日本市場で絶大の人気を得たホンダの初代オデッセイは、海を渡って自由の国へ留学するものの文化の違いから、なかなか馴染めなかった。そこでオデッセイは、郷に入っては郷に従えと独自の進化を果たす。生まれ変わって人気者となり、今度は日本に一時帰郷することとなった。心身ともに大きく成長した姿を故郷で披露したのだが、どうも日本人の視線が冷たい。何故なのか。
北米市場のホンダ オデッセイと、日本市場のホンダ ラグレイト
お国が違えば、好みも違う。それを体現するクルマがホンダの「ラグレイト(USオデッセイ)」だろう。
1970年代のスーパーカー図鑑(1)「ランボルギーニ カウンタック」
ラグレイトは1999年から2003年にかけて日本で販売されたミニバンだ。その特徴は、カナダで生産された逆輸入車だったということ。
3列シートで7人乗り、全長5105×全幅1935×全高1740mmという日本人にとって余裕たっぷりのサイズを誇った。というか、「過去にないほど大きくなった」と言われている日本市場の現行「オデッセイ」でさえ、全長4840×全幅1820×全高1695というスリーサイズ、これよりも遥かに大きかったのだ。
大きなクルマということもあって、ウリは「高級」であることだった。しかしながら見た目は、ほぼ「オデッセイの拡大版」。ゴージャスとは正直、言いづらいものだった。そうしたこともあってこの逆輸入車はほとんど売れず、わずか1世代で日本での販売を終了してしまった。
もともとラグレイトは、北米市場で「2代目オデッセイ」として発売されたクルマだ。日本には別のオデッセイがあったため、北米用モデルは通称「USオデッセイ」と呼ばれることになる。つまりラグレイトは高級車として作られたのではなく、そもそもオデッセイだったのだ。
ファミリーカーであるUSオデッセイは、いまも人気健在!
日本でミニバンブームに火がつく直前となる1994年に、はじめてオデッセイが発売された。それまでのミニバンは四角くて重鈍なイメージもあったが、この初代は「背の低いミニバン」というコンセプトで登場。スタイリッシュなミニバンという新ジャンルを開拓して、日本で大ヒットを記録した。
この勢いのまま、ホンダは北米市場にも初代「オデッセイ」を投入。ところが、こちらでは「小さすぎる」とさっぱり売れなかったのだ。この失敗を糧に、今度は北米専用オデッセイを開発したのだ。これが「USオデッセイ」であり、日本に逆輸入された「ラグレイト」であった。
先代が小さいという理由で失敗したから、次は大きくした。つまり初代オデッセイもUSオデッセイも、どちらもファミリーカーであって、高級車ではなかったのだ。
日本で「大きすぎる」と売れなかった「ラグレイト(USオデッセイ)」は、北米市場でヒットモデルとなる。そして2005年に3代目、2010年に4代目、2017年に5代目と、フルモデルチェンジを重ね、しっかりとアメリカ市場に根付いていく。北米において、2010年から7年連続でミニバンとして販売台数第1位を達成するほどだ。
「USオデッセイ」がアメリカ市場で人気の理由は、車内に専用設計の掃除機を備えるなど、ファミリー層にウケる装備をいくつも揃えていることだろう。最新モデルでは、多様なシートアレンジを可能にする「マジックスライド」や、乗員同士の会話をマイクとスピーカーなどで補助する機能を装備。親子で使うのに便利なクルマとしての道を突き進んでいるのだ。
日本のサイズ感から言えば、3.5L V6エンジンを搭載する巨大な「USオデッセイ」は高級車のように見えるかもしれないが、かの地ではファミリーカーとして人気を集めてきた。ところ変われば価値観も変わる。それを示すのが「USオデッセイ」であり「ラグレイト」なのだ。(文:鈴木ケンイチ)
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