毎月発表される日本車の新車販売台数。こういうランキングでは、ついつい上位のクルマばかりに目が行ってしまいます。
メディアも上位車種ばかり取り上げるし、メーカーもCMなどを展開するのは売れるクルマばかり。さらに売れなければ予算をかけられず、開発資金もかけられなくなってゆく。そうなると、売れているクルマはますます売れるし、売れないクルマはますます売れなくなってゆきます。
【20年超の大ベテランがザラ】古くても現役バリバリの凄いエンジン 5傑
とはいえそんな売れてないクルマのなかにも、しっかり進化を積み重ねているモデルもあるし、事情があるクルマだってあります。そんなクルマたちの現状と事情を調査してみました。
なお、各モデルの車名横に2019年2月の月販台数を明記しました。2~3桁台で奮闘中ですが、ちなみにこの月に一番売れたホンダN-BOXは20391台、2位のスズキスペーシアも15825台売れています。すごい……。
文:大音安弘
■日産 ティアナ 2019年2月販売台数 272台
初代は2003年登場。写真は現行型の3代目で2014年2月に日本市場発売
日産の世界戦略車のひとつであるティアナ。
オーソドックスなミッドサイズセダンで、3代目となる現行型は、2014年1月に登場した。全車2.5Lの前輪駆動車となっています。
2015年12月の一部変更では、自動ブレーキと踏み間違い衝突防止アシストを全車標準化。2016年4月にメーカーオプションであるナビと先進安全運転支援機能(車線逸脱警報、後側方車両検知警報、アラウンドビューモニター)を標準化した新グレードを設定。
わりと細かく仕様変更を繰り返していますが、しかしマイナーチェンジなどのブラッシュアップは発売から5年目となる現在までなし。
それだけに非常に地味な存在で、2月の月販台数は上記のとおり272台。それでも2月の記録では、日産セダンの中では最も売れているという現実が泣かせます(フーガは同月87台、スカイラインは219台、シルフィは210台)。
ただティアナ最大のマーケットはお隣の国、中国。
2018年4月~2019年2月までの累計販売台数は約10万1千台(!)と規模が桁違い。ちなみに、同時期の日本の販売は累計2130台ほど。また姉妹車として海外専用車のアルティマの存在もあるので、意外にも日産内での貢献度は高い1台のようです。
そんなティアナですが、すでにアメリカでは昨年春の時点で上記姉妹車のアルティマが新型へフルモデルチェンジしており、しかもこれが大変評判がいい。
2018年春に北米市場で発表されたアルティマ。北米市場における日産の販売戦略車で、確かにこれはカッコいい。売れそう
量産エンジンとしては世界初の可変圧縮比エンジン「VCターボ」を搭載しており、おそらくこのアルティマがそのまま日本での次期ティアナになるはず。いま発売されればトヨタ・カムリのいいライバルとなりそうです(ベストカーの予想によると今年秋~来年春に日本導入予定)。
■スズキ バレーノ 2019年2月販売台数 95台
2016年3月に日本市場デビュー。インドのマネサール工場で製造される。スズキの鈴木修会長いわく「インドで一番売れるんだからインドで作る」とのこと。正論だ。「バレーノ」はイタリア語で「閃光」
インドからやってきたスズキの世界戦略車がバレーノ。
2016年3月にデビューした、スイフトの上に位置するBセグメントの5ドアハッチバックです。
1.2Lの4気筒自然吸気エンジン×CVTと1L、3気筒ターボ×6ATのふたつのパワートレインを設定。
輸入車ながらレーダーブレーキサポートII、ACC、ディチャージヘッドランプ、キーレスプッシュスタートシステム、前席シートヒーターなど充実装備を誇ります。
2016年11月には早くも自然吸気エンジン車の上級グレード「XS」を追加。2018年5月には、ハイオク仕様のターボエンジンをレギュラー仕様に改良。当然ながら、エンジン性能は低下しますが、ここは経済性を優先。価格も約154万円からとスイフトとも競合する高コスパなのも魅力です。
……が、この2月の月販台数は95台と二桁止まり。
スズキの場合、SX4 S-CROSSやエスクードのように小型車の輸入車を(バレーノのほかにも多モデル)積極的に導入するいっぽうで、輸入台数については規模を決めておこなっています。
つまり当初の計画台数以上に売れても簡単に増車できない現実がある。
このため、輸入車の販売やPRがあまり積極的でないと受け取れる一面も……。
と思って計画台数を調べてみたら、2016年の登場時にスズキが掲げていたバレーノの販売目標台数は、年間6000台(月販500台)。売りたくてもクルマがないわけじゃなくて、売れないのか……。ちなみに直近1年間の累計販売台数は830台でした。お…おう…。
