現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【旧車レストアの救世主になる!?】 クルマは3Dプリンターで再生できるのか?

ここから本文です

【旧車レストアの救世主になる!?】 クルマは3Dプリンターで再生できるのか?

掲載 更新
【旧車レストアの救世主になる!?】 クルマは3Dプリンターで再生できるのか?

 トップの写真は、2014年に発見された、かのエルビス・プレスリー(1935年1月8日-1977年8月16日)の愛車「BMW507」を、3Dプリンターの技術を使って完全復活させたもの。レストアを手がけたのはもちろんBMWだ。

 その詳細は下の番外コラムをお読みいただくとして、日産スカイラインGT-R、ホンダのタイプRなどなど、過去に一世を風靡した人気車でも、部品の生産が終了しているものは数知れず……。日本は旧車に優しくない国ではあるものの、やはり愛したクルマには長く乗りたいもの。

新型RAV4発売日&ヤリス年末! ホンダフリード情報など新型続々発表!

 最近は樹脂部品だけでなく、金属部品まで3Dプリンターで造形が可能になってきた。本文でもご紹介しているが、2018年2月には、ポルシェが3Dプリンターを使って過去の名車たちの部品を出力、供給することを正式に発表、なんてことにまでなってきている。

 そこで、一般のユーザーの3Dプリンターによる部品再生は可能なのか? どのような部品ならば再生産が可能なのか? などを調査してみた。旧車に明るい未来は、ひょっとしてもうすぐそこに来ているのだろうか?

※本稿は2019年1月のものです


文:ベストカー編集部/写真:AdobeStock、ベストカー編集部/取材協力:SOLIZE Products 株式会社


初出:『ベストカー』 2019年2月10日号

■可能性が無限大に広がっている

 3Dプリントは、3次元用・立体用に作られたデジタルデータを元に、立体的な造形物を製作する手法だ。

 代表的な造形方式に「光造形」「粉末造形」「金属造形」といったものがあり、前述した通り今までは樹脂製の造形物が中心だったが、技術が進歩するにつれ樹脂以外の素材、ステンレスやアムミ合金などの鋼材なども扱えるようになり、またその精度(造形物の表面のなめらかさなど)も飛躍的に向上しており、元々のデジタルデータの利点である正確性や再現性と相まって、その可能性は日々広がり続けていると言っていい。

 国内では現在のところ試作で使用されることが多いが、海外ではすでにレーシングマシンなどで実用化しているものもある。ここでは将来的に国内でも少量量産化されるかもしれないものを紹介したい。



■輸入車メーカーは新技術にかなり積極的

 冒頭でもすこし触れたが、実は欧米の自動車メーカーのなかには、3Dプリンターを使って少量量産部品を作り始めているメーカーがある。

 金型を必要とせず、3次元CADで作成したデータから、複雑な形状を造形することができる3Dプリント技術は、先進性のある技術を好む海外のエンジニアのハートを掴んでいるようだ。

 以下にご紹介していこう。

●ポルシェ

 希少なクラシックカーの愛好家が多いポルシェだが、「スペアパーツ入手不可」という問題が発生していた。それでは故障があった場合、不動車になってしまうということが問題となったため、3Dプリンターによるクラシックパーツの供給を開始した。

 対象となったのは、わずか292台しか生産されなかったポルシェ「959」のクラッチのリリースレバーで、「レーザー溶融法」を用いて製造。樹脂部品に求められるオイル、燃料、酸、光への耐性などの品質要件も、従来品よりも優れたクオリティを実現しているという。

●GM

 GM(ゼネラルモーターズ)はなんと30年前から3Dプリンターを導入しているという。10年後には3分の1の部品を3Dプリンターで量産することを目指し技術開発を続けている。

 今回紹介するのはソフトウェアメーカーと協業で考案したシートブラケットだ。まだ実用化されてはいないが、この不思議な形をしたブラケットはインパクト満点だ。3次元CADと解析を駆使して作られた形状は、3Dプリンターでなければ作成が難しい、複雑なものとなっている。

