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スーパーカーを使った贅沢なレッスンは雪の上で──アストンマーティン・オン・アイス体験記

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スーパーカーを使った贅沢なレッスンは雪の上で──アストンマーティン・オン・アイス体験記

アストンマーティンで雪上をドライブすると聞いて、あなただったらどんなイメージを持つだろうか?

ジェームズ・ボンドも愛する世界でいちばんダンディなブリティッシュ・スポーツカーがアストンマーティンだけれど、正直、スノードライビングのイメージはあまりない。そもそもアストンマーティンの特徴であるフロントエンジン・リアドライブのレイアウトは滑りやすい道が苦手というのが一般的な見方である。そんな漠然とした不安を抱きながら、私は帯広行きの飛行機に乗った。

第6回:ボンド・カーになったアストン・マーティン

今回参加したスノードライビングイベント「アストンマーティン・オン・アイス」は、一般ユーザー向けのイベントである。アジア太平洋地域において2016年、ニュージーランドで始まった。日本での開催(北海道「十勝スピードウェイ」)は、2018年に続いて2回目だ。

サーキットが舞台といってもレーシングコースを使うわけではない。整備が行き届いた駐車場やパドックのある圧雪コースを用意し、そこをアストンマーティンの最新モデルで走るという趣向だ。料金は85万円である。正直、私のような庶民には手が届かないけれど、この料金にアストンマーティンの使用料、ランチを含む会場での贅沢なホスピタリティ、高級旅館での宿泊代(しかも2泊分)も含まれていると聞けば、むしろリーズナブルと思えてくるだろう。

会場に着いて、私が漠然と抱いていた不安は霧消した。なぜなら、全モデルともスパイクタイヤを装着していたからだ。

日本では20年近く前、粉じん公害を引き起こすとして、一般道でのスパイクタイヤの使用が禁止された。しかし、雪上や氷上を走る限り粉じんを巻き起こすことはなく、クローズドコースの使用であれば法律違反にも問われない。

それにも増して重要なのがスパイクタイヤのグリップ力だ。いくらスタッドレスタイヤの性能が上がったといっても、氷上性能はスパイクタイヤに到底かなわない。しかも、スパイクタイヤは滑り始めてからも粘るようにグリップ力を発揮してくれる。一度滑り始めるとグリップの回復に苦労するスタッドレスタイヤとは、この点が決定的な違いだ。

滑り始めてからの特性はドライ路面やウェット路面を走っているときにむしろ近く、しかも雪上や氷上では通常のドライ路面やウェット路面よりもはるかに低いスピードでタイヤがスライドし始めるため、通常の舗装路で役に立つテクニックを雪上で安全に習得出来るのだ。

用意されたコースは定常円旋回、8の字スラローム、スラローム、ハンドリングコースの4種類だ。しかも、ただ漫然とそこを走るだけでなく、桂伸一さんを筆頭とする腕利きジャーナリストのインストラクションを受けられるのだから、実力がメキメキと上がるのは保証されたも同然である。

とりわけ効果的と思われたのが、ドライビングの問題点を無線により、リアルタイムでアドバイスしてもらえる点だ。この手のイベントは、走り終わったあとでアドバイスを受けるパターンもあるけれど、この場合、本当に悪かったところがわかりにくい。

ところが「いまのはちょっとアクセルの踏み方が大きかったよね」とか「カウンターステアが少し遅かった」などとその場で指摘されると、「ああ、そういえばアクセルの踏み方が乱暴だったかもしれない」、「なるほどカウンターステアの切り始めがいまは遅かった」など、具体的にどこか悪かったかがわかりやすい。

私の場合、スロットルペダルの踏み方にくわえ、戻し方に関する指摘を受け、自分なりに修正を試みたところ、これまで苦手だった定常円旋回がなんとなく出来るようになった。

定常円旋回とは、決められた円の周りをグルグルとまわるだけだけれど、雪の滑り具合や微妙な傾斜の違いによって、ステアリングやアクセルをデリケートに操作しないと一定のドリフト状態が保てない。つまり、ドライビングとしてはとても繊細なコントロールが求められるのだ。

ところが今回、いままで長いこと運転していてどうしてもできなかったこのテクニックが身についたのだから、インストラクターの桂さんにはどれほど感謝してもし足りないくらい。私と桂さんは、普段、一緒に新型車を取材する仲だけれど、アストンマーティンのワークスドライバーとしてニュル24時間に出走するなど桂さんのドライビング・テクニックは確か。今回、桂さんの指導を受けられて本当に幸運だった。もちろん、ほかのインストラクターも腕利き揃いである。

十勝スピードウェイが舞台のアストンマーティン・オン・アイスには今年もたくさんのファンが参加した。そのうちのふたりに話を聞いてきたので、ここでちょっと紹介しよう。

最初にインタビューしたMさんは、アストン・ファンのあいだではとても有名なコレクターだ。ただし、ただクルマを集めるだけではなく、サーキットなどでそれらを思いっきり走らせるところがMさんの素晴らしい点だ。「正直、このイベントにはあんまり関心がありませんでした」と、Mさん。「でも、知人から『ドライビングに自信がないのなら雪の上を走ってみるといいよ』と、言われて参加することにしました」。

実際、雪上をアストンで走った印象について訊くと「難しいですねえ。やろうとしていることと、本能で身体が動いてしまう部分との折り合いがなかなかつきません」と、語りつつも「とにかく楽しかったし、また出てみたいと思います」と、来年の参加に早くも意欲を燃やしている様子だった。

もうひとりのSさんは、昨年に続いて2度目の参加である。ただし「昨年は1日だけの参加だったので時間が足りないし消化不良だった」とのことで、今回は特別に用意された2日間コースに申し込んだ。そんなSさんも雪上ドライビングの効果は十分に認めているようで、「公道では出来ないような運転を試せるので練習になるし、楽しい」と、話す。「機会があれば来年も参加したい」とのことであった。

私もまったく同感だ。今回は自分なりの課題がようやく見えてきたので、できれば来年も参加し、正しいドライビング・テクニックをしっかり身につけたいと思っている。ちなみにアストンマーティン・オン・アイスはアストン・オーナーでなくても参加可能とのこと。詳細はアストンマーティンの公式サイトなどでチェックいただきたい。

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