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業界ニュース 2019.3.7

スバル STIの「安心と愉しさ」はかくしてこうして造られる

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スバルSTI先端技術 決定版 Vol.28

毎年恒例の自動車技術会モータースポーツ部門委員会が主催するシンポジウムが2月に開催され、スバルのモータースポーツ、市販車へのフィードバック、そして安全と愉しさを伝えるクルマづくりについての講演があった。

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講演はSTIのモータースポーツ技術統括の野村章氏が行ない、ニュルブルクリンク24時間レースへ挑戦するWRX-STIを題材にした分かりやすい講演だった。それは、市販車をベースとしたモータースポーツ用マシンづくりによって得られる知見、技術的ノウハウは、再び市販車へフィードバックすることができ、それが安心や愉しさに繋がっているという話だ。しかし、そうした説明は言葉では理解できるものの、具体的にはどこがどう繋がっているのか、いまひとつピンとこない。が、今回の講演によって曖昧な理解がスッキリとできたのだ。では、早速その講演の一部をお伝えしよう。

量産車へのフィードバックとは

スバル、STIのモータースポーツは市販車をベースとした車両をレース用に改造し参戦している。そこで生じてくる様々な問題、課題を解決することで、再び量産車へ、時にはSTIのスペシャルモデルなどへフィードバックするという流れがある。したがってレース車両を製造する技術も量産車製造も基盤技術は同じものである、ということだ。

そうした考え方の中でニュル参戦マシン開発における技術課題の例として、遅れのない操舵応答と素早いリヤグリップ、バネ上の動きの抑制、接地性および乗り心地のポテンシャルアップ、高負荷長距離走行でのタイヤグリップ改善(レース車特有)、そして シミュレーション、ベンチテストの技術力という課題を挙げていた。

例えば操舵応答という課題では、人は思い通りにクルマがコントロールできれば、運転の楽しさを感じ、素早いリヤグリップが得られれば、安心に繋がる。また、バネ上振動の抑制、つまり無駄なボディの揺れがなければ安心感へと繋がるというわけだ。これはレースカーでも量産車にも共通するものということだ。

遅れない応答性の解析

ステアしたら即座に動く。しかも安心と愉しさも兼ね備えた俊敏な動きとは?これを野村氏は、3つの項目に分けて説明していた。
1:基本諸元の影響・・・低重心、低慣性モーメント。
2:過渡の操舵応答・・・水平対向エンジン、エンジンマウント。
3:過渡のリヤグリップ・・・タイヤ、サス剛性、ヨー瞬間中心、リヤサスペンション。
といった3項目に分け、それぞれの要因を考える。

そもそも操安性能とは質量のあるものを動かす技術だという大前提で、その慣性を知ることが大切だという。WRXのマシンを慣性計測器で計測する。これはマシンをテーブルのような台上に乗せて、クルマを揺らす。その時のマシンの揺れ方と重心高を計測する。

そしてグラフで示すが、ヨー慣性モーメントをホイールベース長と質量で割った数値を横軸にとり、トレッド長を重心高で割ったものを縦軸で表示してみる。すると回頭性と安定性が数値で見え、あるポイントを目標値と定めて、その目標値に持っていくには、具体的に何を改造すべきか?という指針になるというわけだ。これをマシンの諸元にどう取り入れていくのがいいか?を熟考し、具体的な取り組みが行なわれる。

例えば、WRX-STIにおける低重心化では水平対向エンジンとコンポーネントの低位置化、ルーフの材料置換(カーボン・ルーフの採用)による軽量化を行なうということになる。また、回頭性の指針となる数値は1を基準に考え、1より大きい、小さいで対策が異なってくることがわかる。これを正規化ヨー慣性モーメント(又はダイナミックインデックス)と表現。その正規化ヨー慣性モーメントに対してはAWDの軽量化、前後端部の材料置換による軽量化といった手法で課題を解決していく。

一方で、エンジン質量も操舵の応答性に大きく影響する。エンジン付き2輪モデルを使った解析では、時間軸のステップ応答においてエンジン質量増で車両のヨー過渡応答がオーバシュートし、エンジンマウントの剛性が不足しても同じ傾向になる、というグラフができる。さらに車両のヨー共振とエンジン共振が接近しても同じ傾向で、つまりエンジンマウントが柔らかくてもエンジン質量が重くても、操縦安定性はオーバーシュートする、ということが検証できる。結果、車両のヨー共振とエンジン左右共振をいかに離すか、ということで操縦安定性が良くなることが見えてくる。

そして横軸に周波数、縦軸にロールゲインで見ると量産車はロール左右共振とパワーユニット左右共振が離れているので、操縦安定性は達成しやすいが、ニュルマシンのWRXはサスペンションやタイヤも硬いので、左右ロール共振が上方に上がってしまい、エンジン左右共振と連成して、過渡応答への影響が大きくなる傾向だとわかる。そのため改善が必要なことがわかったのだが、実は、縦置き低重心の水平対向エンジンなので、操縦安定性に対する相性が良く、それほど苦労せず操舵応答に優れたエンジンマウントにできたと説明していた。

リヤグリップを上げるということは

3つ目のリヤタイヤのグリップは安心感に繋がる重要なものだが、リヤサスペンションの横剛性を考慮した操縦安定性解析では、タイヤやサスペンション横剛性を硬く、柔らかくするとどうなるのか?といった検討をする。これは前述のダイナミック インデックス(正規化ヨー慣性)で1より大きい、小さいでリヤのグリップが変わってくることがわかり、1より小さければ回頭性やリヤのグリップが良い、ということも見えてくる。

具体的にはサスペンション横剛性やダイナミックインデックスを考慮しながらクロスメンバーやサブフレームといった重要部品において高剛性化と軽量化を行ない過渡の操舵応答性と安定性を向上させている。また、リヤサブフレームはラリー用の専用ユニットを基本に改善を織り込み、リヤグリップを最適化する設定としている。さらにリヤサスペンションのアーム長は長さを調整式として、実走でのドライバーからのフィードバックに対応するようにしてある。

そうした中でドライバーが安心、愉しいと感じるポイントを最適解として探し出すという取り組みを続けていくわけだ。

そして、マシンづくり、量産車づくりにおいて重要なのは、正確に試験をし、データを収集する。そこから課題解決の対策のためのデータ作りが可能となり、具体的な対策を施していくという工程で作られていることがわかった。

また、講演では操舵応答、リヤグリップ、ヨー慣性モーメントといったものだけではなく、車体剛性の解析、振動解析、そして空力などの検証も報告され、シミュレーションやベンチテストの重要性、そしてモータースポーツから得られた知見は、未だ解析し切れていない部分が数多く存在することなどを説明し、こうした研究がスバルの安心で愉しいクルマづくりに繋がる技術であることも理解できた。そして、レースカーからのフィードバックが大きいということも伝わってきたのだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

スバルSTI先端技術 決定版 Vol.28

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(Auto Prove 高橋 明)

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