●メルセデスベンツ

 メルセデスベンツはダイムラーの研究グループと共同で、「フューチャー・ミーツ・クラシック」という試みを行っている。そのなかで、クラシックカー「300 SLクーペ(W198モデルシリーズ)」の、アルミニウム合金製ミラーベース(クロムメッキ処理あり)を製造。

 またEクラス(W110とW123)とラグジュアリーモデル(W111とW112)のサンルーフを備えたモデルに関しては、サンルーフ用ローラー(ポリアミド製)を3Dプリンターで製造している。

●BMW

 先進技術を積極的に採用する傾向の強いBMWは、2018年4月から日本で発売しているオープンカー「BMW i8 ロードスター」に3Dプリンターで作った部品を採用している。

 以前は樹脂の射出成形品を使用していたが、アルミ合金製の3Dプリンター製部品に交換することで、強度向上と軽量化を実現した。

 複雑な形状を採用しているため、造形後の後処理工程などを考慮すると、従来の工法より3Dプリンターのほうがコスト面では有利だという。

●VW

 VWは米国のプリンター企業HPと協力して、VWでは量産車初となる3Dプリンターで製造した部品を投入することを、2018年9月に発表した。

 採用されるのは、テールゲートのロゴ・エンブレムやシフトノブ、キーなどの商品で、「HPメタル・ジェットプロセス」という粉末と結合剤を交互に噴射し、1層ずつ積層造形したパーツを、全体的に焼き固めて成形する手法で製造される。

 2~3年以内に量産車の構造部材を、3Dプリンターで製造することも目指している。

*   *   *

■まとめ:個人で手軽にレストアできる時代がきっと来る!?

 価格面、耐久性の面や生成のスピードなどの面では、まだまだ万人向けに販売できるところまでは来ていない3Dプリント技術。だが、着実に進歩はしているので、思ったよりも早く、国内でも旧車の部品再生が手軽にできる時代が来るかもしれない!!

●取材協力:SOLIZE Products 株式会社

 国内で27年以上にわたり3Dプリント技術により、樹脂から金属までデジタルものづくりを行っているSOLIZE Products(ソライズプロダクツ)株式会社。

 BtoB(企業間取引)の試作領域において、国内最大級の8台の3Dプリンターを保有。アルミ、ステンレス、インコネル、マレージング鋼、さらにはオリジナルの樹脂を開発することで幅広いニーズに応えている。

 特殊車両や補給パーツなどの少量生産品において、実在庫を持たず、3Dデータから必要に応じて製造することができる。

 個人向けにもINTER-CULTUREというブランドを立ち上げており、3次元CADデータを送って、作成を依頼することが可能。

【番外コラム】エルビス・プレスリーの愛車が3Dプリンターで復活!

 「キング・オブ・ロックンロール」と呼ばれたエルビス・プレスリーが所有していたBMW 507が、BMWによって2016年にレストアされていた。

 この車両は、エルビスが旧西ドイツで購入し、アメリカに持ち帰ったもので、長い間行方不明になっていたが、2014年に発見された。エンジンなどもない状態だったが、ストックのない部品などを写真やカタログを参考に3Dプリンターで作り出し、見事に復活させたという。

