メルセデスベンツとBMW、そしてアウディのドイツ御三家は、セダンをベースにした軽快なクーペルックの5ドアハッチバックを開発し、日本のマーケットでも好評を博している。
ルーフからリアエンドにかけてのなだらかなラインのファストバックスタイルがスポーティでもありエレガントでもある。
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メルセデスの人気者はAMG GT4ドアだ。BMWはグランツーリスモ、アウディはスポーツバックと名付けた5ドアハッチバックを送り出し、ユーザー層を大きく広げている。
だが、この手の4ドアセダンベースの5ドアハッチバックは日本ではなかなか根付かなかった。
20世紀、日本の自動車メーカーはヨーロッパに先駆けて5ドアハッチバックを開発し、発売している。だが、ことごとく不発に終わったから、「5ドアハッチバックは売れない」、という妙なジンクスがついたのだ。
このジンクスをプリウスが破ったが、それまでのモデルはちょっと早すぎたためか、販売は低迷したのである。
その悲運の5ドアハッチバックに焦点を当ててみた。
※編集部註:ここで登場させる5ドアハッチバックは、2BOX系の5ドアハッチバックではなく、4ドアセダンベースのものに限定。例えばかつてのシビックは、セダンと5ドアハッチバックを設定していましたが、両モデルは別ボディが与えられているため、本企画の対象外。また、初代ヴィッツは同じプラットフォームを使ったセダンのプラッツがありましたが、こちらも別ボディということで対象外となります。これらを前提に読み進めください
文:片岡英明/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、MITSUBISHI
トヨタカローラ5ドア(5代目)
販売期間:1983~1987年
カローラは3代目と4代目で、「リフトバック」と命名されたスタイリッシュな3ドアのハッチバックを設定した。
伸びやかなフォルムでクーペより利便性も優れているからファミリー層も興味を示したが、1983年春に登場した5代目のAE80系カローラでは、FR系の3ドアモデルはハッチバッククーペ/ノッチバッククーペに生まれ変わった。
セダン系はFF方式に転換したが、これにはリアゲートを大きく傾斜させた5ドアのハッチバックが用意され、こちらはリフトバックではなく4ドアセダンに対し5ドアとなった。ちなみに兄弟車のスプリンターにも5ドアが設定された。
FF化によってキャビンは広くなり、リアシートも分割可倒式だからラゲッジルームの使い勝手もいい。セダンベースの5ドアだから快適性も高かった。
エンジンは1.5Lの直列4気筒をボトムに、1.6Lと1.8Lのディーゼルも設定していた。
80系カローラのFFの4ドアセダンをベースにファストバック化することで使い勝手を大きく向上。ただちょっとリアが重い感じでモッサリした印象だった
バランスのとれた上質なファミリーカーだったが、セダンほどの知名度がなかったこともあり、販売は今一歩にとどまった。そのため1代限りで消滅し、5ドアは2BOXのカローラFXに絞り込まれた。
だが、87年に登場したAE90系スプリンターにはセダンをベースにした「シエロ」が設定されていた。リアに短いノッチをつけ、スポイラーを装備するなどスタイリッシュだったが、時代が早すぎたのか、販売は伸び悩んだ。
これに懲りたのか、7代目では5ドアハッチバックを切り捨てて4ドアハードトップのマリノを送り出している。ワゴンよりもスタイリッシュで狙いはよかったが、ちょっと色気が足りなかったか!?
日産スカイライン5ドア(R30系)
販売期間:1981~1985年
スカイラインの6代目は「ニュー愛のスカイライン」をキャッチフレーズに掲げ、1981年8月にデビューした。
ウエッジシェイプのエクステリアは、このR30系スカイラインから直列6気筒SOHCエンジンを積む2000GT系と4気筒エンジンを積むTI系が同じボディを使うようになっている。
R30系スカイラインの特徴は、4ドアセダンと2ドアハードトップに加え、時代を先取りした機動力の高い5ドアハッチバックを設定したことだ。セダンのルーフを少し延ばしてファストバックとし、リアゲートを追加した。
リアビューが秀逸なスカイライン5ドアハッチバック。セダン、クーペ、ワゴンに続き4タイプ目のボディとしてラインアップされたが販売面では苦戦した
歴代のスカイラインのなかでは力作で、エンジンは1.8LのZ18E型直列4気筒から2LのL20ET型ターボまでを揃えている。
広くて使い勝手のいいラゲッジルームを実現するために、日本で初めてスペアタイヤをテンパータイヤにしたことも注目ポイントだ。
5ドアハッチバックは時代を先取りした傑作だった。が、スカイラインにはワゴンの「エステート」もあったため、販売は低迷。1代限りで姿を消してしまうのである。現存するスカイライン5ドアハッチバックは少数だ。
ホンダクイント
販売期間:1980~1985年
1970年代後半、ホンダはFF方式のシビックとアコードの成功によって乗用車市場に足場を築いた。そして1980年2月に、シビックとアコードの間に新感覚のファミリーカーを投入している。それがクイントだ。
