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業界ニュース 2019.3.9

今のマツダはなにがイイのか? 開発途中の新型マツダ3に乗って考える──北海道雪上試乗記

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2月末から3月の初め、マツダの雪上取材会が同社の冬季テスト場 「北海道剣淵試験場」で開催された。新型マツダ3の開発車両に試乗出来ると聞いて、筆者は勇躍、かの地に飛んだ。

カリキュラムは30分の座学から始まった。近年、マツダは“走る歓び”を追求しているという。なぜなら、「カーライフを通じて人生の輝きを提供出来ると信じているからである」と、車両開発本部の副本部長兼車両開発推進部長の松田健二さんから説明を受けた。

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“走る歓び”を追求している彼らが、人間中心の開発哲学を掲げるのはもっともなことで、その人間中心主義に基づくヴィークル・アーキテクチャー(VA)とヴィークル・ダイナミクス(VD) を進化させることで、新型マツダ3は質を飛躍的に高めた、と副本部長は続けて語った。ちなみに、VAとは車両構造を意味し、人間でいえば骨格系、VDは車両運動制御を意味し、人間でいえば神経系にあたる。

次いで、車両開発本部操安性能開発部(シャシーダイナミクス)の虫谷泰典さんから、VA(骨格)についてさらに説明があった。虫谷さんは歩行の研究からクルマの理想のあり方を考えた。そして、“人馬一体”の進化のために人間の持つバランス保持能力を最大限生かす。それには脊柱のS字カーブを維持するために骨盤を立てることが出来るシートが重要であり、ボーリングにたとえると、狙うべき「1番ピン』である、と虫谷さんは主張した。その意味するところは、最後の試乗4で明らかになるのだけれど、この時点の筆者には「ちょっとなに言っているのかわからないんですけど……」という状態だった。

座学の最後はおなじく操安性開発部(ヴィークルダイナミクス)の梅津大輔さんから、VD(神経系)についてプレゼンがなされた。新型マツダ3は、2016年に発表したGベクタリングコントロール(GVC)にくわえて、(1)AWDによる駆動力配分制御(i-ACTIV AWD)と、(2)ブレーキによるモーメント制御(GVCプラス)を一体化し、統合制御するという。

ただし、今回、このふたつの統合制御を持つ車両、すなわち新型マツダ3のAWDは間に合わなかったため、(1)と(2)のシステムを別々に備えた車両を用意した。これが合体したらどうなるかを想像してみてください、という内容のことを梅津さんは語った。

こうして、4つの組に分けられた、筆者を含む参加者たちは80分ずつ時間が確保された4回の試乗に臨んだ。筆者の組は、新型マツダ3セダンのFWD(前輪駆動)モデルの試乗から始まった。パワートレーンはスカイアクティブ-G(ガソリン)2.0と6ATの組み合わせである。

白黒市松模様のため、カタチはよくわからないけれど、旧型と並んでいる姿を見ると、新型はちょっとだけ大きくなっているのがわかる。北米仕様のデータによると、2725mmのホイールベースはプラス25mm延び、セダンは全長がおよそ70mm長くのびやかになる一方、ハッチバックは10mm短くなっている。

運転席に着座すると、速度計と回転計が眼前に配置された、古典的かつシンプルなスポーツカー流のコクピットであるのに好感を持つ。このあと乗った先代のインストゥルメンタル・パネルは回転計が1個あるだけのひとつ目小僧状態で、いささかさみしい。新型はスポーティ度と上質感がグッと増している。

試乗1は雪上特設コースにて、この新型マツダ3で、先代マツダ3の後ろをついて走る。その際、お尻をシートの奥まで入れて、骨盤を立てて座る。新型マツダ3は、脊柱S字カーブを維持し、骨盤を立てやすいように大腿部の高さが調整可能なシートが全車標準装備されている。

