“スーパー”というキーワードが、ランボルギーニは好きらしい。最初に手がけた4WD車「チーター」(1977年)は、V型12気筒エンジンをリアミドシップに搭載したモデルだった。市販版はフロントエンジンになったものの、砂漠を時速145km/hで走破するという当時としては破格の高性能をうたい、大いに話題をふりまいた。SUVなんてことばがまだなかった時代の、“スーパー4WD車”であった。
チーターの発表から41年たった2018年に路上を走り出した「ウルス」は、“スーパーSUV”とうたうモデルだ。たしかに650psの最高出力と、850Nmの最大トルクは“スーパー”にふさわしい気がする。
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クルマを作る人は、つねに”いつでもどこでも”走れるモデルを考えているそうだ。天候や地形に影響されない走破性を実現するのは、クルマづくりの究極の目的かもしれない。だからランボルギーニも、悪路向けのスーパーカーであるチーターを作り、そして今、ウルスを開発したのだ。
そんなウルスの試乗会として選ばれたアイスランドは、9月になると東京の感覚では冬だ。したがって、私が行った10月は吹雪に見舞われた日もあったほど。今回の試乗会は、悪天候も含めさまざまなシチュエーションのなか約800km走行した。「アドベンチャー」と、ランボルギーニがうたうのも納得だ。
ウルスの成り立ちは、アウディQ7およびQ8とシャシーの基本を共用し、そこに4.0リッターV型8気筒ターボエンジンを搭載する、というもの。全長は5112mm、全高は1638mm。今回の試乗会でも大いに役立ったドライブモードセレクターは「コルサ(レース)」から「ネーベ(雪)」まで用意され、幅広い用途を想定している。
ウルスがローンチしたときの試乗会場はサーキットだった。SUVとはいえ、スポーツ走行を得意とするからだ。ランボルギーニが手がけるSUVだから当然かもしれない。しかしランボルギーニは、SUVのカッコをしたスーパーカーであるとともに、SUVとしても万能な1台であることを主張する。だから、こんどはアイスランドで試乗会を開催したのだ。
アイスランドの面積は10万3000平米(日本の本州は23万1115平米)で、約32万人が居住している。東京に置き換えると中野区と同程度の人口だ。ちなみに日本の本州は1億3000万人超だ。首都のレイキャビクは都会であるが、そこから出発してしばらく行くと、人家が途絶える。広大な自然が広がっているだけだ。火山と氷の国である。
自然豊かなアイスランドを試乗会場に選んだ理由は、「ウルスの能力をテストするのに完璧な場所だから」とのことであった。
駆動トルクの配分は通常時フロント40%、リア60%であるが、状況次第でフロントに最大70%まで配分する。
試乗してまずわかったのは、舗装路でのウルスはとにかく速いということ。ドライブモードが「ストラーダ」(一般道)でも、アクセルペダルのちょっとした踏み込みに対しエンジンは鋭く反応するが、「スポーツ」にするとスポーツカーのような加速を見せる。エンジンもウルス(ラテン語で熊)の名にふさわしく”吠える”。
一説によるとウルスの名は野生牛「オーロックス」からとも言われるが、私個人の考えは、繊細かつパワフルさにおいて、牛というより地上で最もパワフルかつ賢い生き物とされる熊と思いたい。
試乗会では、一般道を走っているだけでもあらゆる天候を経験した。私たちが走ったのは南部の海岸沿いであるが、劇的に天候が変わる。晴れていたかと思うと雨、つぎに大雨、抜けたと思ったら吹雪、といった具台だ。
試乗したウルスはアイス&スノー向きのスタッドレスタイヤを履いていたとはいえ、まったく不安がない。乗り心地も快適で、室内は静粛性が高い。ドライブモードが「スポーツ」のときは排気音もそれなりに大きくなり、ドライバーのやる気をかきたてるが、そうでなくとも路面状況に影響されず、一貫して速く走れる。
火山灰が積もった“ブラックサンドビーチ”というアイスランド独特の摩擦の低い路面でも、ごつごつした岩場でも、不安は皆無だった。サスペンションストロークはこのクルマの性格上やや短めで、悪路では大きくクルマが揺さぶられたりもしたが、四輪へのトルク配分が適切のようで、たとえ穴にはまってもごく短時間で脱出出来た。
そんなウルスの4WDシステムは、ドライバーのあらゆるニーズに応えられるよう、“選択”の余地を残す。ロールズ・ロイス カリナンが、「オフロード」と呼ぶスイッチを押すだけで、あとはクルマが自動でトルクや車高を調整するシステムを搭載するが、それとは対照的だ。
ドライブモードのうちに、悪路用に「SABBIA(砂地)」「TERRA(砂利道)」「NEVE(滑りやすい路面)」を設けているのだ。ただし、今回の試乗会では各ドライブモードにおける4WD制御の差を実感するほどの究極の体験にまでは至らなかった。
ドライブモードの選択はロータリー式のダイアルによるもので、順繰りに選んでいくようになっている。上から「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ(レース)」と並び、その下に「SABBIA(砂地)」があり一番下が「NEVE(雪)」である。
一般道から滑りやすい路面に変わる際も、いちどレースモードを経由するのがフシギだ。実際試乗会中、突然の吹雪に遭ったときは「え、(スノーモードまで)コルサを経由するのか」と、一瞬焦ったほど。でも、ウルスのようなスーパーSUVであれば、さほど気にならない。むしろ、ウルスらしくていい。
SF映画的なウルスのスタイリングを頭に思い浮かべながら悪路用の走行モードに切り替える。悪天候のなかを疾走するウルスの姿はさぞかし見ものだろうと思った。どこでも走れてしまうようなスタイリングが、まさにSF映画に出てくる乗り物のようだ。
「映画に使われたりして、若いひとたちから『ランボルギーニってクールだね!』と、思われたい。ユーザーが年寄りでは、未来がないですからね」
と、試乗会で一緒になったアウトモビリ・ランボルギーニのステファノ・ドメニカーリCEOは話す。なるほど、ランボルギーニの未来はウルス次第で大きく変わるのかもしれない、と、思ったのであった。
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