最新情報としては、今年3月にインドでマイナーチェンジが実施されているので、日本にもそう遠くないタイミングで改良型が上陸するでしょう。
■三菱ミラージュ 2019年2月販売台数 235台
初代デビューは1978年の三菱ミラージュ。現行型は6代目にあたり、2012年8月に日本市場デビュー。三菱のタイ工場で生産される
ミラージュが日本市場で復活を果たしたのは2012年6月のこと。
ボディのダウンサイズを図り、Aセグコンパクトの世界戦略車に生まれ変わりました。
「微笑みの国」タイで生産され、日本には輸入車として導入。ガソリン車トップクラスの27.2km/Lの低燃費と99.8万円からの低価格を武器に、唐沢寿明の「乗って! ミラージュ」という強烈なインパクトを残すCMを展開するもイマイチ活躍の場を見いだせず……。
2019年2月の月販台数は235台。2018年度で見ても2498台に留まり、アクアやフィットらライバルたちに大きな差を開けられています。
ただ細やかに改良が施されており、2013年10月には、一部改良を実施し、装備と価格のバランスを図った新グレード「S」を追加。2014年12月には、従来の1Lの3気筒エンジンに加え、最上級車として、1.2Lの3気筒エンジン車を設定。
2015年12月には、フェイスリフトを含む初のマイナーチェンジ。プレーンなグリルレスマスクから、グリル付きのオーソドックスなマスクへと変更し、エンジンも1.2L車のみに。低速域衝突被害軽減ブレーキを含む予防安全技術「e‐Assist」を標準化した上、さらにサスペンションやCVTの改良など全面的にブラッシュアップ。
しかし残念なことに翌年に燃費偽装が発覚し、同年中に燃費修正。2017年8月に内装など細かい点の仕様を変更して現行型となっています。
そんなミラージュですが、次期型は日産とのアライアンスによりマーチとプラットフォームを共用化する予定。フルモデルチェンジはやや先で、2021年以降と予想します。
■トヨタ スペイド 2019年2月販売台数 312台
2012年7月に、2代目ポルテの兄弟車(カローラ店とネッツ店の併売車種)として発売された
トヨタがユニバーサルデザインを取り入れて開発した小型実用車が(このスペイドの姉妹車である)ポルテ。ワゴンのような全高を持ちながら3ドアのショートボディとし、助手席側のみスライドドアを設けるなどのユニークな構造が特徴。
後席へのアクセスのよさと取り回しの良い小さいボディ、それでいて室内は広々という機能性の高さが、若いファミリーを中心に人気を博しておりました。デビュー時は。
そのポルテ、順調に売り上げを伸ばしつつ、キープコンセプトとなる2代目が2012年7月に登場。
そのときに初の姉妹車として用意されたのがスペイドです。ゆるキャラ風の愛らしいマスクのポルテに対して、スペイドはクールさを前面に打ち出しているのがポイント。やや強面で、軽自動車なら「カスタム系」といったところ。
もちろん、デザインやグレード構成以外はどちらも基本的に同じ。
デビュー3年後の2015年から細やかな改良が続けられ、商品力を高めています。
主な改良点を紹介すると、2015年は1.3L車を廃止して1.5L車のみに。2016年はトヨタの衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense C」を全車に標準化するなど安全性能を向上。
2017年には、スマートエントリー&スタートシステムなどを含む「スマートエントリーパッケージ」の標準化などを機能向上が図られています。
毎年特別仕様車も設定し、販売拡大を狙うも、この2月の月販台数は312台と寂しい。ちなみに姉妹車のポルテは好調なのかと調べてみると、こちらも同月450台とパッとせず……。
こちらはポルテ。初代は2004年に発売。助手席側に大型のスライドドアを装備しており、乗降性はクラストップレベル
ここまで販売数が低迷している背景には、2015年に登場した小型ミニバンの2代目シエンタや2016年登場の小型トールワゴンタンク/ルーミーの存在も影響していると見られます。
使ってみると想像以上に便利なポルテ&スペイド。その発想と経験は、ジャパンタクシーにも影響を与えていると思えるだけに、この現状は非常に残念。これからの時代、年老いた親御さんを送り迎えする機会にこういうモデルがあると大変便利です。ぜひ一度試乗してみては。
フルモデルチェンジの予定は今のところなし。ぜひ話題にしてあげてください!