正しい姿勢でドライブしたあと、お尻を前にちょっとズラしてもう1周する。これによって骨盤を立てることの大切さを実感してもらうというのがマツダの狙いで、ご丁寧に運転中の様子が動画で撮られ、アクセルとブレーキの操作が記録された。

前走車はときどき急に停止したりして、都市内の交通環境を再現するようなパターンで走る。こちらはぶつかってしまわないように、前方を注視する。せっかくの新型マツダ3の試乗なのに、ゆっくり走る旧型のうしろをトロトロ走っているだけではよくわからない。なんのためにこんな運転をさせるのか。正しい運転姿勢がスムーズなドライブを生む、なんていうのは基本のキ、イロハのイではないか、とこのときは思うのであった。

そのあと、ゆるやかな坂道を含む雪上コースで、新型と旧型の乗り較べができた。旧型は乗って走り出してすぐの一旦停止の際、ブレーキの立ち上がり方がぜんぜん違っていた。今回の取材会は、マツダの開発者がつねに同乗(助手席)していたので、あ、ブレーキがぜんぜん違う、と申し上げると、「ありがとうございます」という声が返ってきた。

新型は踏み始めると、ごく自然に応答する。即座に減速Gが立ち上がるのだ。旧型は一瞬、空走する。永遠にブレーキが効かないかも……と、一発目のブレーキではほんの一瞬、不安になった。比較対象があらわれると、新型のブレーキ・フィールのレスポンスのよさが浮き彫りになった。

乗り心地も、旧型は底づき感があって、その点、新型はしなやかに思えたけれど、雪上路というのは意外と凸凹が多いみたいで、新型だってけっこうコツコツと上下に揺れる。

これもそのように助手席のひとに申し上げると、路面の状況をドライバーに知らせるために、あえてそうしている、という答が返ってきた。

試乗1のまとめとして一旦、教室に戻り、骨盤を立てたときとズラしたときの運転の違いを記録した動画で見せてもらったあと、筆者はマツダのエンジニアのひとたちに声を大きくして訊ねた。正しい運転姿勢の重要性に気づいたなんて、あまりにいまさらではないか? 正しい運転姿勢の重要性に気づいて、あなたがたはどういう改良を車両にくわえたのか? そこを具体的に教えてほしい、と。開発者のひとりが答えた。

「シートを変え、ボディ剛性を変え、オートマチックの制御を変え、アクセルペダルの形状を変え、ブレーキの制御、具体的にはブースターのプログラムを変えた。クルマが自然な動きになるように全体をコーディネイトした。クルマが馬のように一体のものとして動くように。その結果、新型マツダ3は大きく進化した」

続けて、「いままでのステップがこのぐらいだとすれば、新型はこのぐらい」、と言って手を大きく伸ばした。さらに個々の技術についてはこれからの発表をお楽しみに、というので、筆者は素直に次の授業へと向かった。

試乗2は、現行「CX-3」の欧州仕様(2.0リッターエンジン搭載車)で、「i-ACTIV AWD」と呼ぶ最新4WDについて体感する内容だった。ホントは新型マツダ3のAWDを用意したかったけれど、間に合わなかったそうだ。そこで、開発用のCX-3が登場した。試乗車は、ワイパーのスイッチで前後トルク配分を制御する電子カップリングのプログラムの新旧を切り替えられるようになっている。

進化したi-ACTIV AWDは、ステアリング、エンジン、ブレーキの統合制御によって、前後トルク配分の制御をより緻密にしている。たとえば、ターンインのときにAWDはなにもしない。「GVC(Gベクタリングコントロール)」の荷重移動を優先する。ちなみにGVCとは、コーナーの手前でエンジンの出力を微妙に落とし、フロント荷重にすることで前輪のグリップ力をあげて曲がりやすくするシステムである。定常旋回時は、GVCが働かなくなってリア荷重になると同時に、リアのトルクを増やしてフロントのトルクを減らし、アンダーステアを抑制する。ターンアウトでステアリングを直進に戻すと、リアからフロントにトルクを戻す。さらにピッチング方向の姿勢制御やアクセルで曲げるサポートもする。

