マクラーレンの新しいフラッグシップモデル“スピードテイル”が2019年のジュネーブ・ショーで一般公開された。
スピードテイルはマクラーレンの「アルティメイト・シリーズ」の第3作目にあたる。初作は「P1」、2作目は「セナ」で、価格はいずれも1億円超だった。
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しかし、スピードテイルのプライスはそれらを上まわる160万ポンド(約2億3000万円)!マクラーレン・ロードカーのシリーズモデルとしては過去最高額だ。
ただし、スピードテイルのコンセプトはこれまでのマクラーレンとは大きく異なる。彼らが手がけてきたロードカーの特徴は、程度の差こそあれ、サーキット走行を軽々とこなすコーナリング性能の高さにあった。
しかしスピードテイルで追求されたのは直線路での最高速度であり、長距離を楽々と走りきるグランドツアラー性だった。このためマクラーレンはスピードテイルのことを“ハイパーGT”と呼ぶ。
スピードテイルのもうひとつの特徴は、1992年に誕生した伝説のマクラーレン「F1」を強く意識している点だ。
かつてF1が記録した最高速度243mph(約389km/h)を越える250mph(約403km/h)に到達するパフォーマンスを実現するほか、「セントラル・ドライビングポジションの3シーター」というレイアウトもF1そのまま。限定生産台数を106台とさだめたのも、F1の総生産台数がこの数字だったことにちなんでいる。
もっとも、スピードテイルを手にできる106人の幸運なオーナーはすでに確定している。2016年7月、これまでにF1やアルティメイト・シリーズなどを購入した上顧客を集め、スピードテイルに関する事前説明がおこなわれたという。
このとき、クルマの諸元はおろかモデル名さえ明らかにされず、“オーナー候補”に提示されたのは簡単なイラストだけだったそうだ。しかし106名の枠はあっという間に埋まり、彼らは喜んで手付け金を支払ったという。その額は明らかにされていないが、どう考えても1000万円は下らないだろう。
つまり、彼らはわずかなイラストだけを手がかりにしてスピードテイルの購入を決めたのだ。それでも、キャンセル待ちのリストは100人を越えていたらしい。
翌年、“オーナー候補”にはより詳細な情報が開示され、あらためて購入の意思を確認した。この段階でキャンセルすれば手付け金は払い戻される約束だった。
結果はというと、スピードテイルのコンセプトを知った彼らはその内容に深く満足し、誰ひとりとしてキャンセルする者はなかったという。
ジュネーブショーで公開されたコンセプトカーを見ると、ボディ後半の優雅で流麗なデザインに圧倒される。
全長は5137mmで、セナより400mm近くも長い。おそらく、その大半はリアオーバーハングに費やされているはず。
ボディ下面に巨大な“エアトンネル”を設けて、空気抵抗の増大を最小に抑えながら必要なダウンフォースを手に入れようとしているのは、テールエンドからクルマの下を覗き込めば明らかだった。
直線的にせり上がるボディ下面に従う形で斜めにカットされた排気系のテールパイプも、見る者を圧倒する迫力がある。
シートレイアウトは前述のとおりドライバーが車体の中央に腰掛け、そのやや後方の両サイドに計2名のパッセンジャーが着座する形式だ。
私は実際、シートに腰掛けてみた。正面から見るとドライバーとパッセンジャーの肩が重なる格好になるが、前後方向に十分な間隔がとられているため、意外なほど窮屈には感じない。
それよりも驚かされたのは広々とした足下のスペースで、楽々と足を組めるほどの余裕があった。
なお、顧客の好みに応じてボディカラー、インテリアカラー、レザーの種類やカラー、さらには内外装に使われるカーボンパーツの色や織り方まで選べるなどビスポーク・プログラムは極めて充実している。
カラーと素材を選択するチームのリーダーを務めるジョー・ルイス氏は「106台のスピードテイルがすべて異なる仕様になることを期待しています」と、ショー会場で話した。
スピードテイルのエンジンは「720S」やセナと基本をおなじくする4.0リッターV型8気筒ツインターボで、モーターを搭載したハイブリッドシステムによって、1050psのシステム総出力を得る。
車重は1430kgと軽く、静止状態から300km/hまでに要する時間はわずか12.8秒! なお、403km/hの最高速度はマクラーレン・ロードカーとして過去最速という。
マクラーレンはまた、スピードテイルのDNAを受け継ぐ新たなグランドツアラーを間もなく発表するというから、こちらにも注目だ。
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