これはホンダの新規チャネル「ベルノ」店の主役となる5ドアハッチバックだった。クイントは「五重奏」の意味で、プレリュードに続いて音楽用語を使っている。5ドアと五重奏をかける粋なネーミングがナイス。
地味ながらファストバックスタイルの5ドアハッチバックで室内広さ、ラゲッジの使い勝手のよさで固定ファンを掴んでいた1980年代初頭の陰の実力車
ホンダはシビックとアコードにハッチゲートを採用し、好評を博していた。クイントは5ドアだから乗り降りしやすいし、ラゲッジルームの使い勝手もいい。ホンダ車として初めて分割式リアシートを採用し、多才なシートアレンジを可能にした。
メカニズムはシビックから4輪ストラットのサスペンションを受け継いでいる。もちろん、駆動方式はFFだ。エンジンはアコードと同じ1.6Lの直列4気筒SOHCで、CVCC方式を採用して低燃費を実現した。トランスミッションは5速MTと3速のホンダマチックを設定する。
ヨーロッパテイストを強く打ち出したクイントは、一歩先を行くマルチパーパスなファミリーカーだった。使い勝手がよく、走りの実力も高かったが、販売網が未熟だったこともあり、販売は伸び悩んだ。
その後、サンルーフを追加したり、フェイスリフトを行ったり、エンジンを改良したり、といろいろと手を入れた。
が、その後も販売は低迷し、1985年2月にクイントインテグラにバトンを託し、ひっそりと消えていく。
マツダ アンフィニMS-6
販売期間:1991~1994年(欧州では1997年まで販売)
マツダは、早い時期からセダンベースの5ドアハッチバックにこだわり続けてきた自動車メーカーだ。1982年、カペラはFF車に生まれ変わったが、3年後にセダンのルーフを延ばした粋な5ドアハッチバックを設定している。
リアをファストバックとし、リアエンドにはスポイラーも付く。これに続くFFカペラの2代目では5ドアモデルを主役とし、カペラCGのネーミングを与えている。CGは「シティギア」の意味だ。
この直後からマツダはバブル景気に後押しされ、販売チャネルの再構築に動き出す。マツダオート店はアンフィニ店に名称を変えたが、これがスタートした1991年秋に送り出したのがアンフィニMS-6である。
マツダは日本メーカーでは積極的にファストバックスタイルの5ドアハッチバックを市場投入。ヨーロッパで着実に売れたが日本では苦戦が続き1代かぎりで消滅
カペラに代わって主役となったワイドボディのクロノスの兄弟車だ。が、ドアから後ろを設計し直し、6ライトの5ドアハッチバックとした。
短いノッチを付けてクーペ風のデザインとしたため、後席のヘッドクリアランスはクロノスより少し減っている。
エンジンは新設計のV型6気筒DOHCだが、途中で4気筒エンジンとプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーディーゼルを追加した。
上質なV6エンジンを積み、剛性とハンドリングにもこだわったから、走りの実力は高い。また、ラゲッジルームも広いから多用途に使うことができた。が、日本では鳴かず飛ばずで、94年6月に販売を終了している。
これに対しヨーロッパでは安定した売れ行きを見せたMS-6は、1997年春まで販売が続けられた。
三菱ギャランスポーツ
販売期間:1994~1996年
V型6気筒エンジンを積むディアマンテの販売が好調だった三菱は、1992年5月にギャランをモデルチェンジし、7代目とした。初めて3ナンバー枠に踏み込み、堂々としたワイドボディを採用した。
また、エンジンも滑らかなパワーフィールの2L、V型6気筒を主役の座に据え、フラッグシップにはインタークーラー付きターボを頂いている。
もうひとつ注目したいのは、時代に先駆けてファジー制御の電子制御4速ATを設定したことだ。駆動方式もFFとビスカスカップリング付きのフルタイム4WDがラインアップされていた。
新しい4ドアセダンの姿を提案したギャランは、1994年8月にグリルガードやルーフレールを装備してRVテイストを盛り込んだギャランスポーツを投入した。
4ドアセダンベースだが、クーペとSUVのクロスオーバーといったほうがシックリくるギャランスポーツの斬新なコンセプトは現役当時は理解されなかった
これはリアにハッチゲートを備えた5ドアモデルだが、ドアから後方をクーペ風に寝かせ、リアにはスポイラーを装備している。
トップグレードのGTはパワフルな2Lの6A12型DOHCだ。クーペとSUVのクロスオーバーだが、時代が熟していなかったからユーザーは飛びつかなかった。
不発に終わったが、もう少し遅くデビューしたら、成功したかもしれない。ちょっと残念な5ドアハッチバックである。オン・ザ・レールの気持ちいい走りを楽しめるクルマだっただけに残念!!
★ ★ ★
ファストバックスタイルの5ドアハッチバックは、販売面で苦戦を強いられたモデルが多かったが、各メーカーは商品価値を高めるべくあの手この手を尽くしてきたことがよくわかる。
いいとこ取りを目論んで中途半端になったことが販売面で苦戦した要因となったクルマもあるが、生まれてくる時代が違えば結果も変わっただろうクルマも数多く存在している。日本メーカーにはこれからも失敗にめげずにチャレンジを続けてほしい。
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