■時代に左右されないクラウンと変化し続けたスカイライン
最近の新車販売ランキングでは、依然としてコンパクトカーやミニバン、ハイブリッド車などが人気上位のモデルです。そのなかで、売れ筋グレードの価格帯が400万円を超える3ナンバー車は、ランキングの中堅から下位に位置しています。
この条件における1位は、Lサイズミニバンのトヨタ「アルファード」。ミニバン人気もあり、アルファードが好調に売れるのは理解できますが、国産セダンの代名詞といわれる、トヨタ「クラウン」が高価格3ナンバー車の2位に入っているのです。
「セダンは不人気、高価格車も売れない」といわれるなかで、Lサイズセダンのクラウンは好調ですが、一方の日産を代表するセダンの「スカイライン」はなぜ苦戦するのでしょうか。
同じLサイズセダンでも、日産「スカイライン」は売れ行きが大幅に下がります。2018年にクラウンは5万324台を登録しましたが、スカイラインは2576台です。スカイラインの売れ行きは、クラウンの5%となり、同じ国産Lサイズセダンでありながら、販売台数に大きな差がついています。
クラウンとスカイラインは、もともと両メーカーの基幹車種です。クラウンは初代モデルを1955年、スカイラインは1957年に発売しており、日本国内における乗用車の普及を支えました。スカイラインは当初プリンスの商品でしたが、1966年にプリンスは日産と合併して、日産スカイラインになります。
両車の売れ行きは、以前はスカイラインが上まわっていました。1970年の登録台数は、3代目クラウンが8万9048台、3代目スカイラインは9万336台です。この後はさらに差が開き、1973年に「ケンメリ」の愛称で親しまれた4代目スカイラインは、15万7598台を登録して販売のピークを迎えるのです。
一方のクラウンは、1971年に4代目にフルモデルチェンジしましたが、スピンドル・シェイプのフロントマスクが不評で売れ行きが伸び悩み、1973年の登録台数は9万8785台でスカイラインの圧勝。この後、クラウンは1974年に発売された5代目で、風格のある外観を取り戻して売れ行きを伸ばしますが、スカイラインにはおよびません。
その後そして1987年に8代目になると、クラウンはバブル経済の効果もあって売れ行きを伸ばし、国内販売が最高潮に達した1990年には、クラウンも20万8016台を登録して販売のピークを迎えます。2018年に国内販売1位になったホンダ「N-BOX」が約24万台のため、当時のクラウンには凄い勢いがありました。
両車の販売推移の特徴は、クラウンがピークをバブル経済期の1990年に迎えたのに対して、スカイラインは1973年と早かったことが挙げられます。
そして、日産は1990年代に入ると業績を悪化させ、2000年以降は全店併売に移行して系列を撤廃。そうなると販売しやすいミニバンのセレナ、コンパクトカーのノートなどに力が入り、2001年に発売された11代目以降のスカイラインは、海外で売られるインフィニティ中心のクルマに。2014年に発売された13代目の現行スカイラインは、フロントグリルにインフィニティのエンブレムを掲げるほど海外指向を強めました。
このようなスカイラインの状況を日産の販売店スタッフは次のように説明しています。
「スカイラインの走行性能は今でも高いですが、クルマ造りが海外向けになり、積極的に売り込む車種ではなくなりました。販売台数も下がっています。しかし根強いスカイラインファンのお客様も残っており、定期的に購入されています。
スカイラインクーペが発売されたら必ず買うと約束しているお客様もおられますが、日産が国内に導入してくれません。スカイラインの認知度は今も高く、力の入れ方次第で売れるクルマだと思います」
一方で、トヨタ店スタッフは次のように話します。
「セダンのグローバル化が進む中で、クラウンは日本をメインに企画・開発されています。全幅は1800mmに収まり、内外装のデザインも、日本のお客様にとっての高級感を大切にしています。
そのため、グローバルカーのプリウスがボディを拡大しても、クラウンは現行型のサイズを維持するでしょう。そうしないとクラウンは国産高級セダンの代表ではなくなり、売れ行きも下げてしまうからです」
※ ※ ※
両者の差は、国内市場に対する本気度の違いといえるのです。1970年代におけるスカイラインの超絶的な売れ行きは、当時のユーザーの好みとワイドなバリエーション構成、商品の特徴が合致した結果でしたが、その後の激しい凋落(2018年の売れ行きは1973年の1.6%)は、スカイラインが日本から離れた弊害にほかなりません。
■「スカイライン」には何が起こり、「クラウン」はどうなるのか
1970年頃までは、若年層が憧れるスポーティカーといえばスカイラインでしたが、それ以降はトヨタ「セリカ」、ホンダ「プレリュード」、マツダ「RX-7」などが登場して、日産も「シルビア」が人気を高めます。こういった影響もあってスカイラインは売りにくくなりました。
そこで1980年代のトヨタ「マークII/チェイサー/クレスタ」の高人気も影響して、スカイラインは豪華路線にシフトしましたが、スポーティなスカイラインファンからは反感を買ってしまいます。
つまり1980年代以降、スカイラインのコンセプトとボディサイズが頻繁に変わったのは、何をやっても売れ行きが回復しない苦悩の現れ。世の中はバブル経済に浮かれ、クラウンも売れ行きを伸ばすなかで、スカイラインは早くも販売下降が始まり開発者は苦しんでいたのです。 その結果、スポーツ路線はダメだと判断され、1993年の9代目(R33型)はボディを拡大。背景には1989年の税制改訂で3ナンバー車の不利が撤廃されたこともありました。しかし売れ行きは伸びず、1993年は6万3830台でしたが、モデル末期の1997年には1万9421台まで減るのです。
スカイラインは、ベーシックなセダンからスポーティな2000GTまで幅広いグレードが販売を支えていため、日本車の車種数が増えて細分化が進むと競争力が下がっていきました。
一方、クラウンはスカイラインのようにグレードが多くありません。初期モデルにはピックアップトラックもありましたが、基本的には高級セダンに特化した車種として歩んできました。そのために時代の流れに翻弄されにくかったのです。
対するクラウンは、セダンが売れない時代になっても国内向けの開発を行い、トヨタ店が力を入れて販売を行ってきました。企画・開発・販売のすべてが日本向けに足並みをそろえたから、一定の販売を維持できていました。
気になるのはトヨタの今後の展開です。日産がかつて行った全店併売への移行を、2025年をメドに行うと発表。現時点でも、姉妹車やマークXの廃止など車種数を減らすことがアナウンスされています。
全店併売で、今までのような「トヨタ店のクラウン」を守れるかは分かりません。店舗の削減は必至のため、トヨタ店が廃止され、近隣のカローラ店やネッツ店がクラウンの販売を肩代わりする場面も予想されるのです。
クラウンがスカイラインと同じ結末を迎えることも考えられ、過去を振り返ると、日産やホンダは、系列化を撤廃したことで、売れ行きを下げたり低価格車に偏る売れ方になったこともあります。
日本を代表する「クラウン」を守るためにも、トヨタには販売会社の意見を聞きながら慎重に戦略を立てて欲しいものです。
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