■ホンダ レジェンド 2019年2月販売台数 37台
レジェンドの初代は1985年デビュー。現行型は5代目にあたり、2015年3月に日本市場で発売された。現在はハイブリッド専用車で車両価格は707万4000円のワングレードのみ
世界初の3モーターハイブリッドシステム 「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載したホンダのフラッグシップサルーンレジェンドは、2015年2月にフルモデルチェンジ。
独自の4WDシステムが生み出す鋭いコーナリングはスポーツカーを連想させるほど刺激的。
このシステムは同社のフラッグシップスポーツNSXにも採用されています。
2018年2月には初のマイナーチェンジを実施。
最大の変更点はフロントマスクのフェイスリフトで、大型ハニカムメッシュデザインを採用。同時にバンパー形状も改めることで、よりアグレッシブさを強調しています。
そんな改良型の発売から1年を迎えた2019年2月の月販台数はなんと37台!
あまりにも少ない。
ただホンダによると2018年2月~2019年1月の累計販売台数は1023台。改良型の年間販売計画は1000台を掲げていたので、なるほど目標達成といえます。ただ現行型発売時の月間販売計画は、300台であったことを思うと、ちょっと寂しく感じるのも事実。
営業目標と生産計画を立てて工場の稼働率を調整し、赤字にならないよう調整するのはとても大切なことです。レジェンドもきっと、「これくらい売れば損はしないだろう」という営業目標&販売計画なのでしょう。しかし月間37台はいくらなんでも少なすぎないか。もうちょっと目標を高く掲げて、そこを目指して挑戦したほうがよくないか。
もちろんそれにはお客さんがついてこなければならないわけで、それがいまのご時世とても難しいのは重々承知ですが……。高性能と装備を考えると、もう少し売れてもいいはずなんですけど……ね……。
★ ★ ★
今回ピックアップした車両の多くは、昨今の市場ニーズの影響を受けて、シェアが縮小しているものが多かったのも事実。
特にA&Bセグメントの登録車は軽自動車の台頭により大きな影響を受けているし、セダン人気の低迷の中で高級サルーンはさらに輸入車とも競合するため厳しい現実に直面しています。
また生産地が海外となるクルマは需要と供給のバランスの問題もあり、事情により積極的な展開が行いにくいという面もあるようです。
ただ本企画にあげたクルマたちを見ていくと、決して特徴や長所がないわけではなく、それぞれの魅力があります。簡単に言うと知名度が不足しているから売れない…という面も大きいのではないでしょうか。
そんなわけで、当サイトではこういうクルマを今後もばしばし取り上げてゆきたい。
たとえ世間からの関心は薄くとも、自身のニーズにぴたりと符合するクルマもあるでしょう。世の中の流れに惑わされず、自身の目利きを信じてみてはいかがでしょうか。それこそベストな愛車選びに繋がるでしょう。
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