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第10回: ザ・スティングレイ – C2コルベットは如何にして誕生したか?

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第10回: ザ・スティングレイ – C2コルベットは如何にして誕生したか?

今年2019年のフルモデルチェンジにて、エンジン搭載位置をついにミッドシップ化するというドラスティックな進化を果たしたことにより、文字どおり世界的な話題を呼んだシボレー・コルベットは、まさしくアメリカンスポーツカーの金字塔と言えよう。栄光の歴史を辿ってきた歴代モデルの中でも、'63年モデルとして1962年秋にデビューした「C2」こと第2世代は、ここ数年のクラシックカー・マーケットにおいて世界的なブームとも言うべき超人気モデルと化している。

この2代目コルベットの誕生について語るには、ひとりの有能な若手エンジニアの存在を欠かすことはできない。その名を、ゾーラ・アーカス・ダントフという。ベルギー生まれの彼はエンジニアとして非凡であっただけでなく、学生時代からアマチュアレーサーとして活躍していた生粋のエンスージアストでもあった。

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ダントフは、当初アンダーパワーな6気筒エンジンのみのラインアップだった初代コルベット(C1)の車体に大幅なモディファイを加えて、エンジンコンパートメントにV8ユニットを詰め込むスペースを確保、1956年モデルから正式にV8搭載バージョンを追加し、動力性能の低さで苦戦していたC1コルベットの苦境を救った人物である。そして彼が、同じくC1をベースとして仕立てた一連のレース向けモデルこそが、のちのC2のテクノロジー的バックボーンとなるのだ。

さらにここで、もうひとりのキーマンが登場する。「ラリー・シノダ」の愛称で知られる日系アメリカ人デザイナー、ローレンス・キヨシ・シノダである。当時の日系人の例に漏れず、第2次大戦中には辺境の収容所に強制移住させられ、正規の教育を受けるチャンスを失ってしまったラリーだが、若き日から持ち前の才能を発揮した彼は、フォード社およびパッカード社を経て1956年にGMに入社した直後から、めきめきと頭角を現してゆく。

そして、第2次大戦後間もない時期から1970年代までGMデザインチームを率いた伝説的デザイナー、ビル・ミッチェルの指揮のもと、ラリー・シノダがデザインワークを担当し、1961年に発表されたコンセプトカー「XP755マコ・シャーク」は、ダントフが1959年に手掛けたサーキット向けコルベット・プロトタイプの一つであった「XP-87スティングレイ・レーサー」とともに、C2コルベットの実質的なプロトタイプとなったのである。

1962年9月、C2ことコルベット・スティングレイは、当時のアメリカ車としては珍しく、パリ・サロンにて「1963年モデル」としてデビューを果たした。初めて正式な車名となった「スティングレイ」は、もちろんスティングレイ・レーサーから採ったもので、誕生に至る経緯を如実に示していた。

ちなみに、同じ1962年のパリ・サロンでは、かの名作「フェラーリ250GTベルリネッタ・ルッソ」も発表されている。本場ヨーロッパの最新スポーツカーが犇めくこのショーをお披露目の舞台に選んだことになるが、それはまさにダントフやミッチェル、シノダたちコルベット開発陣の自信の表れと言えるだろう。
シャシーフレームは初代C1と同じくラダー式で、ボディパネルの材質も初代と同様のグラスファイバー樹脂製。しかし、すべてが完全な新設計であった。

サスペンションは北米ビッグ3メーカー製量産モデルとしては初となる4輪独立懸架を採用、フロントはダブルウィッシュボーン+コイル、リアは長らくコルベットを特徴づけることになる横置きリーフ式であった。また、エンジンの搭載位置をフロントミドシップとすることで、前後の重量配分にも充分に配慮してあった。加えてブレーキは、発売当初こそ4輪ともに当時のアメリカ車のデフォルトであるドラムだったが、’65年モデルからは一足飛びに4輪ディスクへと格上げされることになる。

そして、パワーユニットは初代C1で苦戦を強いられた教訓から、よりハイパワーなV8エンジンのみに限定。スモールブロック(327cu.in.=5358cc)にはチューンの違いで250~340psの4種が設定された上に、レーシングユースを見越したラムエア式燃料噴射版(SAE規格360ps)も用意された。トランスミッションは4速マニュアルが標準だが、250psバージョンには2速ATもオプション設定されていた。
また65年モデルからは、ついにシボレー自慢のビッグブロックV8(396cu.in=6489cc)も設定し、さらに翌66年以降のビッグブロックは427cu.in.まで拡大されるに至る。

一方、21世紀初頭のC5時代までコルベットのアイデンティティとされたリトラクタブルヘッドライトを初採用したスタイリッシュで未来的なボディについては、ビル・ミッチェルのマネージメントのもと、ラリー・シノダの主導でデザインされたとされる。

しかし、そのじつ、ACコブラのクーペ版「デイトナ・コブラ」や日野自動車のレーシングスポーツ「サムライ」を手掛けたのち、ダットサン240Zやブルーバード510を擁して北米のレースを闘った「BRE」チーム主宰として日本でもその名を知られるピート・ブロックが、1957~63年のGM在籍時代に深く関与した、との説が濃厚とされている。

そしてボディタイプは、マコ・シャークのスタイルを忠実に再現したコンヴァーティブルに加え、ピート・ブロックが1957年製作のクレイモデル「Q-コルベット」で提唱したと言われる先鋭的なスタイリングのクーペも用意されることになった。

ちなみに、デビューイヤーの63年型クーペは「スプリットウィンドウ」と呼ばれ、中央で2分割されたリアウィンドウを採用していたが、発売直後から後方視界の悪さが指摘され、翌64年モデル以降のクーペは一体型リアウィンドウに変更されることになった。

そして、当時の北米ビッグ3メーカーの慣習に従い、1967年には68年モデルとして3代目コルベット(C3)が誕生する。結果として5年足らずしか生産されなかったC2コルベットだが、総生産台数は11万7966台(クーペ4万5547台/コンヴァーティブル7万2419台)と、生産期間の短さを考慮すれば充分な成功と評されるべき成果を達成したのである。

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