■世界中で人気のオフローダーモデル
近年、世界的な人気を獲得しているバイク・ジャンルの一つがアドベンチャーツアラーやスクランブラーといった「オフロード」を強く意識したモデルです。
ヤマハ「MT シリーズ」 世界中で人気のMTに新型モデル投入!
ホンダ「アフリカツイン」やBMW Motorrad「R1200GS」などに代表されるアドベンチャーツアラーは、最新の走行性能と快適装備を両立させた、いわば「究極のツーリングモデル」といえるものです。高速道路から未舗装のダートまで “地球のあらゆる道がツーリングルート”といっても過言ではない走破性が魅力となっています。
対してスクランブラーは60年代から70年代のバイクを思わせるスタイリングが特徴で、アドベンチャーツアラーほどの快適性や走破性はありませんが、オートバイ然とした普遍的な外観と、必要にして十分な装備と性能で多くのライダーを満足させてくれるものです。
近年ではトライアンフから発表された「スクランブラー」シリーズが話題となりましたが、2018年11月8日から一般公開されたイタリアのオートバイ国際見本市EICMA(エイクマ)では、ヤマハが「XSR700」をベースに往年の名車「XT500」を再現したコンセプトモデルを出展して大きな注目を集めました。
■SRの原点といえる「XT500」とダートトラッカー
オフローダー人気はカスタムバイクの世界にも波及していますが、そうしたカスタム車両のベースとして高い支持を得ているのが1978年に初代モデルが登場したヤマハ「SR400」です。そもそもシングルエンジン搭載のロードスポーツとして高い完成度を誇る同モデルですが、そのルーツはオフローダーだということをご存知でしょうか。
1976年に登場した「XT500」は、ヤマハ初となる4ストローク500cc単気筒エンジンを採用したモデルで、2年後の1978年には、同エンジンを搭載したSR400/500が発売されます。そうした観点からみてもSRの原点は生粋のオフローダー「XT500」であることが分かります。
今でこそヨーロピアンとして見られている純正SRのデザインですが、もともとはダートトラッカーを強く意識したもので、初期型は19インチのフロントホイールに、アップライトなハンドルバーを採用。そして現行にも受け継がれるシート周りのデザインはトラッカーイメージをダブルシートに落とし込んだものといわれています。XT500にはじまるルーツやデザインソースなどを踏まえれば、SRにオフローダー風のカスタムが似合うのは当然のことといえるでしょう。
■VMXとスクランブラー、2つのオフローダーカスタム
近年ではSRをベースにしたオフローダーカスタムは、さまざまなカスタムショップで見ることができます。ただ、ひとくちに「オフローダー」といっても、そのスタイリングは大きく2つに分かれるようです。
ひとつは車高をしっかりと上げ、21インチのフロントホイールを履いた「VMX(ヴィンテージ・モトクロッサー)」スタイルで、「XT500」レプリカともいえる、険しい林道からモトクロスコースまで、走る場所を選ばない仕様が特徴となります。
実際にオーナーの多くはSRで林道ツーリングやモトクロスを楽しまれる方が多いようで、「デルスラーラ ver.広島」の代表/井上さんは「お客さんと定期的に林道ツーリングを楽しんでいる」といいます。参加者はすべてカスタムSRというから驚きです。 また大阪にあるグリードモーターサイクルの代表/小川さんは、自らカスタムSRでヴィンテージモトクロスのレースに参加しており、「僕が作るのはXTレプリカではなく、あくまでもSRをベースとしたカスタムマシン。タンクやシートなどはSRらしさとモトクロッサーらしさが両立するようにこだわっています」と話します。
もういっぽうは必要以上に車高を上げず、フロントホイールのインチアップも19インチ程度(もしくは純正18インチ)に留めた「スクランブラー」スタイルです。このカスタムは足つき性もよく、それでいてアップタイプのハンドルバーを備えることでリラックスしたライディングポジションを実現。車体のコントロール性も高いため、街乗りからツーリング、そしてちょっとしたフラットダートまでを気負うことなく楽しめるスタイルとして支持されています。
本格的なモトクロッサースタイルか、ツーリングも楽しめるスクランブラータイルか、どちらにせよ共通しているのは、スタイリングと走りの両方を楽しんでいるということです。
やはりカスタムバイクといえども、走って楽しむことがバイクの本質です。近年はそう考えるライダーが増えてきたように思いますが、オフローダーカスタムは、そんなカスタム好きのわがままを叶えてくれる最良のスタイルだといえるでしょう。 【了】
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