2018年9月に正式にカタログモデルとして導入が始まったアルピーヌA110。今回はその中から「ピュア」に試乗、走らせてみれば……待っていたのは異次元感覚のパフォーマンスだった。(Motor Magazine 2019年1月号より)
その「伝説」を知らないユーザー層からも人気
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クルマ選びは、おうおうにして理屈では計れない。カッコだけで選んだっていい。「ひと目惚れ」、もちろんあり。勢いで買ったけれど期待外れ、という痛い目を見る可能性は否定できないけれど、「あばたもえくぼ」と言うじゃないか。
誤解を恐れずに言えば、現代に蘇ったアルピーヌA110は、そういう1台だ。エレガントかつスポーティなスタイリングに魅せられて、勢いで買ってしまう可能性が非常に高いクルマだと思う。
カッコで買う、という意味では、初代に対する「ノスタルジー」が強い購入動機となるだろう、と想像していた。しかし実際には、「伝説」を知らない層が食指を伸ばすケースも多いと聞く。名車の復刻版としてではなく、最新の「カッコいいライトウエイトスポーツカー」としての魅力に、世代を問わず魅了されている。
そこで今回の試乗では、そんなオーナー予備軍のひとりになった気持ちで試乗してみた。早まったかも、とちょっと心地よいドキドキ感を味わいながら。結論を言えば、買って正解!オーナー予備軍が羨ましい。このクルマ、面白すぎる!!
排気量1.8Lとは思えない、異次元感覚のダッシュ力
とにかく身のこなしが軽い。最近の新型車は安全面やデザインに絡む要件もあって、ボディサイズは拡大し車両重量も重くなる傾向がある。そんな中、1110kg(ピュア)というA110のウエイトはそれだけでも選ぶ価値があるかもしれない。
前後重量配分は44:56と、ややリア寄り。そのおかげもあって、ノーズが軽くヒラヒラと向きを変えてくれる。
決して軽薄なタッチではない。フロントタイヤの接地感はしっかりハンドルを通して伝わってくるし、操作に対する反応がとても自然。とても上質なヒラヒラ感だ。重心位置はちょうどドライバーの腰あたり。いわゆる「腰で回る」感覚も味わえる。
全幅は実はしっかり1800mmあるのだけれど、全長4205mmという引き締まったパッケージングがやはり身のこなしの軽さに効いている。ただし最小回転半径は5.8mと、決して小さくないのがかえって不思議なくらいだ。
もうひとつ、軽さのメリットを実感できるのが加速フィールだった。252psを発生する1.8Lの直列4気筒ターボエンジンは、低い回転域から適度に力強くトルクが立ち上がる現代的なターボの味付けだ。だが320Nmの本領発揮はさらにその先。もう2段、ダイナミックな加速が来る。
軽いボディとミッドシップの組み合わせは、炸裂する2段めの大トルクを、専用開発のミシュランパイロットスポーツ4を通してしっかり無駄なく地面に叩きつけてくれる。加速姿勢もあくまでフラット。怒涛のような加速ぶりは、このサイズ、この排気量のクルマとはとても思えない。掟破りのワープ感覚だ。
実はもともと乗り物酔いしやすい体質なのだが、撮影のために何度か短時間のフル加速を繰り返していたら、軽く酔ってしまった。コーナリングで加わる横Gの影響もあると思う。気合いを入れすぎるワケでもなく適度なヒラヒラ感を堪能しているつもりだったのだが、そうとうタフな走りに没頭してしまっていたのかも。
A110の本領をフルに楽しむために、ドライバーもそれなりに鍛えておいたほうがいい。そうは言っても、現代のスポーツカー。決してスパルタンではない。バンピーな路面ではツッパリ感を感じることもあるが、基本的にしなやかで快適な乗り心地だ。隣にパートナーを乗せても、苦情が出ることはないだろう。
デザインも走りの印象も、ドイツ系のライバルたちとはやっぱり違う。それは単に、「フレンチテイスト」とひとくくりにできるものではない。アルピーヌA110はまさに、オンリーワンなのだ。(文:神原 久)
アルピーヌ A110 ピュア 主要諸元
●全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm
●ホイールベース=2420mm
●車両重量=1110kg
●エンジン=直列4気筒DOHCターボ
●排気量=1798cc
●最高出力=252ps/6000rpm
●最大トルク=320Nm/2000rpm
●トランスミッション=7速DCT
●駆動方式=MR
●車両価格= 790万円
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