現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ランボルギーニの創設者フェルッチオのハートに触れるミュージアム──第2回 ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ前編

ここから本文です

ランボルギーニの創設者フェルッチオのハートに触れるミュージアム──第2回 ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ前編

掲載 更新
ランボルギーニの創設者フェルッチオのハートに触れるミュージアム──第2回 ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ前編

ランボルギーニという名のつくミュージアム(ムゼオ)は、ふたつある。ひとつはサンタアガタ・ボロネーゼの本社にある「ムゼオ・ランボルギーニ」。そしてもうひとつが「ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ」である。今回は、ボローニャの中心地から北へおよそ10km離れたフノにある、ランボルギーニ創設者の名を冠したミュージアムを訪れた。

1974年にフェルッチオが、アウトモビリ・ランボルギーニS.p.A.の株をすべて手放して以来、創業者一族はその後の経営に一切関わることはなかった。この「ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ」は、フェルッチオの息子トニーノが運営するいわば私設ミュージアム。現在のランボルギーニ本社とは一切関わりはない。特徴はその名が示すとおり、フェルッチオが興した事業が網羅されている点にある。エンツォ・フェラーリを信奉するフェラリスタ同様、ランボルギーニのファンのなかには、創設者フェルッチオ・ランボルギーニに魅了される人も多いだろう。そうしたフェルッチオ・ファンには、ぜひとも訪れてもらいたいミュージアムである。そこでまず、本社ミュージアムでは見ることができないフェルッチオゆかりの展示をご紹介しよう。ちなみにこのミュージアムは、もともとはランボルギーニの工場だった建物。もっともランボルギーニといってもスーパーカーを作っていた工場ではなく、空調設備を生産していた工場だ。フェルッチオは、トラクターだけでなく様々な事業を展開していたことでも有名なのだ。

キャデラックがソーホーに開いたブランド発信拠点

フェルッチオが頭角を現したのはトラクター製造から。ランボルギーニのヒストリックモデルが注目を集め高値で取引きされるようになった昨今、ランボルギーニのコレクターの中には、ランボルギーニ・トラットリア黎明期のトラクターをコレクションし始める人も出てくるなど、実は静かなブームを迎えている。1950~1960年代のトラクターは、サイズも小さく、オレンジやイエローのボディに丸目2灯の姿がファニーで可愛らしい。ミウラやカウンタックが収まるガレージに置けば、オブジェとしても映えそうだ。そうした歴代トラクターが常設されているのは、ここだけと言っていいだろう。

展示されているトラクターはレストレーション済みで、どれも新車当時の様子を伝えてくれる。フェルッチオが最初に作ったトラクター「カリオカ」は、第2次世界大戦後、連合国軍が残していった軍用車をもとに作られた。このカリオカは3台展示されており、1台はムゼオに入ってすぐ右手で来館者を迎えてくれる。もう1台は、由来となった軍用車と並んで展示されている。第2次世界大戦が終戦したあと、イタリアに残されたこうした連合国軍の軍用車の払い下げを受け、それを改造してトラクターに仕立てることを思いつくフェルッチオは、商才が長けていたといえる。当初は大規模な工場を構えることもできず、小さな工房でカリオカを製造していた(当時の月産は1台程度だった)。そのときの工房の一隅を再現したコーナーもある。また、レストレーションされていないトラクターも展示されており、これはこれで迫力がある。

フェルッチオはレース活動やレーシングカー、スポーツカーにはあまり興味がなかったと言われている。しかし、実際はそうではない。むしろ彼は若い頃からレースに魅了されていた。そんな彼が、自動車メーカーを立ち上げる前に、ミッレミリアに1度だけ参戦した経験がある。ミュージアムには、その時の参戦車両が展示されている。「フィアット “バルケッタ” スポーツ」という名で紹介されている2シーター・オープンカーがそれだ。この車両の元になっているのは、フィアット・トッポリーノ。フェルッチオは妻との結婚式で使ったトッポリーノの屋根をみずから切断し、バルケッタへとカスタマイズ。エンジンは567ccから650ccへとボアアップした。

