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業界ニュース 2019.2.27

なぜフロント3人掛けシートの車を見なくなったのか

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クルマにおいて最近めっきり見なくなったものの1つとして、前席3人掛けシートというものがある。前席3人掛けシートはシフトレバーをステアリングコラム(ハンドルを支える支柱)やインパネに配置することで前席に3人が座れ、2列シート車なら6人、3列シート車なら合計9人が乗れるというもの。横につながった前席はよくベンチシートと呼ばれ、特にコラムシフトの場合には略して「ベンコラ」とよく言われており、懐かしさを感じる方もいらっしゃるだろう。文・永田恵一

なぜフロント3人掛けシートの車を見なくなったのか

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私事になるが、思い出してみると20年ほど前まで筆者の実家にも業務に使っていたタウンエースバンのベンコラ、しかもMT(今突然乗ることになったら、シフト操作がちょっと難しくすんなり運転できる人は少ないかもしれない)があり、乗っていた父は「前席に3人乗ることはあまりないけど、中央席にものが置けて便利だった」とよく言っていた。
シフトレバーの位置はともかくとして、以前前席3人掛けのクルマは一人でも多くの乗客を乗せたいタクシーや現代のミニバンに相当する1BOXカーによくあり、1BOXカーがミニバンと呼ばれるようになってからもシートが独立する形の前席3人掛けのクルマとして、ホンダ エディックスやフィアット ムルティプラ(イタリア)という例があった。
しかし現在はというと、前席3人掛けはミニバンや乗用車はもちろんタクシーからも姿を消し、トヨタ ハイエースと日産 キャラバンの商用バンにあるくらいである。ではなぜ、前席3人掛けのクルマを見なくなってしまったのだろうか。


衝突安全性、居住性のバランスの悪さ

現代のクルマにはそれなりの衝突安全性が要求される。具体的に言えば3点式シートベルトやヘッドレストの装着だ。だがベンチシートの場合は前席中央に3点式シートベルトやヘッドレストの装着が難しい面がある。
そのため前述したエディックスやムルティプラといった、中央席に3点式シートベルトやヘッドレストがある前席3人掛けというクルマもあった。しかし中央席にも相応の快適性を持たせるにはそれなりのシート幅や左右の乗員との間隔が必要で、そのためにムルティプラは1,870mmという広い全幅、エディックスは中央席を後ろにスライドさせVの字のように座らせるという方法を取った。
しかし現代はここまでしなくとも5ナンバーサイズで3列シートを設け、6人ないし7人がそう不満なく乗れるトヨタ シエンタやホンダ フリードのようなクルマができる時代になっている。そのあたりを総合的に考えると、ミニバンを含めた乗用車で"そこまでして前席3人掛けシートにするメリットはほとんどない"というのは否めない。
そのため、衝突安全性や居住性に対する要求が低い商用車であれば、1人でも多く乗れるというメリットもあるため(これも考え物なところはあるが)、前席3人掛けが存続しているのだろう。


ウォークスルーができない

ミニバンでは1列目や2列目シートが独立していることにより、車内の中央部分を通路のように使えるウォークスルーは狭いところでの乗り降りやシートへのアクセスの際に便利で、今では当たり前となっている機能だ。当然ながら前席3人掛けシートでは1列目からのウォークスルーはできなくなってしまうので、これも前席3人掛けシートを見なくなった理由の1つだろう。
このように前席3人掛けシートを見なくなった理由には納得できる部分もあるが、乗車定員が増え、前席3人掛けシートは仲の良いトリオや家族で座ったりすると楽しげな雰囲気があるのも事実だ。
課題も多いであろうため無責任な書き方にはなるが、メーカーのどこかが乗用車の前席3人掛けシートをまた出してくれると、日本車のクルマがちょっと楽しいものになりそうな気がする。

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