冬になるとバッテリーのトラブルが頻発する。2019年1月1日~31日の1カ月間、JAFがロードサービスに出動した理由の1位は、7万780件で過放電バッテリー、つまりバッテリーあがりだった。
2位のタイヤのパンク、バーストなど(2万7718件)、3位の落輪(1万6023件)に比べ、ダントツ1位で、出動総数19万5082件のうち、過放電バッテリーが全体の36.28%も占めている。
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これだけトラブルが頻発しているバッテリー、ベストカーWEBとしては見逃せない!
ということで、改めてバッテリーの役割から、交換時期、長持ちさせるコツ、日常すべきメンテナンスまで、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカーWEB Adobe Stock
■バッテリーの役割は、電装品への電力供給だけじゃない?
まず、バッテリーの役割について考えてみたい。バッテリーはクルマの電装品に対して電力を供給しているモノと思われている人も多いようだが、実際にはそれは正解とは言えない。
エンジンを始動させずにラジオなどの電装品を作動させる際には、確かにバッテリーの電力を利用するのだが、そんな状況はそれほど多くはないはずだ。
キャンピングカーなどは停車中も電力を利用するが、それは通常の車載のバッテリーよりも大型のサブバッテリーを搭載して、そちらから電力を供給することで実現している。
エンジンを始動させる時に大きな電流を供給して、セルモーターを力強く回すのが、バッテリーの主な役割。エンジンが掛かってしまえば、電装品への電力供給はエンジンが駆動する発電機、オルタネーターが受け持つ。
オルタネーターは電装品の消費電力に応じて発電量を調整し、それでもエンジン回転が低い場合など電力が足りない時にはバッテリーの電力が使われることになる。
オルタネーターのICレギュレータがパンクしたりして発電することができなくなると、バッテリーの電力を使い果たしてクルマは走行不能になってしまう。
ハザードランプやスモールランプ、ルームランプを点けっ放しにして、一晩駐車してしまってバッテリーを上げてしまう(完全放電)こともある。こうなると、充電してもバッテリーの能力はガクッと下がってしまい、再びバッテリー上がりを起こしやすくなる。
バッテリーの性能は55D23Lなどといった、その品番に記されている。メーカーによって最初の記号はラインナップ中のグレードなどを示すものもあるが、最初の数字がバッテリーの容量、そして次の数字は始動時に一気に放電できる能力だ。
間に挟まっているアルファベットは、バッテリーの短側面(+−の端子が重なって見える、狭い側面)のサイズ。同じアルファベットでも容量が大きくなれば、大きさは横に長くなっていく(ある程度までは同サイズの場合もある)。
そして後に付いているアルファベットは端子の向きだ。+側の端子を手前に置いて、右側に端子が並ぶのがR、左側がLとなっていて、車種によって向きが異なる。車種専用以外は、これらの品番が同じ、もしくは容量や性能を高めた同寸法のモノを搭載することができる。
欧州車の場合はDIN規格で表記が異なり、EUから始まる新規格では、最初のひとケタ目の数字で大まかな容量(5は100Ah以下、6は100Ah以上)、次の2ケタは20時間率容量と言い20時間連続で放電できる電流値を示している。
その後に続く2ケタの数字は性能標準値と言い、始動時に放電できる能力を示している。EUの付かない旧規格の場合は、最後の2ケタは端子の向きや形状、ケースの形状などを示す。
■スマホのバッテリーと同様、クルマのバッテリーも消耗品なのか?
バッテリーは使用していくうちに、能力が低下していく。スマホのバッテリーなどと同じように、充放電を繰り返すと充放電できる容量が減っていってしまうのだ。
したがって定期的に交換することを勧めているディーラーや整備工場も多い。そう、タイヤやブレーキパッドと同じく、バッテリーも消耗品なのである。
バッテリーの電気を蓄える能力が低下していくと、始動時にバッテリーの電力に余裕がなくなってくる。特に冬季など気温が下がってくると、バッテリーの電圧が下がってしまうこともあって、始動時セルモーターの回る勢いが鈍くなることがある。こうなると要注意だ。そろそろバッテリーの寿命が近いというサインだからだ。
バッテリーは容量やタイプによって様々な種類があり、それぞれ価格も異なる。軽自動車用など容量の小さいものは5000円くらいからあるが、大容量なタイプや高性能なものは2万円を超えるものも。輸入車用やアイドリングストップ車用、車種専用など特殊なものは高めになる。
専用品はディーラーで交換するしかないだろうが、汎用品であればカー用品店や一般の整備工場でも交換できる車種は多い。
ただし最近のクルマは電装品が複雑に連携しており、バッテリー交換も診断機を接続して行なう車種もあるので、ディーラーに相談するなど、事前に調べてから交換することだ。
前述のようにエンジンを始動させるセルモーターは、大電流を必要とする。そのため頻繁にセルモーターを使うアイドリングストップ車は、セルモーターの機構が十分に耐久性を考慮しているモノとなっているだけでなく、繰り返しの充放電に強い特性とされている。
ハイブリッド車でなくても、減速時に発電機の負荷を高めてなるべく多く発電するような制御をしているクルマも多い。こういったメリハリのある充電にも対応するには、やはり専用のバッテリーが必要だ。
■メンテナンスフリーバッテリーなら交換不要?
