■欧州で注目されているオールシーズンタイヤとは?
1月末に北海道旭川にある横浜タイヤの冬季テストコースでスタッドレスタイヤ勉強会・試乗会が行われたので報告したいと思います。
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今回のテーマはオールシーズンタイヤです。近年欧州でオールシーズンタイヤに注目が集まっているそうです。ドイツではここ数年でドイツ国内のタイヤ需要の10%を占めるまでに成長しているそうです。日本でも幾つかのオールシーズンタイヤが発売され注目を集めています。
ところで、オールシーズンタイヤとはどんなタイヤなのでしょう。
たとえば、サマータイヤを雪道で使うとツルツル滑ってとてもじゃありませんが危なくて走ることができません。逆にスタッドレスタイヤを真夏に履くとゴムがぐにゃぐにゃしてしまいシャキッと走ることができなくなってしまいます。
オールシーズンタイヤは、夏はサマータイヤ(一般的なタイヤ)のように使うことができ、走った感じもサマータイヤのよう。それでいて雪道でも走ることができ、通年を通してこのタイヤ1つで過ごすことができるタイヤなのです。
ポイントはタイヤのトレッドと呼ばれる、路面に接地している部分のゴムにサマータイヤとスタッドレスタイヤの中間くらいの特性のゴムを使っているのです。ゴムを夏寄りにするか冬寄りにするかはメーカーのさじ加減次第。どんなキャラクターのタイヤを作りたいかによります。
ドイツでは現在法律で冬季はウインタータイヤを履かなければならないことになっています。言葉の定義が難しいのですが、ウインタータイヤは広い意味でスタッドレスタイヤを含めた冬用タイヤと考えてください。
冬用タイヤの満たす要件は、欧州ではスノーフレークマークと呼ばれる山に雪の結晶をあしらったマークを取得していることです。オールシーズンタイヤもスノーフレークマークがついていればウインタータイヤと認められます。
つまりドイツでウケているのは、これまで夏はサマータイヤ、冬はウインタータイヤを履かなければならなかったのが、オールシーズンタイヤ1つで通年を過ごせるからなのだそうです。経済的というわけです。
ちなみに日本では「M+S」「スノーフレークマーク」「STUDLESS」のいずれかがタイヤに表記されていれば冬用タイヤとしてチェーン規制時にもチェーン装着しなくてもOKになります。
■実際の走行で感じたオールシーズンタイヤの実力
横浜ゴムでは2018年のジュネーブショーで『ブルーアース4S』を発表。欧州では2018年冬から発売されています(日本での発売は現在未定)。
さて、そのブルーアース4Sはいったいどのくらいの雪道性能を持っているのでしょう。
試乗した印象では、こんなに雪道で前に進んでくれるの? と思えるくらい前に進む力(トラクション性能)が強く出ています。同様にブレーキも効きます。多少滑り感はありますが、ほぼすべてのクルマにトラクションコントロール(タイヤの空転制御)やABS(アンチロックブレーキ)が標準装備されているので、無造作にアクセルやブレーキを操作しても、まあ安心して雪道を走れるくらいの性能を持っている、そういって問題ないとレベルにあると思います。
磨かれてピカピカになった圧雪路面や、氷の路面はだいぶ性能が落ちます。多少の抵抗感とか摩擦感はありますが、爪を立てて引っ掻くような引っかかり感は希薄です。
感覚的にはそう感じるのですが、アイスブレーキテストでは、20km/hからのブレーキでスタッドレスタイヤのアイスガード6が8mくらい、これに対してオールシーズンタイヤのブルーアース4Sは10m前後といった差にとどまりました。ブレーキに関しては予想以上に性能がよかったのにびっくりしました。ただし横方向のグリップ性能は期待できません。スラロームテストを行うとリヤタイヤが比較的容易に滑り出してしまいますから、やはり氷上や滑りやすい圧雪路では注意が必要といえそうです。
ドライ路面を試せなかったのが残念ですが、ドライ路面はほぼサマータイヤのように走れるはずです。ドイツでは一般道の制限速度が100km/hなので、優れた高速安定性・操縦性が求められるわけです。
最近のオールシーズンタイヤがドイツで受け入れられた背景には「夏しっかり走れる」性能が満たされているということがあります。そう考えるとブルーアース4Sのドライ性能もかなり期待できそうです。
では、そんな性能のいいオールシーズンタイヤをなぜ日本に導入しないのか…ですが、いくつか問題はあるようなのですが、一つには全国的に浸透したスタッドレスタイヤとの性能差があるようです。それから、走り方によって摩耗具合が大きく異なるので2、3シーズン目のウインター性能を保証はできない、ということも問題と考えているようです。
横浜ゴムでは「需要が高まれば発売する用意はある」そうですから、今後のオールシーズンタイヤの注目度や人気次第で発売される可能性もありそうです。
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