■ポロベースのコンパクトSUV登場
世界的に爆発的人気を誇るSUVの勢いは、未だ留まることを知らないようです。コンパクトから大型までみっちりと競合のひしめくラインナップには、今や隙間がほぼないという、まさに雨後のタケノコ状態。
これからSUVを買おうと思っているユーザーは、その選択肢のあまりの多さに嬉しい悲鳴が止まらない状態がまだまだ続きそうです。
そんななか、堅実で実直なクルマづくりで人気の高いフォルクスワーゲンから、同社でもっとも小さなSUVがお披露目され、スペイン・マヨルカ島にて試乗会が開催されました。
それがポロをベースにした新型SUV「T-Cross(ティークロス。以下Tクロスと表記)」。これがまた、嬉しい悲鳴に拍車をかけそうな素晴らしい仕上がりになっているのです。
ボディーサイズは、全長4108mm×全幅1760mm×全高1584mm。本家ポロよりもほんの少し背が高く(+138mm)、ほんの少し長い(+54mm)という数字的にはわずかな差異ながら、ルックスはしっかりと“SUVしている”のがデザインの巧いところ。
サイズで見れば、直接のライバルは国産勢ならホンダ「ヴェゼル」、マツダ「CX-3」、日産「ジューク」あたり。輸入勢ではプジョー「208」、ジープ「レネゲード」、ルノー「キャプチャー」です。どれもこれも個性的かつ実力派揃いの強敵ばかり。
しかし、個人的にはTクロス、このような多彩なライバルを相手に、相当いい戦いをしそうだぞと。もっと直球で言えばこりゃ売れるぞと、直感的に思いました。
まずはデザインです。フォルクスワーゲンのSUVに共通したデザインソースはしっかりと継承されて、しっかりと分厚いボンネットにヘッドライトを両サイドに組み込んだ横一線基調のラジエターグリルで上質かつ実寸以上に大柄な雰囲気を醸し出しています。
さらに、印象的なのはリアビュー。ボディー横幅いっぱいに取られた水平基調のラインはリフレクター(反射板)で、その上下がブラックトリムされて、両端はテールランプと一体化するように繋がっているのです。
実際に、ブレーキを踏んだときに点灯するのは左右のライトのユニットだけで、このライン自体に発光体は埋め込まれておらず、先述の通りリフレクターに留まっていますが、それでも十分に存在感を示しています。
この、“リアのズバッと一本線”は、レクサスの「UX」なんかにも採用されていて、どうやら最近のSUVデザインの中ではひそかなブームのようです。左右の発光する部分であるリアライト自体の意匠もかなり凝っていて、後ろ姿にはかなりのコダワリのあとが見て取れます。
内装は、やっぱりポロとの共用部品が多く、質実剛健なフォルクスワーゲンのイメージを存分に反映したもの。しかし“デザインパッケージ”と呼ばれる上級パッケージや、スポーティーな“Rライン”を選択すると、上質かつポップなキャラクターをまとうのがまた魅力的です。
メインディスプレイは、8インチの最新世代のものが備えられ、また、試乗車にはメータークラスターの中にもナビやインフォテイメントを表示させられるデジタルメーターも用意されていました。おそらく日本導入モデルにもオプション設定されるはずです。
センターコンソールには、スマートフォン用非接触充電トレーも備えられUSBポートは4つ。ガジェットに親和性の高い若年層にアピールしまくっています。
■完成度のレベルは抜群
「コレは売れる」とおもった本当の理由、それは走りにこそありました。日本導入が予想されるのは1リッターターボの3気筒ガソリンエンジンで、本国には2種類の出力が用意されていますが、高出力のほうに7速デュアルクラッチDSGの組み合わせが来るのではないかと思われます。
最高出力は85kW/115ps。数字だけ見れば「え?たった1リッターターボ?たった115ps?」と思ってしまう気持ちはわかります。しかし、プレスリリースによれば0-100km/h加速10.2秒となかなかのもので、実際に走らせるとその頼り甲斐に感激すること間違いなしです。
試乗シーンは、空港のある島の左サイドから、ワインディングや小さな町を超えつつ高速道路を含めたルートで島の右サイドまで横断する、というものでした。
高速道路はきちんと整備されて日本の路面と同等、もしくはそれ以上に美しい舗装面でしたが、田舎町に入るとアスファルトは荒れ、路肩もほぼ取られていないほどの農道となります。
高速道路では、そのわずか1リッターのエンジンがもたらすパワフルな加速に驚きました。いや、パワフルというと語弊があるかもしれません。Tクロスのそれはフレンチ系のドッカンターボのような“踏み出しから背中を蹴られるようなターボを感じる”といった性格のものではなく、「あれ?気付いたらめっちゃスピード出てるやん!」的マイルドなトルクバンドなのです。
「あら、あなた繊細に見えて意外に頼りになるわね」なんです。だから、正直に言えばエンジン自体がメチャクチャ楽しい性格を持っている、って類いのモノではありません。
むしろ、市街地なんかでブレーキを踏んでからの低速での再加速、だいたい1800回転あたりからアクセルを踏み足して行くときなんかは、デュアルクラッチのあんまり良くない特性も悪さして、ちょっとスカスカ感を感じることも、またそのときのカラカラ音が気になることもあるでしょう。
しかし、そのネガティブをすべて凌駕して素晴らしいのが、サスペンションストロークの豊かさ、深さ、減衰の正確さなのです。
先述のスカスカ感のときも、ピッチさせずにキャビンはフラットなまま。田舎道のガタガタ舗装もスタタンスタタンと軽やかに乗り越えて見せ、しかも微塵も揺り返しを残さない。
コーナリングではその素直な性格を遺憾なく発揮し、ライントレース性が抜群。むろんスポーツモデルのようにガチガチに固めているワケではないのに、思ったようにスルスルとコーナーを曲がっていけるのですから、感動しました。しかも静粛性もお見事です。
この走りの仕上がりは、正直国産車にない完成度の高さのレベルにあります。「ああ、やっぱドイツ車ええわあ」となる、カッチリ感とスッキリしたハンドリングの妙、最高のバランスがちゃんとTクロスにも用意されていました。
ちなみに、導入予想価格は200万円台後半から。この戦略的なプライスタグなら、これ以上高くならないことを祈りながら、年内導入を待ちましょう。 【了】
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