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「かつて、ラグジュアリーと言えばフランス車だった」DSオートモビルズ・デザイン部長インタビュー(前編)

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「かつて、ラグジュアリーと言えばフランス車だった」DSオートモビルズ・デザイン部長インタビュー(前編)

DSオートモビルは12月、東京の南青山に旗艦店をオープンした。これに合わせDSのデザイン担当SVP(シニア・バイスプレジデント)、ティエリー・メトローズ氏が来日。ディレクターとしてDS各車のデザインを手がけるメトローズ氏に、DSが表現しようとしているものや、これから目指す方向などを訊いた。今回はその前編である。REPORT●古庄速人(Furusho Hayato)PHOTO●宮門秀行(Miyakado Hideyuki)

DSとはどんなブランドなのか?

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—最初に、DSとはどんなブランドなのか、そしてデザインではどう表現しているのか。デザインディレクターとしての考え方やDSデザインの向かう方向などを聞かせてください。

メトローズ:ブランドとして掲げているのは、フランスの誇るサヴォアフェール(匠の技や知見)を、いかにしてクルマに適用するか。これに挑戦するということです。そしてこれに従いつつテクノロジー、そしてリファインメント(洗練された上品さ)というふたつの要素を表現することがデザイン戦略となっています。

—そのデザイン戦略におけるふたつの要素について、詳しく聞かせてもらえますか。

メトローズ:まずテクノロジーについて説明しましょう。既存の技術や最先端のものなどいろいろな要素があるなかで、それらをいかにうまく組み合わせ、演出するかということに重点を置いています。いかにしてハイエンドな演出をするか、ということですね。

 たとえばDS7クロスバックのウェルカムヘッドライトのモジュールは、ただユーザーを出迎える機能を持つだけでなく、ユニットのひとうひとつが綺麗に回転する演出。また、このセグメント(ミドルクラスSUV)の車種で12インチの大型ディスプレイやナイトビジョンを搭載したのは、画期的なことだと思います。

—先進的な技術を、ただ搭載するだけではダメということですね。それではリファインメントについて教えてください。

メトローズ:どれだけディテールにこだわるか、ということです。素材選びの段階から、細かいところまでリサーチをします。そして素材を厳選するだけでなく、それをどう加工しようか、どう見せようかと考えることに心を砕いています。

 DSのリファインメントとして誇れるのは、レザーの細工や仕上げです。もう一度DS7クロスバックを例に説明しましょう。シート表皮は腕時計の金属ベルトをモチーフとしたパターンを採用していますが、実はこれは1枚の革で仕立てています。

 DSでは柔らかいレザーを使うことにしていますが、何枚も貼り合わせるとどうしても硬い座り心地になってしまう。だから1枚で、立体的なパターンを実現できるように考えたわけです。私たちはレザーの職人技に関してはかなりの自信を持っていまして、ここまでやるのは私たちだけと言っても過言ではないと考えています。

 またセンターコンソールの金属部分には、時計の文字盤にあしらわれるギヨシェ彫りを採用していますが、これはブレゲと手を組むことで実現しました。こうした細部にこだわることで、リファインメントを演出しているというわけです。


アヴァンギャルドというヘリテイジ

—DSはグループPSAのなかでラグジュアリーなプレミアムブランドという位置づけだと思います。そしてプレミアムブランドはしばしば、自分たちのヘリテイジ、歴史の積み重ねを武器にします。しかしDSはアヴァンギャルド(前衛、革新)を標榜していますよね。

メトローズ:まず言わせてください。1920~30年代の自動車産業において、ラグジュアリー、プレミアムといえばフランスだったのです。ドラージュやドライエなど、残念ながらほとんどのメーカーが消えてしまいましたが、ラグジュアリーそしてプレミアムといえばフランスというのが大前提なんです。

 みなさんはラグジュアリーといえば、ファッションをはじめさまざまな分野でフランスのブランドを思い浮かべることでしょう。そのなかで近年では唯一、不在だったのが自動車業界でした。ですから「フランスが持っているラグジュアリー感というものを、いかにして自動車に復活させるか」ということが、現在のDSが取り組んでいることなんです。

 ヘリテイジという意味では、1955年のシトロエンDSが、私たちのもっとも誇るべきものです。初めてDSが登場したとき、そのスタイリッシュさとアヴァンギャルドさで衝撃を与え、世界的な知名度を獲得しました。つまり前衛的であることは必須であり、その姿勢こそがDSというわけです。

 強調しておきたいのは、フランスにはフランスなりのラグジュアリーやヘリテージがあり、私たちはそれを表現するためにサヴォアフェールを大事にしていきたいと考えている、ということです。とはいえDSは、独立してまだ4年という若いブランド。ブランドが確立し、浸透するためには長い時間が必要ということを認識しつつ、いかに伝えていくかというのが課題ですね。


—それでもヘリテイジは過去のことですから、アヴァンギャルドさと矛盾し、対立する場面も出てくると思います。どのように両立、併存させてゆきますか?

メトローズ:両者をいかに並立させるかというのは大きな課題ですが、できているという自負があります。どちらも見せるには絶妙なバランスが必要で、どちらかに偏ってはいけません。これをいかにバランスよく見せるかというのが、私たちデザイナーの仕事です。

 もちろん、相反する要素だということはDSでも認識しています。それでもこれに挑んでいるのは、見せられるという自負があるからです。端的に言えば、アヴァンギャルドはテクノロジーを使って表現する。そのいっぽうで、サヴォアフェールでヘリテイジを見せるということです。


「DSオートモビルズ・デザイン部長インタビュー(後編)」は12月15日(土)に公開予定です。

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