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実は北米でも微妙!? ファンが愛したスカイラインはどこで間違ったのか

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実は北米でも微妙!? ファンが愛したスカイラインはどこで間違ったのか

 中高年齢層の自動車ファンにとって、スカイラインは特別なクルマだ。日本ではセダン人気の衰退が伝えられるが、1月30日に新型を発表したBMW 3シリーズは、2018年に7997台(月平均666台)、メルセデスベンツCクラスも1万8321台(同1527台)を登録。一方スカイラインは2576台にとどまり、輸入車のライバルと比べても販売が低迷している。

 スカイラインが最も多く売れたのは1973年で、前年発売の4代目「通称ケンメリ」が15万7598台登録。月平均1万3133台と物凄い人気車だった。4代目スカイラインは、今の61倍も売れており、この台数は、2018年に登録車販売No.1になったノートの1万1360台を上回る。

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 スカイラインは、どのタイミング(世代)で支持を失ってしまったのか。データをもとに紐解いていきたい。

文:渡辺陽一郎/写真:編集部、NISSAN

スカイラインのピークは優に月1万台超売れた“ケンメリ”

 1973年に4代目“ケンメリ”が15万7598台を登録した後、翌年は落ち込んだが、1975年には再び15万177台を登録した。これは昭和50年(1975年)排出ガス規制直前の駆け込み需要も関係している。

 この後に売れ行きは一度下がるが、1978年に盛り返して15万4618台を登録している。前年に5代目、通称「ジャパン」が発売されたからだ。

 ところが1979年以降は、売れ行きが一貫して下がり始める。1981年に6代目(R30型)を発売したが、翌1982年は10万7539台。4気筒ツインカム4バルブエンジン(FJ20E型)を搭載するなど、スポーツ路線を強化したが、売れ行きは下降していく。

 1985年には7代目「R31型」になり、マークIIの人気も意識して、ボディと居住空間を拡大。それでも翌年の登録台数は8万6840台にとどまり、ピーク時から10年少々で売れ行きが半減した。

名車「R32」の登場とスカイラインが抱えた苦悩

 1989年発売の8代目「R32型」では、ボディがコンパクトになってGT-Rも復活したが、1990年の登録台数は8万863台にとどまる。R32型はGT-Rの設定もあって今も語り継がれる人気車だ。

 国内販売は1990年にピークの778万台(2018年は1990年の68%)に達した一方、スカイラインは最盛期を過ぎていた。

 当時のスカイラインがボディの拡大と縮小を繰り返したことを、今では開発の迷走などと揶揄するが、開発者には「何をやっても売れ行きが伸びない」という苦悩があった。そのために様々な手段を必死に試していた。迷走という軽はずみな表現は妥当ではない。

 当時の日産内部からは「R32型はファンの間では受けたが、販売面ではR31型が好調だった。スカイラインも豪華路線を見直すべきだ」という意見も聞かれた。

 そこで1993年発売の9代目「R33型」は自動車税制改訂も受けて、全車3ナンバーサイズに拡大。雰囲気はR31型に似て居住性も快適だったが、翌年の売れ行きは5万4766台。1970年以降、最低の登録台数になった。

 この販売不振には、セダンとクーペ全体の人気低迷も絡む。1982年に初代パジェロ、日産も1986年に初代テラノを発売してオフロードSUVの人気が高まり、ミニバンでも日産は1991年にバネットセレナを発売。1993年には3ナンバーのラルゴが設定され、人気を高めた。

 他社もセダンは海外向けの3ナンバー車を国内に流用して人気を落とし、ミニバン、SUV、コンパクトカーの売れ行きが拡大。セダンとクーペの衰退が始まり、スカイラインもこの渦に巻き込まれた。

 1998年には10代目「R34型」が発売。9代目の「ボディが太って見える」という意見を聞いてホイールベースを55mm短くしたが、セダンの全長は15mmしか短くなっていない。「セダンはゴルフバッグを積めないと困る」という社内の意見が根強く、リアのオーバーハングを少し伸ばしたからだ。

 ホイールベースが短く、オーバーハングの長いボディは、近年のデザイントレンドに逆行。外観は鋭角的でスポーティながら、プロポーションに古さを感じた。発売翌年の1999年は2万667台で、登録台数はピークだった1973年の13%まで落ち込んだ。