こんな記事も読まれています

ホンダ「オデッセイSUV」あった!? 車高アップ×タフデザインが超カッコイイ! 上質内装も採用した「オデッセイ “クロス”」とは
ホンダ「オデッセイSUV」あった!? 車高アップ×タフデザインが超カッコイイ! 上質内装も採用した「オデッセイ “クロス”」とは
くるまのニュース
新事実[ロードスターは世界一] ナンバーワンのスポーツカーである8つの理由
新事実[ロードスターは世界一] ナンバーワンのスポーツカーである8つの理由
ベストカーWeb
日本に1台のアルティマ「カンナム スパイダー」とFSWで遭遇! 超希少車でサーキットを全開走行する正当な理由とは
日本に1台のアルティマ「カンナム スパイダー」とFSWで遭遇! 超希少車でサーキットを全開走行する正当な理由とは
Auto Messe Web
マツダ全幅1.9mの「オフロードSUV」 デザインが良い! 並行輸入で約1000万円!? 「CX-50」欲しい?
マツダ全幅1.9mの「オフロードSUV」 デザインが良い! 並行輸入で約1000万円!? 「CX-50」欲しい?
くるまのニュース
日産歴代最強のSRターボ [SR20VET]搭載車は初代エクストレイルGTだった……なぜS15シルビアや初代シルフィに積まれなかった?
日産歴代最強のSRターボ [SR20VET]搭載車は初代エクストレイルGTだった……なぜS15シルビアや初代シルフィに積まれなかった?
ベストカーWeb
新店舗「レンタル819府中」が4/19オープン!
新店舗「レンタル819府中」が4/19オープン!
バイクブロス
開発テーマは原点回帰──トヨタ ランドクルーザー 250が発売|TOYOTA
開発テーマは原点回帰──トヨタ ランドクルーザー 250が発売|TOYOTA
OPENERS
自動車業界に相次ぐ不祥事……日産が約30億円不当減額!! 公取委が下請法違反で勧告
自動車業界に相次ぐ不祥事……日産が約30億円不当減額!! 公取委が下請法違反で勧告
ベストカーWeb
隣のレーンなら空きがあるのに周回できない! EVを充電したあと休憩できない! 「SA・PA」頼むから改善してくれませんポイント5つ
隣のレーンなら空きがあるのに周回できない! EVを充電したあと休憩できない! 「SA・PA」頼むから改善してくれませんポイント5つ
WEB CARTOP
5年ぶりF1中国GPが復活! FP1はストロール最速。角田裕毅12番手……スプリント開催もコース炎上の珍トラブルも発生
5年ぶりF1中国GPが復活! FP1はストロール最速。角田裕毅12番手……スプリント開催もコース炎上の珍トラブルも発生
motorsport.com 日本版
トヨタ新型「ランクル250」正式発売! 15年ぶりに全面刷新! 従来プラドから何が変わった? 角目・丸目設定で520万円から
トヨタ新型「ランクル250」正式発売! 15年ぶりに全面刷新! 従来プラドから何が変わった? 角目・丸目設定で520万円から
くるまのニュース
バイク未来総研によるリセールプライスランキングで「カワサキ・ELIMINATOR」が初の首位を獲得!
バイク未来総研によるリセールプライスランキングで「カワサキ・ELIMINATOR」が初の首位を獲得!
バイクブロス
レクサス、新型GXの国内導入の概要を発表。100台限定のローンチモデル「GX550 ”OVERTRAIL+”」の抽選注文受付を開始
レクサス、新型GXの国内導入の概要を発表。100台限定のローンチモデル「GX550 ”OVERTRAIL+”」の抽選注文受付を開始
月刊自家用車WEB
ランス・ストロールがトップ。ピアストリ、フェルスタッペン続く。角田裕毅は12番手|F1中国FP1速報
ランス・ストロールがトップ。ピアストリ、フェルスタッペン続く。角田裕毅は12番手|F1中国FP1速報
motorsport.com 日本版
ヘッドライトが自動で点灯! 「オートライト機能」は、夕暮れ時の事故を防ぐ“切り札”になれるでしょうか?
ヘッドライトが自動で点灯! 「オートライト機能」は、夕暮れ時の事故を防ぐ“切り札”になれるでしょうか?
Merkmal
新型レクサスGX、1000万円超で発売開始!──GQ新着カー
新型レクサスGX、1000万円超で発売開始!──GQ新着カー
GQ JAPAN
レクサス「GX550」を2024年秋より通常販売。これに先立ち、6月上旬より「GX550 オーバートレイル+」を抽選で100台限定販売
レクサス「GX550」を2024年秋より通常販売。これに先立ち、6月上旬より「GX550 オーバートレイル+」を抽選で100台限定販売
Webモーターマガジン
レクサス、ランクル250と兄弟車のGXを発表。初回は100台を販売
レクサス、ランクル250と兄弟車のGXを発表。初回は100台を販売
driver@web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2276.02453.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1170.01260.0万円

中古車を検索
i8 ロードスターの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2276.02453.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1170.01260.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村