載モデルの「D5」が追加、販売された。
ボルボはいま、ガソリン・エンジン搭載の「T」シリーズ、クリーンディーゼル・エンジン搭載の「D」シリーズでラインナップを構成する。すべてのエンジンは直列4気筒だ。
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XC90 D5はXC90シリーズにおける唯一のディーゼル・エンジン搭載モデルだ。ほかには、「T5」と「T6」というガソリンエンジン車と、「T8ツインエンジン」というプラグ・イン・ハイブリッドモデルが存在する。
搭載するエンジンは173kW(235ps)の最高出力と480Nmの最大トルクを発揮する。ボルボには、ほかにも違うスペックを持つディーゼルエンジンがあり、たとえば「XC60 D4」に搭載するディーゼル・エンジンは、排気量こそおなじであるものの最高出力140kW(190ps)と最大トルク400Nm。数値からもわかるように、D5はパワフルな仕様だ。
前置きが長くなってしまうけれど、D5ユニットにはひとつ重要な仕掛けがある。「パワー・パルス」というシステムだ。発進を含む低回転域からの加速時に、圧縮エアをターボチャージャーに送り込んでタービンをまわす仕組みである。ターボチャージャーが充分に働かない低回転域での、いわゆるターボラグが低減するという。
ボルボXC90 D5の試乗会は、2019年5月初頭、初夏を迎えつつある山形県でおこなわれた。
走り出しはこのクラスとしては軽快だ。車重は2トン超なので、いくらトルキーなエンジンでも少なくとも発進時はもたつくのが常であるが、D5はそれがない。
気持よく発進し、エンジン回転が上がっていき2000rpmを超えたあたりでターボがドンっと(意外なほど)力強く効き始める。そこまでスムーズにつながっていくのだ。
初めてD5を体験したひとは、「エンジンは2.0リッター直列4気筒」と、聞くとびっくりするはずだ。
“カラカラ”という甲高いディーゼル特有の音も、車内では聞こえない。エンジンルームからは排気系の音かなになかが、少し室内に入ってくる程度であるが、これは風切り音が低く、タイヤノイズも抑えられているため、相対的に目立った結果だろう。静粛性はきわめて高い。
ゆえに、ソフトな質感のレザーと、独特な風合いを持つウッドパネルで飾られたインテリアの上質な雰囲気は、ディーゼル・エンジンでも変わらない。
ハンドリングはすなおだ。ドライビングポジションはSUVだけあって高めであるが、乗用車的なポジションをとらせるステアリングのレイアウトも手伝い、ステーションワゴンのように運転出来る。また、クルマもきびきびとした動きで応えてくれる。
今回の試乗会では、酒田を起点に鶴岡を横目で見ながら羽黒山のワインディングロードをのぼり、出羽三山神社まで走った。
速度にもよるが、ロールは総じて控えめで、姿勢変化も少ない(試乗車のグレード「D5 AWD インスクリプション」は、オプションのエアサスペンション搭載車だった)。
1750rpmから最大トルクが発生しはじめるだけあって、羽黒山登坂路の小さなカーブを連続してこなしていくときも、アクセルペダルの微妙な踏み込みだけでしっかり加速が得られるので、まことに使い勝手がよい。
ブレーキも(やはり速度によるが)踏む量に比例してリニアに効くので、運転感覚はナチュラルだ。大きなサイズだから鈍重……ということはまったくなく、気持のいいドライブをいつでも楽しめる。
全長4950mmと5.0メートルになんなんとし、全幅1960mm、全高1775mmと、ボディサイズはかなりのサイズだ。ゆえにサードシートの空間もそれなりに広く、米国では“サッカーマム”に人気というのもわかる。
“サッカーマム”とは、子どもにサッカーをさせる米国のアッパーミドルクラスの主婦を指す。持ちまわりで自分のクルマにチームの子どもたちを乗せなくてはならず、最近ではミドルクラスからプレミアムクラスのSUVを選ぶケースが増えているという。おそらくXC90にとって大事なターゲット層のひとつだろう。
日本でもファミリーカーとしてやや上の世代に人気だろうと思っていたら、あにはからんや、20代、30代のひとがユーザーには多いのだそうだ。ふところに余裕があり、アクティブなライフスタイルが好きなひとなのだろうか。たしかに、ゴルフに出かけるのは楽そうだ。
先進安全装備も充実している。対向車対応機能も追加された「歩行者・サイクリスト検知機能付衝突回避・被害軽減ブレーキシステム」や、「全車速追従機能付 アダプティブ・クルーズ。コントロール」などを含む先進安全装備群「IntelliSafe(インテリセーフ)」は標準である。
XC90 D5 AWDの価格は、エントリーグレードの「モメンタム」が859万円、上級グレードの「インスクリプション」が944万円だ。エンジンはおなじである。ちがいは装備で、たとえば、前者は19インチホイールを装着するのに対し、後者は20インチホイールを装着する。
くわえてインスクリプションには、ヘッドアップディスプレイ、フロントシートのベンチレーション機能、14スピーカー・600ワットのハーマン/カードンのサウンドシステム、リアウィンドウ用サンブラインドなども標準。とはいえ、モメンタムでも必要十分な快適装備は備わる。
XC90 D5は、ゆったりと長距離ドライブを楽しみたい人におすすめの1台である。気になる燃費はWLTCモードで13.6km/L。ガソリン・タンク容量は71リッターだから計算上は950km以上走行可能だ。それでいて荷物も人もたっぷり積み込めるのだから。なるほど、長距離ドライブにぴったりなSUVであるのだ。
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