このバルケッタで友人とふたりでミッレミリアに参戦するものの、友人がドライブしている時に事故に遭いリタイアという結果に終わっている。その際にフェルッチオは負傷したこともあって、レース活動に消極的になったと言い伝えられている。しかし、きちんとレストアし大切に保管されていたバルケッタを間近で見ると、彼がレースやスポーツカーに興味がなかったとは、にわかには信じられない。

ミッレミリアの事故が、本当に彼にとって忌まわしい思い出ならば、クラッシュ後に修理などせず、早々にこのバルケッタを手放していただろうからだ。

軍用車をトラクターに転用し、トッポリーノを2シーターのバルケッタにモディファイしたフェルッチオ。そんな彼が1955年、8歳の息子トニーノへのプレゼントにトイカーを作っている。一見するとペダルカーのようにも見えるが、実はエンジンを搭載しており、3段ギアを搭載するという本格的なもの。製作はランボルギーニのトラクター工場で行われたという。おそらく仕事の合間や終業後に、トラクターの部品などを使ってコツコツとフェルッチオ自らが製作したのだろう。

起業家としての側面がクローズアップされるフェルッチオだが、実は子煩悩であったことを伺わせるプレゼントに、ほのぼのとした気分にさせられた。しかしトップスピードは70km/hというから、子どものおもちゃにしては危険すぎるプレゼントだったかもしれない……。

野望は陸だけにとどまらず、海や山へ!

トラクターから始まったフェルッチオの事業は、その後乗り物というジャンルだけに限ってみると、自動車、ヘリコプター、パワーボートにまで広がっていく。第2次世界大戦後の復興の際に、農民の手の届く手頃な価格のトラクターに目をつけたように、フェルッチオはヘリコプターに着目する。大規模農場では農薬散布などにヘリコプターが使われるが、おそらくそうした農業用ヘリコプターをフェルッチオは作りたかったに違いない。いかにもレナッツォの農家に生まれた彼らしいアイディアだ。しかし、この事業は認可が下りず、プロトタイプを2機作っただけで終わってしまう。

一方、フェルッチオは1968年に4リッターV12エンジンをパワーボートに搭載している。当初、片手間仕事だったようだが、パワーボートへのエンジン供給がビジネスになると踏むと、R & D部門に小さなエンジニアリング・グループを作る。1996年~1998年にかけてランボルギーニ製エンジンを搭載したボートがタイトルを獲得したため、その後このグループは、パワーボート・エンジン専門の子会社モトーリ・マリーニ・ランボルギーニへと発展していく。空でのビジネスはうまくいかなかったが、海では成功したといえるだろう。フェルッチオの面目躍如といったところか。

このほか、フェルッチオはランボルギーニ・ブルチャトーリ株式会社を設立し、エアコンや業務用・家庭用オイルバーナー式暖房器具なども製造している。これらの製品も展示されているので、一見する価値はある。

次回は、スーパーカー・メーカーとしてのランボルギーニの展示車両をご紹介しよう。

INFORMATION
MUSEO FERRUCCIO LAMBORGHINI
ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ

所在地:S.P. Galliera n. 319 – 40050 Funo di Argelato (BO) – Italy
TEL:+39 051.863366
Guided tours: +39 338.6511527
URL:https://www.museolamborghini.com/it/home/

