ホンダのヨーロッパ市場戦略が再び問われる今
ホンダが突如イギリスのスウィンドン工場を2021年一杯で閉鎖し、撤退するという発表を行なった。日本人は雇用問題に対し世界一穏やかなお国柄のため、「採算が合わないならば仕方ない」といった反応しかないものの、世界標準からすると大きな問題だ。近年、最も厳しい修行を強いられたのがトヨタである。
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トヨタは、カリフォルニア州の工場を閉めると発表した途端、暴徒化した雇用者だったのかクルマが勝手に暴走し始めニュースになり、社会問題になってしまう。その後、解雇した従業員に対し手厚い補償を行なうことを決め、さらに工場自体も居抜き&好条件でテスラに譲ることを発表するや、トヨタ車の暴走は全く無くなり、アメリカの国交大臣にあたる議員も「トヨタは素晴らしい」となった。
イギリスだって同じだ。アメリカのような直接行動に出ることはないかもしれないけれど、突然の三行半(みくだりはん/離縁状)は半ばケンカ売るようなもの。イギリスからすると、日産のサンダーランド工場で次期型エクストレイルの生産を止めるという発表すら「もしかしたら工場の生産規模を減らすのか?」と大問題になっている。
工場撤退となったら、ブレグジット(イギリスのEU撤退問題)に与える影響も大きい。ちなみに日産のサンダーランド工場は昨年44万台を生産。イギリスの約3割の生産台数という規模を持ち、工場と部品関連で4万人近い雇用を作り出している。ホンダのスウィンドン工場は昨年16万台のシビックを生産し、撤退となれば2万人近い失職者を出すだろう。
どうなる? 次期シビックの生産
ちなみに工場撤退を決めた直接の原因は、次期型シビックの生産と関係がある。現行シビックはアメリカを向いて開発したため、予想していたよりも販売は低迷。特にヨーロッパ市場では明確な不人気となった。だからといってシビック以外の車種を生産しようとすれば、部品メーカーを含め大がかりな投資をしなければならず赤字になる可能性も大となる。
そもそもホンダはヨーロッパ向けの車種開発を積極的に行なってこなかった。どの車種を取っても、タフなヨーロッパの道路で元気の良いヨーロッパの人が走らせるとひ弱に感じてしまう。このあたりはホンダも認識しており、市販車の丈夫さが要求されるラリー(特に非舗装ラリー)は耐久性不足が響くため出場していない。直近ではF1不振がマイナス宣伝になってしまったのも効いているだろう。
本来なら本田宗一郎さんの根幹に流れている「やらまいか気質」(故郷である浜松の気風。やってみようか!という意味)を前面に出し、もう一度欧州市場で勝負してみたらよかったのではないか。イギリスで生産してEUに輸出しても、日本から輸出するより有利なコスト戦略を練ればいいだけ。イギリスに砂掛けて出て行くのはとにかく上手くない。
どんな手厳しい意趣返しを喰らうのか全く予想出来ない。心配でならないのだ。
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