話を戻すが、i-ACTIV AWDの前後トルク配分は、静止状態が60:40で、状況に応じ50:50に変わる。FWDベースのAWDとしては珍しく、多少のドリフトも可能という。

i-ACTIV AWDのプログラムを、新旧切り替えながら、(1)50~60km/hでのレーンチェンジ、(2)定常円旋回、(3)「山岳路」と呼ぶコースを走る。(1)と(2)の場合、AWDを旧制御にすると、カマボコの板が激流に流されるごとくにアンダーステアが出まくるのに対し、新制御ではなにごとも起きない。山岳路でもきわめてスムーズで、「こんなに違うんだ」と、驚いた。

AWDの制御プログラムの違いだけで済む話だったら、現行CX-3のオーナーも書き換えればいいのでは? と、助手席の開発者にたずねると、「従来、バラバラだった電子制御のパーツを、新型ではひとつのコントロールユニットにまとめており、ようするにハードも違うからそれはむずかしい」と、教えてくれた。

お昼をはさんで、試乗3のテーマは「GVC(Gベクタリングコントロール)の進化」だった。車両は、新型マツダ3セダンの北米仕様(2.5リッターガソリンエンジン)で、助手席に開発者が乗り込み、パソコン操作で「GVCプラス」のオン/オフを体験する。

GVCが、コーナーの手前で作動し、曲がりやすくするためのエンジン制御であるのはすでに述べた。GVCプラスはさらにコーナー脱出時、フロント外輪のブレーキを軽く“つまむ”ことで車両がまっすぐになる手助けをする。

ターンインの際、フロント内輪にブレーキをかけて、より曲がりやすくする制御を取り入れているメーカーは多々ある。けれど、その方法では次のコーナーを予測するのがむずかしい。ターンアウトだったら、舵角をゼロに戻したときに作動させてやればいいから簡単だ。ブレーキによるモーメント制御はステアリングを戻すほうに使うのがベスト、というのがマツダの主張なのである。

GVCプラスの威力はたいしたもので、定常円旋回ではほとんどAWD並みの安定感で周回できる。あまりになにごとも起きないので、オフにしてもらって、わざとアンダーを出して、アクセルオフでオーバーステアにして、せっせとステアリングをぐるぐるまわすほうがおもしろいと思ったりした……。

それから山岳路と周回路と呼ばれるコースを、おなじ新型マツダ3セダンと旧型アクセラ(国内仕様)ハッチバックの1.5リッターディーゼルで乗り比べた。新型マツダ3が搭載する2.5リッターのガソリンエンジンは、ディーゼルの1.5リッターエンジン並みのトルクを持っていて、かつ高回転までスムーズで、よく走る。ディーゼルは中低速トルクが豊かで、そこは大いに魅力だ。けれど、上までまわしたければガソリンがいい。

周回路では80km/hぐらいまで加速でき、新旧の差がよくわかった。新型から旧型アクセラ国内仕様に乗り換えると、なんだかCX-3に乗っているような気がした。着座位置がちょっと高いような、ちょっと不安定な心持ちがしたのだ。

最後の授業、試乗4の教室前ドアには、「虫谷医院 バランス科」と、書かれた紙が貼ってあった。なかに入ると、虫谷泰典さんが待っていた。机の上には脊髄の模型が置いてある。そして、その机の横に、「ながらウォーク」と呼ぶ通販で買った「骨盤運動器具」が、置いてあって、筆者たちはその不安定なイスに座らされた。

イスがグラグラ動くと、人間は反射的にバランスをとろうとする。それを確認したあと、屋外に場所を移した。かねて用意してあった助手席を取っ払って「ながらウォーク」を装着した新型マツダ3ハッチバックの欧州仕様(1.8リッターディーゼル)と、旧型のサウジアラビア仕様(2.0ガソリン)の助手席比較インプレッションをした。