こんな記事も読まれています

常識覆す「豪華すぎるマイクロバス」が登場!座席は「ほぼ全て窓側」特別仕様
常識覆す「豪華すぎるマイクロバス」が登場!座席は「ほぼ全て窓側」特別仕様
乗りものニュース
トランプ当選で、NATOが形骸化? ほくそ笑むプーチン、ロシア撤退の「日本車メーカー」は今後どうなる
トランプ当選で、NATOが形骸化? ほくそ笑むプーチン、ロシア撤退の「日本車メーカー」は今後どうなる
Merkmal
トヨタ新型「ヤリス」発表! 約460万円の「小さな高級車」仕様もアリ! “新”ハイブリッド“搭載の「ヨーロピアン仕様」波で公開
トヨタ新型「ヤリス」発表! 約460万円の「小さな高級車」仕様もアリ! “新”ハイブリッド“搭載の「ヨーロピアン仕様」波で公開
くるまのニュース
【インタビュー】2024年MotoE電動レーサー、ドゥカティ「V21L」はいかに進化したのか
【インタビュー】2024年MotoE電動レーサー、ドゥカティ「V21L」はいかに進化したのか
バイクのニュース
「#ワークマン女子」が北海道初出店! アリオ札幌に4/26オープン
「#ワークマン女子」が北海道初出店! アリオ札幌に4/26オープン
バイクブロス
最近のベンツってフロントガラスが青くない? どういう仕組み? 車検は通るの?
最近のベンツってフロントガラスが青くない? どういう仕組み? 車検は通るの?
ベストカーWeb
ポルシェ カイエンに500psのV8ツインターボを搭載するGTSとGTSクーペを追加
ポルシェ カイエンに500psのV8ツインターボを搭載するGTSとGTSクーペを追加
Auto Prove
次期「ハチロク」登場か 「新GR86」お披露目!? 1.6Lターボ&新MT採用で進化がヤバい! 既販&次期見据えた開発状況は?
次期「ハチロク」登場か 「新GR86」お披露目!? 1.6Lターボ&新MT採用で進化がヤバい! 既販&次期見据えた開発状況は?
くるまのニュース
【MotoGP】かつてのロッシを思い出させるペドロ・アコスタ、新人でタイトル争い候補に? マルケス「そう考えない理由はない」
【MotoGP】かつてのロッシを思い出させるペドロ・アコスタ、新人でタイトル争い候補に? マルケス「そう考えない理由はない」
motorsport.com 日本版
そういやあったな……な人だらけだけどそれじゃダメ! 高速で見かける「0m確認基点」の意味と使い方
そういやあったな……な人だらけだけどそれじゃダメ! 高速で見かける「0m確認基点」の意味と使い方
WEB CARTOP
モニターキャンペーン第1弾! ルノー「カングー」に愛犬専用アクセサリーを多数装備した1台を最長1年間貸与されるキャンペーン
モニターキャンペーン第1弾! ルノー「カングー」に愛犬専用アクセサリーを多数装備した1台を最長1年間貸与されるキャンペーン
LE VOLANT CARSMEET WEB
RB、F1中国GPで角田裕毅とリカルドがリタイアに追い込まれた“もらい事故”は「どちらも不必要なアクシデント」
RB、F1中国GPで角田裕毅とリカルドがリタイアに追い込まれた“もらい事故”は「どちらも不必要なアクシデント」
motorsport.com 日本版
全長5m超! マツダが「FR×直6エンジン」搭載の新型「高級車」初公開! ロングノーズの「最上級モデル」は日本で展開! 新型「CX-80」は「CX-60」とどう違う?
全長5m超! マツダが「FR×直6エンジン」搭載の新型「高級車」初公開! ロングノーズの「最上級モデル」は日本で展開! 新型「CX-80」は「CX-60」とどう違う?
くるまのニュース
SHOEIが新型フルフェイスヘルメット『GT-エアーIII』にグラフィックモデル「DISCIPLINE」を設定
SHOEIが新型フルフェイスヘルメット『GT-エアーIII』にグラフィックモデル「DISCIPLINE」を設定
レスポンス
フェラーリ、F1マイアミGPで”ブルー”を使った特別カラーを施す。アメリカでの伝統称える
フェラーリ、F1マイアミGPで”ブルー”を使った特別カラーを施す。アメリカでの伝統称える
motorsport.com 日本版
「新大阪駅ほぼ直結高速」実現間近? 新御堂筋の“ぐるぐるランプ”が見えてきた 「淀川左岸線」万博の準備着々
「新大阪駅ほぼ直結高速」実現間近? 新御堂筋の“ぐるぐるランプ”が見えてきた 「淀川左岸線」万博の準備着々
乗りものニュース
ゴルフバッグはラクに積める? レクサス新型「GX」のラゲッジスペースをチェック! アウトドアレジャーで重宝する便利装備も充実
ゴルフバッグはラクに積める? レクサス新型「GX」のラゲッジスペースをチェック! アウトドアレジャーで重宝する便利装備も充実
VAGUE
全長5m超え「トヨタ 大型セダン」実車展示! 驚く「使い方」で注目!? 正統派セダンの「クラウン」に対する声は?
全長5m超え「トヨタ 大型セダン」実車展示! 驚く「使い方」で注目!? 正統派セダンの「クラウン」に対する声は?
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村