補水不要のバッテリーはメンテナンスフリーと有利だが反面、補水ができないことで確実に寿命は来るので、どちらが良いとは一概には決められない。
定期的に交換するなら補水不要のメンテナンスフリーバッテリーのほうが手間が掛からない分、日常的にバッテリー上がりの不安から解消されるのでオススメだ。
補水不要のバッテリーでも化学反応で水素ガスは発生するが、上部のカバー部分に外部の空気と触れて水蒸気に還元するためのスペースがあり、結露して水になって再びバッテリーセルに還元されるため、バッテリー液の減りが少ないのだ。
また同じく補水不要なバッテリーには、バッテリー液を特殊なマットに含侵させたり、ゲル化しているドライタイプもある。
ちなみに前述のキャンピングカー用のサブバッテリーは、完全に放電してしまってから充電を繰り返してもダメージの少ないディープサイクルという特性になっている。
このタイプのバッテリーを車載用に用いることもできるが、同じ能力なら割高なので、どちらを選ぶかは一長一短といったところ。
競技用のバッテリーとして近年はリチウムイオンバッテリーを使った超小型軽量の車載バッテリーもある。こちらを通常の車載用として使うこともできるが、当然のことながら鉛酸バッテリーの数倍という価格になってしまうため、公道で使用するのは費用対効果としてはあまり高くないのが現実というところだ。
■バッテリーを長持ちさせるコツ、メンテナンスについて
バッテリーは同じサイズなら容量の大きいモノの方が、始動性能などにも余裕があり、結果として長持ちすることが多い。少しの差額で容量アップできるなら、交換時にはワンランク容量の大きなモノを選ぶのもいい。
バッテリーの上面に各セルのプラグ(栓)がネジ込まれているバッテリーは、新品を使用する時にそこからバッテリー液を注いで充電し使用するタイプ(最近は注入&充電済みのモノがほとんどだが)で、使用していくうちにバッテリーの化学反応でバッテリー液(希硫酸)の水分が分解され、水素ガスとなって放出されて減っていく。
そのためバッテリーのケースは半透明になっていて、バッテリー液の液面がどこまであるか分かるようになっている。一定のレベルに入っているように保つのと、充電量が十分かバッテリー液の比重から確認するのが通常のメンテナンスだ。
最近はバッテリーの上面に液量と充電量が十分か確認できるインジケーターを備えているバッテリーも多い。補水不要タイプなら、これを見るだけでバッテリーの寿命が判断できる。
補水タイプのバッテリーは、補水するとバッテリー液の濃度は下がって充電量も低下する。そのため、バッテリー液のレベルをチェックして補水したら、バッテリー充電器で補充電してやる。
豪華なカーオーディオを利用していたり、アイドリングで冷房をガンガン使うようなユーザーは、バッテリーを時々補充電してやったほうが、バッテリーが長持ちする。
走行中は電装品の使用に応じて発電するので、足りない場合でも、負荷の少ない状態で走らせても充電できる量は限られるし、そのために走り回るのはガソリンの無駄遣いになるからだ。
バッテリーは、鉛板と希硫酸のバッテリー液による反応を繰り返すと、鉛板の表面に硫酸鉛が結晶化するサルフェーションという現象が起こる。これが増えてくると鉛板の表面を覆うようになって、バッテリー液と鉛板が直接触れる面積が狭くなっていくと、充電量が不足して、ますますサルフェーションが進んでいくことになってしまうのだ。
■寿命は昔2年、今は最大5~8年だがますます重要な存在に
昔は鉛酸バッテリーは2年ほどが寿命と言われてきたが、近年は前述したサルフェーションをできるだけ防ぐ技術も登場している。バッテリー自体にサルフェーションを防ぐ工夫がされているものと、補充電によりサルフェーションを分解する機能がある充電器がある。
充電によるサルフェーションの解消は、パルス充電と呼ばれる方法で、直流電流ながら微弱な高周波を加えることでサルフェーションを軽減し、繰り返し使うことで除去できる。
これを使うと、鉛板やセパレータなどの内部が機械的に壊れない限り、バッテリーを使い続けることができて、5年~8年くらい使えるモノがザラだ。
バッテリー上がりになってしまうと、スマートキーのクルマはドアもボンネットも開けられずお手上げだけに、早め早めのメンテナンスやバッテリー交換が立ち往生を防ぐことになる。自分のクルマに使われているバッテリーを調べてその特性を理解して、早めの対策を施してやろう。
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