試乗車は、歩くような速度で雪上を走り、ゆっくりと曲がり、ゆっくりと凸凹を通過する。旧型では、バランスをとるのに両腿が痛くなる。なぜ両腿に力が入るのかはよくわからない。虫谷医院の先生によれば、人間は不安定になったとき、前側の筋肉に力が入るものらしい。

かつて虫谷さんはサッカーの試合中、膝をケガして数カ月リハビリに取り組んだという。このとき、理学療法士の先生から『観察による歩行分析』という本をもらった。本には、「人間の身体は骨盤を真ん中にし、上半身をパッセンジャー、下半身をロコモーター(歩行運動)と呼ぶ」と、定義されていた。人間は骨盤の上に乗っかっているパッセンジャーなのだ、という理学療法士の常識に虫谷さんは驚嘆する。

歩行しているとき、人間の頭は上下方向に50mm、横方向に20mm動いている。それでも私たちは目線が揺れるとも思わず、酔ったりもしない。自動的にバランスをとっているからだ。その状態をクルマで実現させてやればいい。それには脊髄のS字カーブを維持するようなシートが必要だけれど、S字を維持するのは簡単で、骨盤さえ立っていればいいという。

従来のシートは、ランバーサポートでむりやりS字カーブになるようつくっていた。これだと、腰椎で“3番目のフラット”と、呼ばれている骨をロックするため、そうなるとそこから上の自由度が効かなくなるという。正しい運転姿勢をとらなければ、正しい運転ができないのは当たり前だ、と、私は思っていたけれど、なぜ正しい運転姿勢をとらなければ正しい運転はできないのか、その理由にまで私の考えはいたっていなかった。

虫谷さんによると、従来のマツダ3(日本名:アクセラ)は、路面からのショックのピークをおさえるべく、フロントのサスペンションは柔らかく、リアは硬くしていた。そうすると、たとえば段差を越えるとき、人間は前輪への入力から0.04秒後に後輪への入力の大きさを推測していたという。ところが、後輪サスペンションは前輪と硬さが異なるため、直感的に推測した後輪への入力と、実際の後輪への入力にズレが生まれていた。このズレが不快さに通じるそうだ。

そこで新型マツダ3は、前後方向のコンプライアンスを少なくし、硬さを平均よりあげて、ズレが生まれないようにした。入力のピークは大きくなっているという。それなのに、骨盤を立てて、上半身を自由に動かしているから苦にならないし、予測と一致するから、全体にしなやかになっている、とさえ感じる。

ねじり剛性そのものはさほどあがっていない。ステアリングのギア比はスローになっている。ただし、足まわりが硬くなり、かつロール角も少なくなっているせいか、スッと動かせるので、レスポンスがあがっているように感じる。マツダの掲げる「人間中心の開発哲学」の、奥深さに筆者は猛烈に感動した。

終了後、それでも筆者はひとつの疑念がぬぐえなかった。新型マツダ3はなるほど画期的である。マツダ新時代の夜明けを告げるものであるかもしれない。けれども、パワートレーンは先代からのキャリーオーバーではないか。トランスミッションはいまどき6速オートマチックでしかない。100年に一度の大変革期に、この程度の進化でいいのだろうか? 

筆者はすっかり忘れていたのだ、「スカイアクティブ-X」の存在を! ガソリン燃料を、ディーゼルのように圧縮して着火・燃焼し、現行ガソリン・エンジンに対してトルクを最大30%、燃費を20~30%向上させる、ガソリンとディーゼルのいいとこどりの次世代エンジンである。

ただし、このスカイアクティブ-X、発売はもうちょっと先になるらしい。それでも、である。新型マツダ3が大いに期待できることは間違いない。ヒロシマの夜明けは近い。

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