「北米重視」へ舵を切ったスカイライン

 1990年代の後半には、日産が業績を悪化させ、1999年にルノーと資本提携を結んだ。この時に日産の最高執行責任者に就任したのが、カルロス・ゴーン元会長であった。

 この時期に日産は新プラットフォームを使った4ドアセダンを開発、「XVL」の名称で1999年の東京モーターショーに出品した。このXVLがゴーン氏の意向もあり、11代目「V35型」スカイラインに。当時「スカイラインが大幅な路線変更」、「ローレルの後継車種ではないのか?」などいろいろな反響があった。

 発売は2001年で、2002年の登録台数は1万2810台。2003年にはスカイラインクーペの追加で1万6165台に伸びたが、2005年には6613台まで減ってしまう。

 これ以降のスカイラインは、インフィニティブランドの都合で開発されている。モデルチェンジのたびにボディが拡大され、内外装も北米の好みを反映させるようになった。

 近年では、2014年に現行型の13代目「V37型」に発展して、2015年には6145台を登録。少ないながらも、発売直後には月平均で500台少々は売れるのだ。これは「新型になったら必ず買う」という根強いスカイラインファンが健在であることを意味する。

 ただし、この常連顧客の需要は長続きせず、2016年は4204台、2017年は2919台、2018年は前述の2576台と下がっていった。

スカイラインはどこで間違ったのか?

 このように、スカイラインの販売ピークは意外に早く1973年に訪れた。この後は、セダンではライバル車のマークII/チェイサー/クレスタなどが車種を充実させ、売れ行きを伸ばしていく。クーペもライバルのセリカが力を付けて、RX-7やプレリュードも加わる。

 日産車ではクーペのシルビアが1975年に復活し、1979年には姉妹車のガゼールを加えた。1988年以降はセフィーロも登場する。スカイラインにとっては、これらがすべて逆風になった。

 スカイラインの販売下降が明らかになった転換点は、1981年に発売された6代目「R30型」だ。

 5代目「C210型」までは4気筒と6気筒でホイールベースを変えていたが、6代目は4気筒のスポーティエンジンとなるFJ20E型を導入したこともあり、ホイールベースをGT系の長いタイプに統合。4気筒をロングホイールベースにするコンセプトの変化(曖昧さ)も災いして、1984年には年間登録台数が初めて10万台を下回った。それ以降、10万台を超えた年はない。

 7代目「R31型」以降は販売減少に歯止めがかからず、1997年には「R33型」の年間登録台数が2万台を下回った。「R34型」でも浮上せず、11代目「V35型」は一層下がってしまう。ここからは北米指向を強め、フルモデルチェンジの度に大勢の顧客を失っていく。

 つまりスカイラインは、海外で売られるインフィニティとしての立場を強めたことで、クルマ作りが日本のユーザーを離れて、売れ行きを落とした。

スカイラインは北米でも売れていない?

 ならば海外で成功を収めたのかといえば、そうでもないのだ。2013年頃までは、北米市場において、インフィニティG35が月3000~5000台を販売していたが、アルティマなどは2万台前後を売っていたから驚くに当たらない。2014年以降は2000台前後に下がった。

 現行型のQ50も、北米ではおおむね3000台前後だ。直近では1年間に約4万台、1か月平均3300台くらいで推移する。手堅く稼げる車ではあるが、かつて1990年代中盤に、9代目(R33型)スカイラインは日本国内だけで年間4~6万台を登録していた。

 海外で成功して「日本のスカイラインが世界のインフィニティに成長した」とはいえないだろう。スカイラインとしても、インフィニティとしても、中途半端な存在になっている。

 スカイラインはまさに時代を先取りしたクルマで、1970年代の前半にピークを迎えた。そして4気筒と6気筒を作り分け、ボディはセダンとクーペがあり、ホイールベースも4種類という車作りが共感を呼んだ。

 スカイラインという世界の中に、いろいろな価値観が共存して、多くのユーザーから支持を得た。4気筒を購入して、次は2Lの「GT」、さらに2LでSUツインキャブレターの「GT-X」という具合に、スカイラインの中でストーリーのある乗り替えができることもユーザーには嬉しかった。

 クルマにはストーリーやドラマが不可欠だ。スカイラインはそれを失って売れ行きが下がり、さらに海外向けになって絶望的な状態に陥った。

 今のスカイラインのフロントグリルには、日産ではなくインフィニティのエンブレムが装着されている。

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